運用者の意図に反して暴走したハッシュタグ ‘#McDStories’ の教訓

福田浩至 | 2012/02/06

運用者の意図に反して暴走したハッシュタグ ‘#McDStories’ の教訓

 

 先月、米国マクドナルドが発したハッシュタグを含んだツイートが引き金となり、マクドナルドに関するネガティブな話題が拡散する事件がありました。日本でも大いに話題になりましたので、ご存じの方も多いと思います。ソーシャルメディア上の発言がコントロール出来ない事例として、深彫りしてみました。事件の概要については、

海外マクドナルドのキャンペーン炎上から学べること
海外マクドナルドのTwitterキャンペーンが失敗・大炎上中
などで日本語でも解説されていますので、参考ください。

 

 

なぜハッシュタグを使うのか?

 

 ハッシュタグの使用目的は、限定されてるものではありません。また、特定のユーザーが独占的に利用出来るものでも、ありません。敢えて、企業アカウントの運用者目線で主な目的を整理すると、次のようなものがあります。

 

    1. 話題を整理するため 発言に話題別に固有のハッシュタグを付与することがあります。アカウントの運用者がツイートを管理したり、ハッシュタグを二次元的に表示して、文字の大きさや色彩等で、その活用傾向を表現するタグクラウドのようなユーザインタフェースを実現することを目的にすることがあります。
    2. より多くのバイラルを生み出すため キャンペーンなどで、「応募される方は、ハッシュタグxxxxをつけて発信してください。」といった参加条件とするケースが良く見られます。代表的なところでは、ローソンが先月まで展開したハッシュタグキャンペーンなどがあります。(専用フォームからハッシュタグ’#Ponta持ってるよ’とツイートしてくれた方に抽選でポイントがあたるキャンペーンでした。)投稿してもらえれば、多くの人のタイムラインにブランド名や商品名が露出するため、告知効果が期待できると考えられます。
    3. 特定のテーマについて発言してもらうため テロップ等で「皆さんのご意見をお待ちしています。ハッシュタグxxxxをつけて発信してください。」と流すテレビ番組も増えてきました。Ustream中継でハッシュタグを使用し、プラグインでタイムラインを表示されることも、一般的に広く用いられている手法です。

 

 

ハッシュタグ ‘McDStories’ の蹉跌

 

 今回の事件におけるハッシュタグの使われ方を見てみましょう。最初に使用したハッシュタグは、’#MeetTheFarmers’です。ツイートで紹介されているのは、

 

”McDonald’s Beef Supplier, Steve Foglesong: “Raising Cattle and a Family”

 

と題したYoutube動画です。オーストラリアの広大な大地で飼育される牛たちと働く農夫たちの映像は、上品に仕上げられています。ハンバーガーのミートパテの原料というよりは、高級レストランのメインディッシュに供するレベルをイメージさせます。その後もポテトやレタスを栽培する農家の動画を紹介しています。現在確認できる’#MeetTheFarmers’を付加した@mcdonaldsからの投稿は7件です。ここまでは、特に問題は生じませんでした。

 

 引き続き、ハッシュタグを’#McDStories’に変更し、

 

“When u make something w/pride, people can taste it,” – McD potato supplier (ポテトを生産する農夫のビデオ内でのメッセージ)

 

Meet some of the hard-working people dedicated to providing McDs with quality food every day(毎日高品質なハンバーガーを届けるために頑張っている人々(生産者)に会いにゆきましょう)

 

の2つのメッセージをツイートしました。(現在、確認できるのは1件のみ。1件は運用者が削除したものと思われます。)しかしその後、マクドナルドにネガティブなツイートがハッシュタグ’#McDStories’付きで大量に投稿される事態となりました。マクドナルドのSocial media director Rick Wion氏は、直ちにこのハッシュタグの利用を止めることを決定しました。が、既に制御できない状況にまでひどい話が拡散してしまいました。ひどい話の中身については、こちらの記事などに紹介されていますので、参考ください。

 

 

マクドナルドのハッシュタグ使用意図

 

 ご承知のとおり、マクドナルドは全世界的に知名度の極めて高い企業です。併せて、公式Twitterアカウント@McDnaldsは、30万人を越えるフォロワーを抱える人気アカウントです。更にはpromoted tweetを利用していたことも、拡散に寄与したものと思われます。Wion氏は、インタビューで、慎重に単語を選んでツイートをしてきたこととともに、自分たちでツイートをコントロールしようとしても、「ファンとアンチファン」を選別することはできない旨を語っています。周到に準備をすることは不可欠ですが、読者の受け取り方を網羅的に考慮することは不可能です。結局のところ、事前準備と現象に応じた対応を組み合わせて対処するほかありません。

 

 しかし、今回の失敗の根本的な原因は、ハッシュタグの使用意図の不明瞭さに原因があると考えます。最初のハッシュタグ’#MeetTheFarmers’をつけて投稿したツイートは、マクドナルド商品の生産者を紹介するコメントとYoutubeのビデオコンテンツへの誘導リンクが付与されています。つまり、ビデオコンテンツの告知が目的であり、必ずしもハッシュタグを用いて上記 ⅰ 〜 ⅲ の目的を意図することは考えにくいところです。

 

 「ⅰ 話題を整理するため」という意図があるとしたら、先々ハッシュタグ’#MeetTheFishermen’を使用してフィレオフィッシュの原料であるスケトウダラ漁の漁師さんが登場する企画が、あるのかもしれません。しかし、少なくとも特設ページ”Meet Our Suppliers“にはそのような意図が感じられるコンテンツは、確認できませんでした。

 

 「ⅱ より多くのバイラルを生み出すため」ならば読者にそれを促すメッセージやインセンティブがあってしかるべきですが、ハッシュタグ付きで投稿された7件のメッセージは全て、生産者の紹介にとどまっています。インセンティブつきのキャンペーンを仕掛けた様子もありません。

 

 「ⅲ 特定のテーマについて投稿を促すため」であれば、メッセージの内容を生産者の紹介だけではないものにする必要があります。例えば、「生産者に質問はありませんか?」といった反応を求める投げかけがあってもよいでしょう。また、レスポンスを確認できるように、特設サイトなどにハッシュタグで絞り込んだプラグインが表示されていてもよいでしょう。

 

 そもそも、ハッシュタグ’#MeetTheFarmers’には、マクドナルドを連想させる単語が含まれてません。これでは、誰がどのような意図で使用するか分からない懸念もあります。しかし、問題はマクドナルドを連想させる語句が含まれている、2つめのハッシュタグ’McDStories’で起きました。投稿した2件のツイートは、特設ページ”Meet Our Suppliers”の短縮URLが付与されています。つまり、これらのツイートの投稿目的はサイトの認知拡大が主な意図だと思われます。その一環として「ⅲ 特定のテーマについて投稿を促すため」にハッシュタグ付与されたものと思われます。が、それを促すメッセージはありません。もっとも、不本意なかたちではありますが、バイラルは発生してしまいました。’McDStories’というハッシュタグだけだと「マクドナルドに関する話題(ネタ)」を語りたくなることもよく分かります。そして、その内容には楽しかった体験だけでなく、酷かった体験・不快だった体験があっても、不思議ではありません。それらのツイートのうち面白い物、共感できるものが注目されて、次々と信ぴょう性にも疑問のあるひどい体験談やうわさ話が拡散していきました。キャンペーンから2週間以上経ったいまでは、’#McDStories’を含むツイートは多く見られますが、大部分は今回のハッシュタグ問題に関する話題です。マクドナルドでのネガティブ体験を語るツイートは僅かになっています。

 

 

ハッシュタグを使用する際の注意点

 

 今回の事例をもとに、ハッシュタグを使用する場合の注意点を考えてみました。

 

ⅰ. 目的を明らかにする

 上記のとおり、今回の件では、ハッシュタグを用いた意図がよくわかりません。何のためにハッシュタグを使用するのか意図を明確にしておくことが必要です。その意図が明らかになれば使用する単語も決まってきます。そして、その意図を読者に伝える努力も必要です。公式アカウントを運用する際には、運用ルールなどをガイドラインにまとめることが多くなってきていますが、このなかでハッシュタグの用法も規定しておくことが望まれます。

 

ⅱ.共感を得やすい単語を使用する

 例えば、’#うどん県’といったハッシュタグは、図のように概ね「香川県」にまつわる話題を発信する際だけに、限定的なアカウントだけでなく、多くの方に利用されています。ハッシュタグが十分に機能している一例です。例えば、’#うどん県’とつけたツイートで北海道の話題を語れば、発信したアカウントの非常識さに批判が集まるでしょう。一方’#honda’では、例えば本田技研工業の関するものとサッカーの本田圭佑選手に関するものが混在しています。文字数の関係や視認性を考えて、なるべく短く、簡潔な単語を用いたいところですが、読者が混乱しないような配慮も必要です。

 

ⅲ. 被っていないか確認する

 ハッシュタグを利用する際には、その単語がどのような使われ方をしているのかを、事前に調査することが不可欠です。2009年にはKDDIが’#au2009’を新製品発表の情報発信に活用して問題になりました。当のハッシュタグを別のイベント’Autodesk University 2009’で既に使用していたため、混乱を招いたのです。更に、問題が発覚したあとも強硬に利用を継続したことも、強い反発を招きました。

 

ⅳ. 長期間の独占的な利用を想定しない

 ハッシュタグ自体は、誰でもツイートに盛り込めるものです。特定のアカウントが、独占的に使用できるものではありません。悪意をもった人が、意図的に目的に反した使用をするかもしれません。悪意を持たなくても’#au2009’のように重複するケースもあります。現在使われていなくても、将来他人が勝手に使い始めるかもしれません。他の人が使いはじめても差支えのない運用をするか、特定の期間だけ利用することで、リスクを低減することを計画しておきましょう。

 

 

JFAのTwitter運用方針

 

 JFA(日本サッカー協会)は多くのTwitterアカウントを運営しています。その運営方針を「JFAのTwitter利用に関して」と題してWebサイトに掲載しています。このなかで、ハッシュタグの用法についての考え方を示しています。ハッシュタグを使用する参考にもなると思いますので、引用します。

 本来ハッシュタグは特定の団体やユーザーグループに帰属的にあるのではなく、ユーザー全員の共有物であると考えられます。当協会は一ユーザーとしてハッシュタグの提案を行い、用いておりますが、排他的な意図はなく、また当然ながら強制的なものではありません。また時に応じて最適なハッシュタグが現れ、変化していくことも考えられます。同じテーマについて複数のハッシュタグが現れる場合もあります。その際に当協会が誰かが設定したハッシュタグに便乗させてもらうことも起こるでしょう。複数のタグが存在し、共存していくことも考えられるでしょう。そこには何らかの妥当性や必然性があるものと考えます。
 当協会では一ユーザーとして、しかしながら少なからぬ影響力も考慮に入れ、フォロワーの利便性に叶ったタグづけを行いたいと考えております。
 当協会ではハッシュタグ命名に関して、

  • 中立的
  • 包括的
  • 長期的

視点で行います。また以下の点に注意して命名します。

  • ハッシュタグ自体が内容を表している。
  • 対照群を小さくしすぎない。
  • 短くする。
  • 日本語ユーザーが利用する。

 繰り返しになりますが、ハッシュタグはユーザーの共有物だと思われます。ユーザーの皆さんとともに、サッカーの話題を共有できる環境作りに貢献できればという意図で、ハッシュタグを用いていきます。 

 

#McFailでTwitter検索すると、この事件に関する話題を効率的にピックアップできます。今も、次々と話題として取り上げられ続けていることが分かります。ハッシュタグが引き起こした事件を、ハッシュタグでチェックできるとは、なんとも皮肉なことですね。

 

<Update 2012/2/7> 使用されはハッシュタグが’#McDStory’ではなく、’McDStories’だったので、タイトルを修正しました。 

 

記事執筆) 福田 浩至 https://www.facebook.com/koji.fukuda

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12 件のフィードバック

  1. toshi19650104 より:

    運用者の意図に反して暴走したハッシュタグ ‘#McDStory’ の教訓 in the looop 福田浩至 運用者の意図に反して暴走したハッシュタグ ‘#McDStory’ の教訓 in the looop 福田浩至 先月、米国マクドナルドが発したハッシュタグを

  2. tweety_wellwell より:

    ハッシュタグに関する良記事。ハッシュタグを使う理由や使用する際の注意点などがよくわかります/運用者の意図に反して暴走したハッシュタグ ‘#McDStory’ の教訓 http://t.co/2tSsuniX

  3. cold_blaze より:

    【"Social Media"】 運用者の意図に反して暴走したハッシュタグ ‘#McDStory’ の教訓 in the looop 福田浩至 http://t.co/Z7vtKk9c #mixi #gree #dena

  4. bizna_haruka より:

    運用者の意図に反して暴走したハッシュタグ ‘#McDStory’ の教訓 http://t.co/sUQ6fu6p @LooopsComさんから

  5. erj_info より:

    運用者の意図に反して暴走したハッシュタグ ‘#McDStory’ の教訓 http://t.co/gguyQmcx @LooopsComさんから

  6. smartsocialinc より:

    「目的を明確化」が重要なようです。
    「運用者の意図に反して暴走したハッシュタグ ‘#McDStory’ の教訓」
    http://t.co/ddUKS202 http://t.co/XWNNV000

  7. mitarase より:

    [twitter]今度、ハッシュタグを使ったプロモをやろうと思ったから、かなり参考になった。 / “運用者の意図に反して暴走したハッシュタグ ‘#McDStory’ の教訓 in the looop 福田浩至” http://t.co/FmTRJBP6

  8. mitarase より:

    今度、ハッシュタグを使ったプロモをやろうと思ったから、かなり参考になった。

  9. ixis より:

    運用者の意図に反して暴走したハッシュタグ ‘#McDStories’ の教訓 [ITL] http://t.co/T89Vk2pk 他にも同じようなことがあったのか

  10. geroko より:

    運用者の意図に反して暴走したハッシュタグ ‘#McDStories’ の教訓 [ITL] http://t.co/T89Vk2pk 他にも同じようなことがあったのか

  11. sqen より:

    運用者の意図に反して暴走したハッシュタグ ‘#McDStories’ の教訓 [ITL] http://t.co/T89Vk2pk 他にも同じようなことがあったのか

AUTHOR PROFILE

  • 著者:福田浩至

ループス・コミュニケーションズ副社長。

企業がソーシャルメディアを運用する際のリスクマネジメントが専門分野(安全に・効果的に運用するための組織構築やガイドライン策定などのサービスを担当しています)。

趣味は「ドカ食い」です。バランスを取るために、ときどき「ジョギング」をしていますが、なかなか均衡がとれません。

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