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無印良品の新サービス「MUJI LIFE」開発秘話。その壮大なプラットフォーム構想に迫る

11月15日、無印良品の新しいプラットフォーム「MUJI LIFE」がリリースされました。リリースから1ヶ月と少しが経過した12月22日に、MUJI LIFEの生みの親である良品計画WEB事業部の川名常海さん、風間公太さんに開発の狙いや現在の状況を伺いました。

※以下文中、細字は川名氏・風間氏、太字は筆者発言

 

MUJI LIFEとは

−−MUJI LIFE とは一体どういったサービスなのでしょうか?

 

MUJI LIFE はネット上に自分の棚をつくり、無印良品の商品やお気に入りの本、CD、DVDなどを並べて、“自分らしさ”を表現し、友人に自慢したり、共 有できるソーシャルゲームです。わかりやすさを意識して「ソーシャルゲーム」と謳ってはいますが、無印良品のアイテムを中心とした新しいコミュニケーションプラットフォームという位置付けです。Facebook やTwitter、mixi のいずれかのソーシャルメディアアカウントを持っている方ならご利用いただけます。

 

 

 

登録すると1日6回、ダンボールが届き、無印良品の人気アイテムフィギュア、Amazonで好きな本、CD、DVDを選んで並べられるチケットや 「MUJIコイン」 などが当たります。MUJIコインを貯めると棚の増設やプレゼントへの応募ができるおようになります。コミュニケーション機能としては、MUJI LIFEに参加している友人の棚を見たり、プレゼントを贈ることができるようになっています。

 

 

 

MUJI LIFE開発の狙い

–なるほど、「MUJI LIFE」は直接売り上げに貢献する機能が少ないように感じます。開発の狙いはどのあたりにあったのでしょうか?

 

潜在顧客に対してはブランド浸透とキャンペーン告知が主な目的です。無印良品のWEBサイトにおいて、現在の主力ツールはメールマーケティングです。150万人以上の人にリーチできるし、まだ当分の間は活躍し続けると考えています。ソーシャルのアカウントに比べて、ユーザーが関与するきっかけが「自分でメールアドレス登録して情報請求」という能動的且つ積極的なものである点は大きいのかもしれませんね。ただし、 プッシュ型メディアの特性上エンゲージメントは低く 、将来を考えると補完的なツールが必要だと考えていました。「今のボリュームゾーンとはちょっと違う層」。そういう人たちとゲーム的な楽しみをきっかけにつながれないか、そしてそれがグローバルでスケーラブルだったらもっとおもしろい、そんな感じで企画がスタートしました。既存顧客向けの目的は先ほどの通りですが、潜在顧客に対しても、まずはゆるい感じでつながれればと思っています。まずは利用者数をもっと増やしたいですね。

 

 

−−グローバルな展開は最初から意識していたのですね。

 

はい。12月22日(※取材日)の時点で51カ国からのユーザー登録があります。無印良品が出店しているのが20カ国なので、実店舗がない国のユーザーも使い始めてくれていることになります。現在は国内ユーザー8割、グローバルが2割くらいですが、国内だけでなく海外ユーザーももっと増やしていきたいと思っています。

 

 

−−言語依存の強いサービスは英語圏が強いといわれますね。非言語の領域だからこその広がりというのもあるのでしょうか。

 

そういうのもあるかもしれません。こういうプラットフォームで無印良品を知っていただいて、最終的に気に入った方には買っていただく。こういう展開はメールマーケティングではできませんからね。インターネットの強みを生かしたこういうやり方が、今後はもっと多くなっていくのではないかと思っています。

 

 

リリース後1ヶ月の状況

−−現在利用している方はどのような方々なのでしょうか。

 

おもしろいデータがあるんですよ。次のグラフは、無印良品全体と MUJI LIFE ユーザーの利用ブラウザを集計したものです。MUJI LIFEではIE7、8のユーザーが無印良品全体の半分程度。逆にChromeの利用者数は倍くらいですね。利用ブラウザとユーザー層を単純に重ね合わせるのは危険かもしれませんが、主な利用者層がかなり異なることが見て取れるのではないかと思います。

 

 

−−なるほど、新しもの好きな層が使っているような印象はありますね。現在のアクティブ率はどのような感じでしょうか?

 

アクティブ率の定義が難しいのですが、1ヶ月以内に箱を空けたユーザー(筆者注:MUJI LIFEでは1日に6回、プレゼントの入ったダンボール箱が届く)の割合は10%くらいです。ばらつきはかなり大きくて、お試しで登録してみただけのユーザーも入れば、毎日箱を開ているユーザーもいます。ゲーム要素をどんどん追加して、早く毎日訪問していただけるようなサイトにしたいですね。

 

−−グローバルに利用されていると伺いましたが、国毎の利用状況の差異や特徴などはありますか?

 

まだ始まったばかりなのでそれほどおもしろい特徴はないですね(笑)国ごとの利用割合は日本が一番多くて8割、次に台湾が強くて4%、続いてタイ3%という感じです。欧米よりアジアが強くて、最近はどんなサービス開始しても台湾は日本の次に来ますね。

 

 

設計思想と今後の展開について

 −−ぱっと見た印象では「Flashで作ったのかな」、と思いましたがHTML5だったんですね。

 

設計している時はHTML5がいいな、と思っていたんですよ。なんとなく。でも開発チームに相談したらFlashの表現力が必要だ、という話になって、その後はFlash前提で話が進んで。。。でもやっぱり最終的にHTML5になりました(笑)

 

 

−−なるほど、色んな紆余曲折があったんですね(笑)

 

やはりモバイルファーストと言われる時代ですから、Appleの端末は重要だいうことになりまして(笑)MUJI LIFE は(Flashが使えない) iPhone,  iPad にも対応するのですが、最初からその前提でHTML5を選択したことで、トータルコストは相当抑えられています(筆者注:Flashでアプリを実装すると、Flashの使えない iPhone, iPad 向けに再実装コストや変換コストがかかる)。とは言っても、まだまだ社内はHTML5猛勉強中という感じでパートナーさんにお願いする部分も多いです。ただ、HTML5によってマルチデバイス対応に必要な開発コストの面では抑えられたものの、演出の面で諦めざるを得なかった表現も多々あります。当たりが出たら「パンパカパーン!」って。やりたかったんですけどね(涙)他には、PC版とタブレット版で同じソースを使っているので、不自然でないUI設計にはだいぶ苦労しました。

 

 

−−ソースを見ると「url: MujiLife.define.api.getMemberCount」なんて文字列がありますが、もしかしてAPIを公開する予定があるんでしょうか?

 

 いえいえ(笑)APIといっても今のところ一般公開用ではなく、無印良品が提供する複数のサービスを連携させるために作っています。例えば MUJI LIFE は my MUJI という別のサービスと連携していて、my MUJI でレビューを書くと MUJI LIFE のコインがもらえたりします。今後は良品研究所でご意見を頂いたり、商品開発をお手伝いいただいた際にお礼としてコインを付与したり、当社が提供する様々なサービスで横断的に利用できるようにする予定です。

 

 

 −−プラットフォーム的な戦略ですね。

 

そうですね。「MUJI SOCIAL ID構想(仮)」みたいなのがありまして、「無印良品ユーザーID+ソーシャルアカウント」を中心として、コインという共通インセンティブで複数サービスをつなげたい、という発想があります。しかもグローバルで。コインといっても仮想通貨、というか貨幣価値は持たせたくないと思っています。今はプレゼントに応募できるくらいしか使い道がないのですが、ゲームやイベントの参加など楽しい使い方を考えています。

 

 

−−ソーシャルなチャネルから自社メディアへの集客導線を張る例としては「コカ・コーラパーク」はよくできていますね。また、MUJI LIFEの棚に置く商品をゲットするためにAmazonの商品券が出てきたりします。他企業や他メディアとの連携も意識されているのでしょうか。

 

あまり意識していないですね。Amazonの商品券は単に棚に並べるモノのラインナップとして Amazon の API を採用しました。ただ、API連携だとユーザー・インターフェース的におもしろくないので、「Amazonギフト券もらいました」という見せ方をしています。無印良品のアイテム と音楽、映画 、本などを並べる事でユーザー一人一人の個性を表現し、シェアしていただきたいと考えています。

 

 

−−ここまでのお話でも「MUJI SOCIAL ID構想(仮)」や海外での企画など楽しみな話題が出てきましたが、他に予定している企画はありますか?

 

色々あるんですが、直近だと1月にスマートフォンアプリ版を提供開始する予定です。アプリ版では全国や海外の無印良品店舗にチェックインすることでアイテムがもらえます。その地方や店舗でしかゲットできないアイテムも用意される予定なので、旅行や出張の際は是非試していただきたいですね。

 

※画像は12月26日から開催されている「MUJI 福 CURRYスゴロク」。100MUJIコインで1回プレイでき、カレーがもらえるクーポンやカレーセットが当たります。

 

 「MUJI SOCIAL ID構想(仮)」の個人的分析

 インタビューはここまでです。

 

お話を伺う中で、日本のものづくりに対する姿勢や品質の高さは昔から言われているとおりかと思いますが、インターネットの普及によって海外への発信 方法やフィードバック獲得方法などの「手法」には大きな変化が起こっているということを実感しました。良品計画が採っている手法は、当然ある程度の予算規 模や開発コストが必要なものもありますが、FacebookやTwitterといったソーシャルサービスなど、予算が限られている場合でも、手間暇をかけ ることで真似できそうなものは色々あると思います。ただ、良品計画の顧客コミュニケーション戦略上な基盤である「数百万に及ぶ、グローバルに可視化された ファン」という経営資源は、一朝一夕には再現することが難しいでしょう。この点が、関係性マーケティングの難しさであり、10年以上の歳月をかけて築いて きた無印良品ブランドの強みであるとも言えると思います。

 

最後に、個人的に気になった「MUJI SOCIAL ID構想(仮)」を自分なりの解釈で図にしてみましたので掲載しておきます。

 

 

やはり特徴は「MUJI SOCISAL ID」がソーシャルサービスのアカウントと紐づいている点でしょう。この点は、自社の顧客基盤に対して「ソーシャルサービスから情報を取り込むことができる」というインプットの面と、「自社サービスの情報をソーシャルサービスを経由して拡散させることができる」というアウトプットの面、両方に効果があると思われます。また、ユーザーにとってはひとつのIDで無印良品の複数コンテンツを利用できる利便性がありますし、システムを開発する部門は共通仕様があることで開発効率があがると思われます。また、MUJI コインという共通ポイントがあることで、話題のゲーミフィケーション要素を企画に取り入れることも容易になるでしょう。

 

もう一つの特徴は、「専門小売事業者の戦略」である点です。「自社サービスの共通ID」のようなサービスは、例えば日経BPパスポートWindows Live ID などにも見られ、特に目新しいものではありませんが、「小売事業者のプラットフォーム戦略」と見るとなかなか面白いのではないかと思います。ぱっと思いつくだけでも次のような展開が考えられます。

 

  • 店舗送客への動機づけ
    アプリ版の「チェックイン」機能が実装されることで、オンラインの取り組みと実店舗送客という目的をより簡単に紐付けることができます。それほど厳密な追跡はできないと思いますが、ソーシャルアカウントと連携するため「拡散」も前提になっていることには注目したいです。
  • 実店舗がない国でのマーケティング
    ゲームやコインといったフックを用意することで、既実店舗がない国や、ECの対象外となっている国でも「無印良品」ブランドのサービスが利用され始めると思います。そういった国々での動向を調査することで新たに販売を開始するかどうかの検討材料としたり、商品開発や改善のためのデータとして利用できるのではないかと思います。
  • マルチソーシャルプラットフォーム対応
    WEBの世界はサービスの衰勢が非常に激しいため、今あるサービスが急に人気を失ったり、人気のあるソーシャルサービスやテクノロジーが突如現れることも考えられます。自社のソーシャルメディア対応としてそれらを抽象化するレイヤーを設けることでそういった外部環境の変化にある程度柔軟に対応できるようになると思われます。(これは「小売事業者であること」とあんまり関係ないですね。。。)

 

以上です。

 

今回は掲載できませんでしたが、製品開発へのこだわりや野心的な取り組みなど、その他にもたくさんの興味深いお話を聞くことができました。

川名さん、風間さん、この度は貴重なお話をありがとうございました。

 

 

※本記事中の発言内容は編集されており、会話の内容がそのまま記録されているわけではございません。

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直人

ループス・コミュニケーションズ勤務、プログラマあがりのPM兼営業職。2007年に結婚して姓が変わりました。

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