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Facebook運用のKPIとコストに関する考察

※2月8日に公開された記事、「本当に儲かるの?企業のFacebookページ運用収支を試算①」の続きです。

 

【ご注意】

  • 本記事に記載されている指標や数値は筆者の独自調査または経験則によるものです。株式会社ループス・コミュニケーションズの公式なフレームワークではありません。試算ミス、論理の破綻、誤解を招く表現など一切の文責は筆者許直人にあります。
  • 試算はあくまで主体となる企業やサービスのデータで行われるべきであり、実体のない特定ケースの試算結果そのものに意味はありません。記事内のデータは根拠や信ぴょう性が担保されたものでない点には十分ご留意いただけますようお願いいたします。

 

「Facebook運用で儲かるのか」シリーズについて

このシリーズでは、「Facebookページ運用で、直接的・短期的にどれくらい儲かるのか」という、現実的な問いに対して仮想的な試算に基づく考察を試みています。ただ、本来的にFacebookページ運用はどちらかというと「間接的・長期的」なマーケティング施策と言えます。短期で成果を出すことの難しさについて、なんとなくご承知おきいただければと思います。

 

 

前回記事では立ち上げ間もない物販サイトのFBページをサンプルに、簡易的かつ短絡的な試算を試み、各パラメータについての説明をしました。今回はその簡易的かつ短絡的な試算を元に、Facebook運用の成功要因を探ってみたいと思います。

 

 

話の流れ

今回のエントリはこんな流れで話を進めます。 

 

 

【本当に儲かるの?企業のFacebookページ運用収支を試算②チューニング編(全2回)

 

(前回:本当に儲かるの?企業のFacebookページ運用収支を試算①とりあえず試算編)

  1. 初期集客について
  2. ファン増加予測を立てる
  3. 初期コストはピンからキリまで
  4. 運用の人件費が損益分岐点のベース
  5. 「ファン数」や「話題にしている人の数」よりも「リーチ」
  6. 直接効果の限界
  7. 「新規顧客獲得」の価値
  8. 終わりに

 

 

初期集客について

 

立ち上げ当初3ヶ月程度の集客見込みはなるべく正確に見積もっておいた方がよいでしょう。流入を促す施策の実行順としては、個人的に以下をお勧めします。

 

  1. リアル接点で社員や既存顧客に参加を呼びかける
  2. ネット接点を持つ既存顧客に参加を呼びかける
  3. Facebookマーケットプレイス広告

 

 

1.リアル接点で社員や既存顧客に参加を呼びかける

Facebookページを開設したら、まずはリアルな接点を持つ社員(パートナー、店舗従業員等も含む)や顧客に紹介し、ファンになってもらうのがよいと思います。顧客に接するリアル接点は、例えば顧客をまわる営業さんだったり、実店舗を持つビジネスなら実店舗や営業拠点といった具合です。難しいことは何もなく、顧客との日常会話の中で、Facebookアカウントを持っているユーザーがいたら「こんなページ始めたのでぜひ使ってみてください」という感じでお勧めすればよいと思います。

 

この施策を最初に試す一番のメリットは、顧客のリアクションが確認できることです。自社のFBページを紹介した時、その場で貰えるリアクションによって、コミュニティの顧客に対する貢献価値が十分かどうか、なんとなく手応えがわかるでしょう。また、勧める側もメリットをわかり易く伝える必要性を実感します。面と向かって「特におもしろくないですけど見てくださいね」とは言いづらいですよね。個人的に、この点は意外と重要だと考えています。私も経験がありますが、「おもしろくないからファンが増えない」という事実はなかなか認めることが難しいです。Facebook広告を打ってCVRが低かったり、CPA(cost per fan)が低いと、「クリエイティブを変えよう」「セグメントを変えよう」「キャンペーンを変えよう」と、「そもそもおもしろくない」ことはさておき、短絡的な目先の改善に走ってしまいがちです。顧客や社員に「みんな使ってねー」、とお願いした後、誰にも使ってもらえない事実は、ファンが増えない原因が広告のクリエイティブやキャンペーンにあるのではないことを手っ取り早く理解するための近道だと思います。

 

ただ、小規模な組織であればともかく、顧客に対する大企業になるとこういった施策は難しいのかもしれません。数百万人の顧客コミュニティを持つある組織のマネージャーに伺った話ですが、日本の会社は縦割りが強く、規模が大きくなると部門横断的なリソース活用はできないそうです。例えば、Facebookページを立ち上げるのが経営企画だとすると、現場の営業部隊や店舗はほぼ動かせない(「全員にやらせるのはすごく大変です」「マニュアル化してください」「予算をとってください」といってやんわりと断られる)のだそうです。規模の大きい組織では、顧客よりも社員や協力会社へ紹介する方がうまくいくかもしれません。その場合は、Facebookという個人所有のアカウントを会社の施策に結びつけるという雇用契約上の問題や、社員のソーシャルメディアリテラシー、会社ページに投稿する場合の行動指針などの明確化と定着がより重要になります。

 

「こうすべき」という決まったやり方はありませんが、まずはリアルな接点で参加を呼びかけられる相手を探してみるのがよいでしょう。その上で、考えられる接点から、それぞれ流入数の見込を立てていきます。

 

この施策は着手の優先順位としては一番初めになりますが、期間的には1〜3ヶ月程度と時間がかかることが予想されます。WBSをきちんと作成して、施策の前後関係やクリティカルパスを把握しながら進めないとプロジェクトの進行に混乱が生じてしまうでしょう。

 

 

2.ネット接点を持つ既存顧客に参加を呼びかける

次は自社のメルマガ読者やWEBサイトの訪問者、公式Twitterアカウントのフォロワー、CRMやDWHに保存されている顧客リストなど、自社の顧客(もしくはリード)に対してFacebookページの開設を告知し、参加を促すとよいと思います。

 

Facebook広告などで参加を促すよりは表現の自由度がありますので、ページの意義と参加するメリットを簡潔に伝えることができれば、自社やその製品・サービスを全く知らない人に参加を促すよりは、高い参加率が得られるでしょう。大切なのは、流入施策を打つことではなく、その結果をきちんと測定しておくことです。外部流入元は Facebook Insight 上では確認できませんが、エクスポートしたページレベルデータの「Daily External Referrers」シートに出力されています(Excel形式でエクスポートした場合。また、シート名や項目名、特に日本語版は名称が変わることがあるので注意。)。

 

図:ループス・コミュニケーションズFacebookページの流入元 

 

こういった施策を打った後は、リファラーや日次データなどからどのチャネルを使ったどの施策がより効果を上げたか、きちんと記録・分析しておくと2回目以降の施策をより効率的に行うことができるようになるはずです。

 

 

3.Facebookマーケットプレイス広告

Facebookページ上で既存顧客とある程度エンゲージできた後、さらに少しファンを増やしたければマーケットプレイス広告の利用を検討するとよいでしょう。多くの場合、広告のような外部コストに予算を割くのであれば、それ相応の投資対効果を求められます。この時点で、自社のFacebookページ運用とその結果得られる成果について何かしらコミットする必要が出てくると思います。

 

Facebookマーケットプレイス広告の予算感については前回記事に説明がありますのでよろしければご参照ください。

 

 

ファン増加予測を立てる

 前項のような検討を元に、運用開始後3ヶ月程度の増加予測を立てます。試算では「オーガニック(とりあえず「自然増」程度でご理解ください。詳細はリンク先。)」「広告」「既存チャネル(自社の既存顧客)」の3経路を主に想定しましたが、実際の試算では自社で活用できるコンタクトポイント一覧を元に作成すればよいでしょう。

 

この時点で、自社の既存チャネルからたくさんのリーチ・集客が見込めるメディアやブランドと、全く見込めない企業・ブランドで大きな差がついてきます。また、同じファンでも予め自社の製品・サービスを知っている、または愛着のあるファンと、広告でその存在を初めて知ったファンとの間には活性度に大きな差があります。特に難しいのは後者、知名度のない企業・ブランドの方ですが、まずはファン数を追い求めるのではなく、既存顧客を中心とした活力のあるコミュニティ形成を目指すのが定石かと思います。ファン数増加の優先順位が低いのはチューニングの余地を残すためです。気に入られるかどうかわからない施策に多額の認知獲得コストを投じるよりは、少額の認知獲得コストを複数回に分けて投下し、都度最適化を測る方が効率がよいためです。ここで「最適化」と申しておるのは「ランディングページ」や「キャンペーン」といった短期のコンバージョンを目的としたものだけでなく、運営するFacebookページの提供価値そのものも含みます

 

投下するコスト次第ですが、この予測は当たるか、当たらないかが問題ではありません。どういう根拠で予測を立て、予測と結果に差異が生まれた場合はその差異を分析することが大切です。私はソーシャル業界のKPIブームは全く意味がないと思っているのですが、KPIを求める多くのケースが実は単なる「ベンチマーク」を必要としており、自社で予測を立て、結果を省みるという現場がほとんど見られないためです。KPIは人やコンサルタントから「与えられるもの」ではありません。

 

※(特にWebの)KPIについて、ネット上にある記事ではWEB担の「KPI大全」がとても参考になります。オンラインショップやコンテンツサイト、リードジェネレートサイトなどのケースに分けて使えるKPIが紹介されていますので興味のある方は是非どうぞ。

 

 

 

初期コストはピンからキリまで。

集客意外のコストはどんなものが考えられるでしょうか。

 

制作にかかる初期コストとして、今回の試算ではとりあえず70万円を見積もりました。「Facebookページ 構築」などでGoogle検索してみるとたくさんのアドワーズ広告が表示されます。低価格を売りにしているところは5万円や10万円から作ってくれるようです。東京都近郊のWEB業界の人件費は1人日3.5万円〜7万円くらいだと思いますから、制作会社としても最小限であれば1日〜2日の仕事と考えているようです(もちろん様々な面で効率化はされているでしょうけど)。

 

さらにこだわる場合はコンセプト企画からデザイン案検討、写真撮影や素材制作など。200万円程度かければ立派なものができるでしょうか。いずれにせよピンからキリまで様々だと思います。ただ、実際の制作物が少ないだけに企画や戦略立案は割合として結構なものになります。コストを抑えるには自分たちで現実的な企画・戦略を組み立て、制作会社にはもっとも得意な「作る」部分だけ効率よく発注するとよいでしょう。WEB制作やWEBアプリ開発に比べると全体のコストが小さいので、企画・戦略部分まで制作会社に依頼する場合はそれなりの費用を別途請求されることが多いようです。

 

 

 

これまでに出た広告・制作以外の観点では「アプリ」と「自社サイト連携」がオプションのコストとして考えられます。必要に応じて見積もっておく必要があるでしょう。特に、既にPV数の多いサイトを持っている場合はSocial Pluginsを活用することで低コストな集客が見込めます。アプリに関しては割高になりやすいので初期の段階では無理して開発することはおすすめできません。作るとしたらランディングページにシンプルなバイラル系アプリなどでしょうか。集客効率を向上させるかもしれません。また、サードパーティーから提供されているアプリを利用することで開発コストを削減することもできるでしょう(前回記事に、例としてInvolver、HiveloSocialAppの説明があります。色々あるので探してみてください。)。

 

 

 

運営の人件費が損益分岐点のベース

長期間の運用において、大きなコスト割合を占めるのが運用チームの人件費です(人件費に関する前回記事を参照) 。

 

 図:ソーシャルメディアの活用期間(公式Twitterアカウント運用担当者)_従業員規模別

 

 NTTレゾナントとループス・コミュニケーションズが共同で行った調査では、ソーシャルアカウント運用チームの人数は1人〜5人程度になることが多いようでした(下図参照)。試算では3名としていますが、ファン数が多くても少なくても運営チームは数名程度に収まっており、コストとの相関がゆるいことは注目に値するでしょう。

 

 

 

いくつかの有名なソーシャルアカウントの運用事例を挙げれば、JAL、ローソン、OKWaveといった企業のソーシャルアカウント運用事例では運用者一人あたりのファン数は数万〜数千と非常に大きくなっています(出典:ソーシャルシフト)。また、CRMやDWH、SFAといった一般的なIT支出ではファン数が増大するにつれシステムコストも比例して大きくなるのですが、Facebook運用ではそれに比べれば顧客規模との相関は緩やかです(マネジメントツールなどを考慮に入れれば、全く相関しないわけではありません)。

 

 

「ファン数」や「話題にしている人の数」よりも「リーチ」

前項の試算ではファン一人あたりの売上は約5.6円、一方毎月のコストは一定になっています。この調子で毎月3%のペースでファンが増えていくとすると、 44ヶ月後、ファン数5.4万人くらいで売上とコストが逆転します。原価を考えなければその後はずっと利益が出続けることになるのですが、果たしてそううまくいくものでしょうか。

 

ファン候補に対して認知を獲得するにはコストがかかります。製品・サービスの需要を逸脱したファンの確保は更に非効率でしょう(非常にニッチな商品なのに100万人のファン獲得を目指す、とか)。そもそも日本国内のFacebookユーザー数自体がそれほど多くないため、獲得できるファン数には限りが出てきます。ファン数が自社製品や認知獲得コストの限界に達すると、いずれ運用のチューニングは効「率」の改善がメインになってきます。今回の試算言うと、下図点線で囲った部分です。

 

 

CTRやCVRはWEBマーケティングでは一般的な要素なのでチューニングのやり方も色々考えられると思います。それでは「リーチ」の部分はどうでしょうか。前回の記事で説明した通り、今回は1投稿あたりのリーチをファン数の15%と想定しました。この「リーチ」が、CTRやCVR以上に運用の差が大きく出る部分になっています。ちなみに、Facebook Insightで表示される「リーチ」にはニュースフィードやリアルタイムフィードといった通常のコンテンツとして接触したユニークユーザー数を表す「オーガニックリーチ」、コメントやシェアなど友達のアクションを経由して接触したユーザー数を表す「クチコミリーチ」、広告として接触した「ペイドリーチ」の3種類があります。今回のエントリは広告効果を測定する内容ではありませんので、重視しているのは「オーガニックリーチ」と「クチコミリーチ」の2つになります。リーチする範囲はファンだけにとどまりませんので、たくさんクチコミされたり、広告を出稿するとファン数を上回ることもあります。

※Facebookのドキュメントでは、クチコミリーチは「口コミリーチ」、ペイドリーチは「有料リーチ」と表記に揺れがありますが、今回は前述の表記に統一しています。

 

 

 

上図は、In the looopのFacebookページと、別の活性化している小規模なFacebookページ(以下、「活性化ページ」と表記)のリーチを指数化したものです。横軸は日数で、25日間の測定になります。縦軸は「オーガニックリーチ」と「クチコミリーチ」の数を、それぞれファン数で割ったものです。どちらのページも1日に1投稿しています。データとしては「ペイドリーチ」の項目も取得できますが、今回は含めていません。

 

ちなみにIn the looop はファン数1.6万人で、1投稿あたり平均して4,000人程度のリーチがでます。1回投稿するとファン数の4分の1程度のユーザー数にリーチできます。私が支援させていただいているいくつかのページを見ても、これはありふれた数字だと思います(経験則であり、統計データに基づいた発言ではありません)。「活性化ページ」はファン数こそIn the looopのFacebookページには遠く及びませんが、共感を生みやすいコンテンツを中心にポストしており、たくさんの「いいね」や「コメント」を集めているページです。

 

青線で表示された「オーガニックリーチ/ファン数」の値はIn the looopのFacebookページと活性化ページの差は平均で2倍程度です。一方、赤線で表示された「クチコミリーチ/ファン数」は平均で約40倍近い開きがあります。

 

 規模の小さいFacebookページほど活性化しやすいこと、「活性化ページ」の詳細なプロファイルが不明であることを差し引いても、「オーガニックリーチ」に比べ「クチコミリーチ」が強力であることの一例と見ることができます。つまり「クリック数」や「アクション数」を効果指標に置くのであれば、ファン数よりも「クチコミリーチ」の影響がより大きいと言えます。もっと言えば、ファンになってくれたユーザーのフィードに情報を流れることより、ファンのクチコミが友人に流れることの影響がより大きい、ということです。

 

裏を返せば、いくらファンを集めてもアクションをもらえなければ全くリーチが上がらない、ということが十分に起こりえます。この意味でも冒頭申し上げた「先に既存顧客を集めて活性化させる」方法が有効であると考えられます。

 

上記、「活性化ページ」の「クチコミリーチ」を試算に当てはめるとどうなるでしょうか。

 

 

 

なんと、損益が劇的に改善してしまいました。今回サンプルとして使った「活性化ページ」は試算より規模が小さく、活性度はファン数が増えるにつれ下がっていきますので実際にはこんなにうまくは行きません。ここで言いたいことは次の2点です。

 

  • クチコミ効果によるリーチの変動率は非常に大きい
  • ファン数をむやみに増やすよりもクチコミリーチを増やした方が効果的な場合がある

 

昨年から表示されるようになった「話題にしている人の数」もKPIとして使えなくはないのですが、広告の影響を受けすぎる気がしています。自身の参考にする場合も、他のページを分析する場合も、広告の影響を考慮する必要があるでしょう(「本質的でない」というのは語弊があるかもしれませんが、魅力的なコンテンツの発信とそれに対するリアクションを測定するためのKPIに、広告の影響が入ってしまうと測定を誤る可能性がある、ということです)。

 

また、Facebookページを開設しても価値の低いコンテンツを垂れ流していると「オーガニックリーチ」「クチコミリーチ」のどちらも急激に下がっていきます。これはエッジランクの影響もあると思うのですが、せっかく各種施策で集めたファンを失ってしまうのに等しいです。リーチの指数を上げる努力だけでなく、下げない工夫も大切になってきます。

 

 

直接効果の限界 

ここまで見てきた内容をまとめると、チューニングのポイントは以下のようになると思います。

 

 

上記のうち、ファン数と接触回数に対してできることは限られていますので、日々の運用にあたっては活性度のチューニングがメインになると思います。活性度を測るKPIとしてはファンのアクション数を様々な数値で割った値が「エンゲージメント率」や「インタラクション率」のような形で用いられています。最近現場では、そういった数字の「業界標準」や「競合との比較」を求められることが最近多くなってきました。これらの指標自体は悪いものではないのですが、業界標準に答えを求めてもあまり意味はありません。今回行った試算のように、自社なりのゴールとロジックを定め、それを達成する指標として導きだすことが意味のあるKPIを作るコツだと思います。

 

また、活性化を始めとした効率のチューニングが運用のメインだとすると、しばらく運用していれば自ずと天井も見えてきます。そのあたりが「Facebook運用で得られる、直接的かつ短期的効果の限界」と考えられます。この後はちょっと脱線して、その他の価値について少し触れてみたいと思います。

 

 

「 新規顧客獲得」の価値

「ソーシャルメディアは新規顧客獲得に向いたツールである」。

 

これはソーシャルメディア活用を謳った書籍や広告でしばしば目にするフレーズです。実際、Facebook運用でもクチコミによる潜在顧客への認知拡大や、そこからの新規顧客獲得を目的として利用をはじめるケースは多いと思います。Facebookページ運用でもその価値を効果として実証できないでしょうか?

 

コミュニティマーケティングは既存顧客寄りの施策というイメージが強いですが、Facebookページ運用の場合は「ファンの友達」とFacebook広告の存在により「新規顧客獲得」はやりやすくなっていると思います。それでも、実際の効果測定を行う場合は様々な考慮が必要です。まず、Facebookページ運用での新規顧客獲得は他のWEB施策に比べてリードタイムが非常に長いことを考慮しなければなりません。どんぴしゃな資料でなくて恐縮ですが、以下にイメージを図示します。

 

 

次に、長いリードタイムを経て購買・成約に至ったファンが「新規顧客」であるかどうかの判定が必要です。以下のような場合には新規顧客であるかどうかの判定が比較的容易でしょう。

 

既存顧客がいない場合

始めたばかりのビジネスや、無名のブランドなど、既存顧客がほとんどいない場合でしかもマーケティング手段がソーシャルメディアに寄っている場合、獲得した顧客はほぼ「ソーシャルメディアで獲得した新規顧客」となります。Facebookが関与しているかどうかの判定に意味があるかどうかは微妙ですが、測定も可能でしょう。

 

 

オンラインで完結するビジネスの場合

 オンラインショップなど、ネット上で完結するビジネスであればCookieやリファラー情報を使って顧客の行動をある程度把握することができます。例えば、自社サイトに初めて来訪した際にリファラーを保存し、コンバージョンに至った顧客の「初回来訪時の参照元」を分析するなどです。初めて自社サイトを訪れた顧客や、コンバージョンに至る直前の参照元が facebook.com ドメインかどうか調べるのは比較的容易です(もちろん、解析ツールのコストや技術的な課題は考慮しないといけません)。

 

ただし、オフラインに実店舗を持っている、テレマーケティングを同時に行なっている、など顧客接点が多様で、オフラインが絡む場合、正確な測定はより難しくなるでしょう。また、既存のビジネスが大きい場合は新規顧客獲得だけでなく、リテンションやCVRの向上といった複数の観点と紐付ける必要がでてきます。

 

 

インバウンド営業主体で、顧客の特定が容易な場合

 コンサルティングや B to B ビジネスなど、成約までの間に「問い合わせ」のプロセスを挟むビジネスも比較的測定しやすいと思われます。「問い合わせ」に至った理由やそれまでの接触メディアをヒアリングやアンケートなどで収集してもいいですし、Facebook上のデータやアクティビティと合わせて判別できる場合もあるでしょう。

 

 

 

新規顧客獲得に関する「楽観的な見通し」 

ビジネスの規模が小さい場合など、厳密な測定とチューニングにコストをかける必要がない場合は「楽観的な見通し」を基にプロジェクトを進めることもあると思います。「Facebookページ運用の新規顧客獲得」という観点では、仮説として以下のような楽天的な見通しも立てられます。

 

まず、何も考えず最初の試算を24ヶ月後まで進めてみます。

2年後、ファン数は3万人弱まで増えて、1投稿あたりで4,500人くらいにリーチできるようになりました。それでも売上ベースでは毎月13万円くらいの赤字がでています。ここから「新規顧客獲得」の仮説をひねり出さなければなりません。例えば、以下のようなものはいかがでしょうか。

 

 

 

当初数ヶ月の施策で既存顧客のうちFacebookアカウントを持っているユーザーとはほぼほぼエンゲージできたと考えると、毎月主にクチコミリーチで増えていくファンは潜在顧客である可能性が高いと考えられます。その数トータルで862人。そのうち、10%が数年以内に顧客化すると考え、その顧客の生涯価値(LTV)5万円をかけあわせました。するとファン獲得から5年間で4,310万円の売上創出になり、結果的に投資コストがペイする、というものです。

 

・・・まあ、ちょっと乱暴ですよね。

 

荒削りな試算ですがFacebookページ運用で新規顧客獲得を目指す場合の骨子くらいにはなると思います。

 

 

参考:顧客生涯価値(LTV、Life Time Value)

 

 
終わりに

2回に渡って「Facebook運用は本当に儲かるのか?」というテーマで考察をして参りましたが、単なる「ケースバイケース」以上のイメージやとっかかりを提供できたでしょうか?

 

私が知るかぎりではありますが、Facebook運用の現場では、目的を見いだせず、方向感も手応えもなくただ淡々と運営されているケースが少なく有りません。理由は色々考えられますが、私は根本的な原因として、「経験値を持ったプロフェッショナルが入り込めないビジネススキーム」があると感じます。人によって感じ方は異なると思いますが、システム屋出身の私としては、ここ10年くらいの「WEB業界」を制作会社や開発会社、SIerといった「アウトプット屋」さん達の努力でかなりの部分支えてきたと考えています。彼らは高い人日単価を取りますが、その見返りとしてお金になるかどうかもわからない提案や相談、他案件や実績で得た実績、納品後のボランティアに近いアフターフォローといったノウハウやリソースの提供を介してクライアントと共生し、インターネットの世界を支えてきました。

 

ところが、「Facebookの活用」というプロジェクトではこの「アウトプット屋」の業界構造が機能しません。制作会社や開発会社はクライアントの担当者や部門が予算を取るため、Facebookにまつわる様々な企画、提案を考えます。しかし、企画が通った暁に、重要となるのは運営や運用のノウハウ・リソースです。デザインやプログラム、ドキュメントといった「アウトプット」にはこれまでよりお金が落ちて来ません。お金は制作会社・開発会社に落ちる代わりに、社内リソースや広告、リスク管理、内部調整費といった部分に流れます。そしてノウハウは業界のグルーである制作会社・開発会社ではなくクライアントの企業内に蓄積され、社外にそのノウハウが共有されることは稀なことです(そんな中、書籍ソーシャルシフトのインタビューなどで自社のノウハウを公開してくださった先進企業様はホントに神だと思います)。だから新しくFacebook(を始めとするソーシャルサービス)の活用をはじめる企業は、いつもゼロから戦略を立ち上げなければならず、常に不安にかられています。ソーシャルメディア活用で「事例」がこれほどもてはやされるのも、そういった不安を反映してのことではないかと感じてしまいます。代わりに、ノウハウを持った「ソーシャルメディアコンサルタント」という方々が活躍しておられますが、提案とビジネス成立の難しさは同じようなものではないかと感じます。

 

私はWEB業界(広すぎですかw)のことをどうこう言ったり、どうにかしたりできる人間ではないのですが、少なくとも今のままだと企業のFacebook活用はいちかばちか、相当にリスキーなものになってしまう。必要ない人まで活用を始め、失敗の声ばかり聞こえ、なんだかろくでもないことになりそうだ。などと勝手に気をもみまして、せめて自分の知っていること、考えていることだけでも公開しようと今回のエントリを書きました。

 

このような動機を尊大に感じる方、不快に感じる方がいらっしゃいましたら申し訳ありません。また、非常に少ないサンプルで、簡略化した考察であるため、誤解や偏見を生んだかもしれません。それでも、一部の方だけでも、今回のエントリから何か得ていただき、業務に活かしていただければ幸いです。

 

最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

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直人

ループス・コミュニケーションズ勤務、プログラマあがりのPM兼営業職。2007年に結婚して姓が変わりました。

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