最新決算情報に基づく,mixi,モバゲー,GREE,ニコニコ動画のビジネスモデル比較

斉藤徹 | 2009/05/18

最新決算情報に基づく,mixi,モバゲー,GREE,ニコニコ動画のビジネスモデル比較

【この記事は, 同調査 の最新版であり, Japan.Internet.com筆者コラム の転載です】

このゴールデンウィークの前後にかけて,日本最大のSNS「mixi」を運営する株式会社ミクシィと,日本最大の携帯SNS「モバゲータウン」を運営する株式会社ディー・エヌー・エーが相次いで決算発表,またニコニコ動画を運営する株式会社ドワンゴも第二四半期の業績発表を行なった。

今日は,その最新情報をもとに,日本の代表的なソーシャルメディアである,mixi,モバゲータウン,GREE,ニコニコ動画の4サービスを取り上げ,そのビジネスモデルを比較してみたい。

なお,この情報ソースは各社が投資家向けに公表している最新の営業報告をもとにしているが,基準が同一でなく,一部筆者の推定が含まれている。特に GREEについては,アバター売上と有料会員売上の比率は公開されておらず,あくまで推定値として閲覧いただきたい。(より正確な情報があれば,ぜひ筆者宛ご指摘いただけると幸いです)

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■ 日本トップのメガSNS 「mixi」
会員数1500万人を超える日本最大のSNSであるmixiは,モバゲーやGREEと比べコンテンツが弱い。したがって有料課金のツールが限られるため,米国型で広告収入に依存したビジネスモデルになっており,現時点では広告収益以外としては有料会員サービス「mixiプレミアム」の売上のみ,約7%とごくわずかだ。現在,PC利用が低迷する一方,携帯利用は急成長しており,実はすでに70%以上が携帯からのアクセスとなっている。自社コンテンツを強化し,複合型ビジネスモデルで利益率を高めているモバゲーやGREEタイプに対し,mixiはコンテンツを外部に求めるオープン化戦略を志向している。これはFacebookに代表されるビジネスモデルであり,彼らが一気にMyspaceを抜き去る要因となったコンテンツ差別化戦略である。外部アプリケーションで得られる収入の多くは開発デベロッパーのものとなるため利益率は低下するが,多様なサービスをコストなしで取り込むこととなり,モバゲーやGREEと異なる成長曲線を描き始める可能性がある。

■ ケータイSNSのパイオリア 「モバゲータウン」
モバゲータウンは,1100万人の会員を持つ,携帯SNSおよび複合型ビジネスモデルのパイオリアだ。(1)ユーザーは,ケータイ無料ゲームというキラーコンテンツに惹かれ集客される (2)ゲームアイテムやアバターで消費マインドを刺激される(これは韓国メガSNS「CyWorld」の手法) (3)欠乏気味の「モバゴールド」を獲得するために,モバゲーを通じてECサイトを訪問する というステップを通じて,広告収入を上回るアバター収入やアフィリエイト(成果報酬型広告)収入を得ている。近年のモバゲータウン収益急拡大は,このビジネスモデルに起因するものだが,ここに来て成長鈍化が顕在化した。会員数は堅調に伸びているが,ページビューは微増にとどまり,売上の7割を超えるアバター/成果報酬型広告売上が四半期ベースで減少傾向となっている。広告代理店との包括提携で純広告売上が増加し今期は一定の成長を見たが,GREEの追い上げも激しく,次の一手が期待される。

■ 最も収益性の高い複合型ビジネスモデルを持つ 「GREE」
GREEの特徴はその柔軟な戦略性だ。PCではmixiに圧倒されたため主軸を携帯にシフトし,花丸急成長だったモバゲータウンのコンテンツやビジネスモデルの良いところを忠実に学習し,取り入れていった。モバゲータウンと異なる点は,携帯の「GREEプラス」やPCの「GREEプレミアム」など有料会員からの収入も獲得しているところだ。これによりGREEは最も進んだ複合型ビジネスモデルを実現し,経常利益率57%という圧倒的な収益性を誇るサービスとして進化した。先行ライバルであるモバゲータウンが伸び悩む中,GREEは堅調に広告売上および会員課金売上を成長させている。原因のひとつはその会員の年齢属性があろう。媒体資料によると,10代比率が36%のモバゲータウンに対してGREEは27%。また30才以上の比率はモバゲータウンの23%に対して36%となっており,ユーザーの購買力に明らかな差があることがわかる。これに対してモバゲータウンでも「オトナゲ」などで幅広い会員獲得に乗り出している。またコンテンツの観点からは,単発モノでシンプルなゲームの多いモバゲーに対して,GREEは継続利用を意識したゲームが多く,会員の定期訪問に貢献している点も見逃せない。

■ 収益性に課題を抱える 「ニコニコ動画」
日本版YouTubeといえるニコニコ動画は,「ニコニコ動画プレミアム」という有料会員を大きく伸ばしており,収益の約2/3としている。ただし現時点で年約8億円の赤字で,収益上の課題点がある。(1)動画インフラのコスト。録画時間無制限の競合など,競争は激化している (2)著作権問題。収益の1.875%をJASRACに支払う義務がある。ただしCDやPVのアップロードは引き続き認められておらず,追加コストリスクもある (3)2chとの関連イメージが強く,スポンサーがつきにくい といった点だ。動画にコメントを融合させた文化を作り出した貢献は高く,ぜひこの課題をクリアしてほしいと願っている。

さて,上記の図を詳細な表にしたものはこちらである。

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総論でいえば,成熟感のあるmixiとモバゲー,急追するGREE,赤字体質脱却を目指すニコニコ動画という相対的なポジションが浮き彫りになっている。

また今後の注目は,真っ先にオープン化戦略を選択したmixiであり,台風の目となる可能性が高い。これは海外でのGoogle vs Facebookというソーシャル・プラットフォームの覇権争いに端を発している(mixiは,googleの提唱する OpenSocialを採用)ものだ。

ただし収益面から見ると,オープンコンテンツ化戦略でに舵をきった拡大路線のmixiと,クローズコンテンツ戦略で複合型ビジネスモデルにより収益力を重視するモバゲー,GREEという対比軸が浮かび上がってくる。

 

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AUTHOR PROFILE

  • 著者:斉藤徹

株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役。

 

1985年、慶應義塾大学理工学部を卒業し、日本IBM株式会社入社。1991年2月、株式会社フレックスファームを創業。2005年7月、株式会社ループス・コミュニケーションズを創業し、ソーシャルメディアのビジネス活用に関するコンサルティング事業を幅広く展開。20年を超える起業家としての経験とビジネスに関する知見に基づき、ソーシャルシフトの提唱者として「透明な時代におけるビジネス改革」を企業に提言している。著書に『再起動 リブート』(ダイヤモンド社)『BEソーシャル 社員と顧客に愛される5つのシフト』『ソーシャルシフト これからの企業にとって一番大切なこと』(日本経済新聞出版社)、『新ソーシャルメディア完全読本』(アスキー新書)、『ソーシャルシフト 新しい顧客戦略の教科書』(共著、KADOKAWA)など多数。

 

2016年4月から学習院大学経済学部経営学科の特別客員教授に就任。「起業論」「企業経営とトップマネジメント」「企業経営とソーシャルキャピタル」「インキュベーション塾」の講義を担当する。

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