【2011年5月最新版】直近決算発表に基づくmixi、GREE、Mobage、Amebaの業績比較

斉藤徹 | 2011/05/23

【2011年5月最新版】直近決算発表に基づくmixi、GREE、Mobage、Amebaの業績比較

国内4大ソーシャルアプリ・プラットフォーム、mixi、GREE、Mobage、Amebaの2011年1-3月期の四半期決算発表が出揃った。現在、4社の外部環境は、多機能携帯の成熟やスマートフォンの急成長、さらにFacebookなど海外勢の急追などで激変期にある。それらを踏まえ、今回の調査では、現業績やサービス比較に加え、各社の戦略などもあわせて分析してゆきたい。

なお,この分析レポートは,各社が投資家向けに公表している最新の決算報告,および広告代理店・クライアント向けに発行している媒体資料を主要な情報ソースとしている。あわせて、ネットレイティングス社「Neilsen/NetRatings NetView」およびビデオリサーチインタラクティブ社「Mobile Media Mesurement」による視聴データ調査、関係者ヒアリングもあわせ、多面的な考察を試みた。

また、当記事においては,それらの客観的な数値に基づき、できる限り公平な視点で、各社の業績やサービスを比較することを心がけている。

■ 各社の最新四半期(2011年1-3月期)、全社業績比較について

まず、各社の最新四半期決算資料に基づき、企業としての財務分析からはじめたい。

Fig1_5

2011年1-3月期 全社売上および利益の比較チャート】

この中で「前期比」とは2010年10-12月期との比較、また「利益率」は営業利益率を示している。四半期業績で比較すると、売上面ではDeNAとサイバーエージェント、利益面ではDeNAとGREEが群を抜いている。また前四半期比で見ると、最も高い成長率を示したのはオープン化が順調にすすむGREE。それに対してmixiは売上、利益とも前期比を下回る結果となった。

さらにその中で、SNS関連事業のみを抽出し、その売上高を比較したのが次のグラフだ。
Fig2
【2011年1-3月期 SNS事業売上の比較チャート】

3.11大震災の影響が心配されたが、SNS関連事業に関しては、総じてその影響は軽微だったようだ。例外として、広告売上比率が80%と突出して高いmixiのみ、広告売上の伸び悩みで前期比マイナスとなった。

このうち、課金売上は、内製アプリ、タイアップアプリ(協業開発)、サードパーティアプリの三種類に大別できる。Mobageを例にとると「怪盗ロワイヤル」が内製、「ガンダムロワイヤル」(DeNA + バンダイナムコゲームス) がタイアップ、「戦国コレクション」(コナミエンタテインメント) がサードパーティとなる。これらの課金売上の内訳を推定したのが下記のグラフだ。

Fig20_2
【2011年1-3月期 課金売上の比較チャート – 独自推定】

GREEおよびMobageは内訳非公開のため、独自推定を加えてグラフ化している。GREE、Mobageのオープン化は順調にすすんでおり、特にMobageのオープンゲームでは月間売上が1億超が10タイトル弱になっているようだ。なお、図内で、内製売上はタイアップアプリ、アバター等を含み、サードパーティ売上はネット(プラットフォーム収入としての30%前後の売上のみ)を対象としている。またmixiは100%サードパーティ売上、Amebaは逆に100%内製売上となっている。

ゲームタイトル数では、すでにモバゲーは1000超(うち150超はYahoo!モバゲー)、GREEは800超と、両社によるサードパーティゲームの獲得競争は続いているが、既存ゲームメーカーなど大手コンテンツ企業の強さが際立ちはじめた。技術者不足や開発コスト増大もあいまって、ソーシャルゲーム開発ベンチャーの淘汰がはじまってきたと言えるだろう。

■ 各サービスのインターネット視聴率および会員属性について

では、続いて各サービスのインターネット視聴率を多角的に分析したい。まず各サービスのページビュー推移から見ていこう。

Fig13_2
【2010年10月 – 2011年3月 ページビュー推移比較チャート】

なお、Mobageは2010年8月から、GREEは2011年1月からそれぞれページビューを非公開としたため、この2社についてはビデオリサーチインタラクティブ社の視聴率データに基づき独自予測した数値をプロットしている。(参考まで、自社発表数値とビデオリサーチインタラクティブ社調査の誤差は、6ヶ月平均値でmixiが3%、Amebaが4%程度であり、一定の信頼性があると考えている) またMobageのページビューにはYahoo!Mobageは含んでいない。時系列推移から見ると、Mobageの低下とGREEの上昇が顕著で、この2サービスのページビューは再び接近していることがわかる。後述するARPU単価でMobageが圧倒しているが、オープン化に成功したGREEがMobageを急追しはじめている。

さらに2011年3月時点の端末種別ページビューは次の通り。こちらも前述した独自推定に基づくものだ。
Fig5
【2011年3月期 端末種別ペーシビューの比較チャート – 独自推定】

依然として多機能携帯からのアクセスが大部分を占めているが、各サービスのスマートフォン・アクセスは着実に増加しているようだ。

参考まで、ビデオリサーチインタラクティブ社の携帯視聴率データの最新統計サマリーは次の通りだ。

Fig7
【2011年3月 多機能携帯ベースの視聴データ分析】

この表は、携帯アクセスの約50%(mixi57%、GREE49%、モバゲー49%、Ameba未発表)を占めるDocomo多機能携帯からの最新視聴データだ。これによると、一人当たりの平均視聴ページ数や滞在時間にはサービスごとに大きな開きがあり、このスティッキネスが各社の売上に直結しているであろうことが推測できる。

さらにネットレイティングス社NetViewによる、PCの最新視聴データも掲載しておきたい。分析対象としては、ゲーム系を中心に、mixi、Yahoo!モバゲー、Amebaビグ、ハンゲームをピックアップした。

Fig8
【2011年3月 PCベースの視聴データ分析】

PCベースではmixiがリーチ率で圧倒していることがわかるが、後発のYahoo!モバゲーも300万人を超え、会員獲得面では善戦している。これら4社サービスのページビューを時系列で見ると次のようになる。
Fig9
【2010年8 – 2011年3月 PCベースのページビュー推移】

国内PCゲーム業界における台風の目となったYahoo!Mobageだが、10月を境にページビューは低迷している。Yahoo!Mobageの収益状況については、DeNA社、Yahoo社とも公開していないが、それぞれの四半期決算から推定する限り、収益で大きな貢献をしている様が見受けられず、マネタイズで苦戦しているようだ。要因としては、ソーシャルゲームを志向するPCライトユーザーに支払い習慣がなく、心理的取引コスト(お金を支払いことに対する抵抗感)が高いためと予想される。

最後に、各社が発表している会員属性(性別、年齢別)も付記しておきたい。主力としている携帯サービスのみを対象としている。

Fig10

■ 各サービスのARPU比較について

さらに,各社のマネタイズ特性を探るために,会員あたりの月売上高(以下、ARPU: Average Revenue per Userと省略)を比較をしてみたい。

Fig3
【2011年1-3月期 広告ARPU、課金ARPUの比較チャート】

この表は,各サービスが会員一人あたり月にどのくらいの売上をあげているかを示している。例えばmixiでは、1登録会員につき、広告で48円/月(広告ARPU)、会員課金で12円/月(会員ARPU)、合計60円/月(総ARPU)の売上を上げたということを意味している。

広告ARPUで強いmixiとAmebaは、PCベースがしっかりしている点、女性会員が多い点で媒体価値が高い。ただし、広告ARPUの差異は小さく、業績に直結するのは課金ARPUの差であり、これは内製ゲームを持つか否か、そしてそのクオリティに起因するものだ。その点、Amebaは内製ゲームを積極的にすすめており、今後の課金ARPUの伸びが注目される。

Fig6
【2010年3-12月 ARPU推移】

時系列でARPU推移を見ると、Mobageが350円前後で頭打ちとなっているのに対して、GREEが着実にARPUを伸ばしているのが見て取れる。GREEは月額料金会員が約30%と高いことなどがMobageとのARPU差となっていたが、ページビュー、ARPUとも増加に転じており、売上で2倍もの差をつけられたライバルMobageの急追体制が整いつつあると見て良いだろう。一方、MobageのARPU低迷の主たる原因は、Yahoo!Mobage会員からのマネタイズが未成熟な点があげられるだろう。

■ 各サービスのスマートフォン戦略について

国内4サービスにとって最大の脅威は、現主戦場である多機能携帯電話が成熟化し、シェアが低下すると予測されていること。多機能携帯にかわり、最重要ゲーム端末になるのはスマートフォン、中でもiPhoneとAndroidだ。
Chart14_2
【世界のハードウェア出荷予測推移】

国内ではやや出遅れた感のあるAndroidだが、ここに来て各携帯キャリアがヒートアップしている。5月10日に発表されたMM総研の調査(リリース)によると、2011年度の国内スマートフォン予想出荷台数は対前年比2.1倍にあたる1820万台、これは国内全携帯出荷台数の、なんと47%にあたる数値だ。

このような急激な外部環境の変化を前に、各社ともスマートフォン対応を加速している。下記の表は、国内の主要なソーシャルアプリ・プラットフォーマーの対応状況をまとめたものだ。

Fig1
【各社のマルチ・プラットフォーム化 対応状況】

現在、スマートフォン対応が最も進んでいるのはGREEだ。対するMobageも、ngCoreというiPhone/Android向け共通開発エンジンを強みとしたアプリ・プラットフォームが近日登場する予定だ。さらに、GREE、Mobageの二社は、企業買収やキャリア提携、海外プラットフォーマー提携など、極めて素早いスピードで海外展開の準備を進めている。

Fig12

【各社の国内外会員数と海外パートナー】

ただし、ガラパゴス化していた多機能携帯市場と異なり,スマートフォンではボーダーレスな争いになる。しかもiPhoneではApple、AndroidではGoogle、Amazonという覇者的存在がおり、プラットフォーマーとしての参入障壁は相当高い。

これらの競合をかわし、国内プレイヤーがさらなる発展を遂げるためにはどうすれば良いのだろうか。それを検討するまえに、そもそもMobageとGREEはなぜここまで急成長したのかを分析しておこう。2社の成功要因は次の3段階であらわされるだろう。

  1. 先行参入により、競合プレイヤー不在で、大規模なユーザー獲得に成功したこと
  2. 続いてゲームにソーシャル要素を取り込み、ユーザー数自体を差別化要素としたこと
  3. 寡占状態になった段階でオープン化を図り、ゲームメーカーは傘下を余儀なくされたこと

フリーミアムによる高収益化、テレビCM大量投下による認知度向上なども成功要因として重要だが、ベーシックな成功方程式はこの3ステップだ。

それに対して、スマートフォンの場合はボーダーレスな激戦地となるため、最初のステップを踏みにくい点が最大のリスクだろう。ソーシャルアプリ・プラットフォーマーの必須要件は、(1)コミュニティ (2)仮想通貨 (3)広告ネットワーク の三点セットだが、AppleやGoogle、Amazonなどのアプリ流通プレイヤー、FacebookやTencentなどの巨大ソーシャルネットワーク、各国の携帯キャリア、はてはZyngaのような大規模顧客を持つゲームメーカーまで、巨大会員を抱えて、この魅力的な市場を狙う潜在的競合が存在している。

最終的には、世界中のゲームメーカーが参加するオープン・プラットフォーマーがスマートフォン上に現れ、独占的覇者になる可能性が高いが、そのためには、最もゲーム参加者が多く、最もコストがリーズナブルな開発環境を、ゲームメーカーに提供する必要があるだろう。これらを踏まえた上で、最後に4社の戦略を総括してみたい。

1. mixi
mixiは他3社とは明確にサービス戦略が異なり、主として国内を対象として、強みであるソーシャルグラフを活用した広告、ローカルサービス、企業向けサービス、コマースサービス等に力点をおく方針だ。したがって彼らの競合は、他3社ではなくFacebookだ。学生を中心に強い利用者基盤を持っているmixiだが、今後の事業展開を考えると、ビジネス向けサービス、ビジネスパーソン向けサービスを充実していく必要があるだろう。Facebookの国内普及は、映画のヒットや広告代理店のバックアップなどを背景に加速しており、業務提携等による大胆なスピード感が必要とされるだろう。

2. GREE
一度はMobageの後塵を拝していたGREEだが、ここ最近のスピード感、成長感はMobageを上回る勢いになっている。国内においては、携帯既存顧客をスマートフォンに誘導するためのデータポータビリティ(既存ゲームのデータ、アイテムなどをそのまま利用できる)でコアユーザーを確保、提携したau端末プレインストールからも集客、さらに大量のCM投下から内製ゲームという流れをスマートフォンでも創出する作戦だ。海外展開では、7500万人会員を持つOpenFeintを完全子会社化してコミュニティ基盤とし、その上に既存の仮想通貨や広告ネットワークを付与して、一気に世界最大のスマートフォン・プラットフォームのポジションを狙う。また6.5億人会員を持つTencentとの提携で、ゲームメーカーが言語対応だけで中国市場に進出できる可能性が出てきた。これはゲームメーカーにとって大いなる魅力と言えるだろう。

3. Mobage
データポータビリティによる会員誘導、提携したDocomo端末のプレインストール、大良のCM投下から内製ゲームへの流れで国内トップを狙い、海外向けには会員1750万人のngmoco子会社化とそれをベースにしたスマートフォン・プラットフォーム化をすすめていく。ほぼGREEと同様の作戦だ。異なる点をあげれば、海外においてもユーザー導線の入り口を押さえるために、携帯メーカーSamsungや、ドコモ経由で海外携帯キャリアとの提携を図っている点、買収したngmocoの持つゲーム開発エンジンを持っている点など。特に後者の目指すのは、iOS/Android/FlashゲームをJavaScriptによる単一ソースコードで実現できるというもので、このツールの完成度が高ければ大いなる技術的差別化、ゲームメーカーの誘引要素ともなりうる。注目したい。

・ Ameba
後発のため、PCや多機能電話ではオープン化に出遅れたAmebaだが、スマートフォンでは積極的だ。サードパーティは限定されることになるだろうが、オープン化の意向を発表している。キー・ソリューションは資本参加しているパンカクが開発に関与している iPhone向けソーシャルゲーム・プラットフォーム「GameWave」だ。OpenFeintやngmocoと同様、コミュニケーション・プラットフォーム機能を有する他、課金や広告基盤なども組み込み、ゲームメーカー向けにSDKを提供する予定で、早ければ今春にスタートする見込み。ただし、スマートフォン市場における覇者的ポジションを取るためには、GREEやMobageのような買収を含むマルチなスピード感が必要だ。企業買収に消極的なサイバーエージェントが彼らに対抗しうる勢力になるためには、強力な企業提携が必要になるかも知れない。

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AUTHOR PROFILE

  • 著者:斉藤徹

株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役。

 

1985年、慶應義塾大学理工学部を卒業し、日本IBM株式会社入社。1991年2月、株式会社フレックスファームを創業。2005年7月、株式会社ループス・コミュニケーションズを創業し、ソーシャルメディアのビジネス活用に関するコンサルティング事業を幅広く展開。20年を超える起業家としての経験とビジネスに関する知見に基づき、ソーシャルシフトの提唱者として「透明な時代におけるビジネス改革」を企業に提言している。著書に『再起動 リブート』(ダイヤモンド社)『BEソーシャル 社員と顧客に愛される5つのシフト』『ソーシャルシフト これからの企業にとって一番大切なこと』(日本経済新聞出版社)、『新ソーシャルメディア完全読本』(アスキー新書)、『ソーシャルシフト 新しい顧客戦略の教科書』(共著、KADOKAWA)など多数。

 

2016年4月から学習院大学経済学部経営学科の特別客員教授に就任。「起業論」「企業経営とトップマネジメント」「企業経営とソーシャルキャピタル」「インキュベーション塾」の講義を担当する。

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