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【2025年上期版】“広告”から生まれる炎上——事例から読み解く傾向と対策

福田浩至 | 2025/07/14

【2025年上期版】“広告”から生まれる炎上——事例から読み解く傾向と対策

企業の信用は一朝一夕には築けませんが、SNSでの炎上ひとつで一瞬にして失われる——。

2025年上半期に起きた炎上事案は、まさにその現実を突きつけました。とくに今期の傾向として顕著だったのが、CMやキャンペーンなど「企業の顔」とも言える広告がリスクの震源地になった事例が数多くみられました。特に、広告表現だけでなく、年初のフジテレビの事案のように、広告を出稿すること、スポンサーになること自体がリスクになるケースに注目が集まりました。


2025年上期に発生した主な広告・キャンペーンの炎上事例

2025年上期に発生した広告が批判を受けた国内外の事案を10件ピックアップしました。

 

簡単に各事案を説明します。

1. アサヒビールCM契約解除

人気俳優起用CMに対する週刊誌報道やSNS批判を受け、アサヒビールが契約解除。出演者スクリーニングと対応の迅速性が課題となりました。参考記事はこちら


2. フジテレビスポンサー311社撤退

フジテレビによるセクハラ問題を受け、311社がCM撤退。大規模スポンサー離脱の波及と、対応の透明性が注目されました。参考記事はこちら


3. 赤いきつねアニメCMの性的表現批判

頬や唇の大写し演出が「男性目線の性的表現」としてSNSで炎上。制作プロセスにおける多様視点レビューの必要性が浮き彫りに。参考記事はこちら


4. Poppi腸活飲料の誇大広告疑惑

「prebiotic」「腸活」訴求が科学的根拠薄く、カリフォルニア州で集団訴訟提起。約890万ドルで和解、ラベル改善へ。参考記事はこちら


5. ゼクシィ17歳モデル起用CM炎上

17歳モデルが結婚予感をあおるCMに起用され、「未成年の結婚想起は不適切」と批判。年齢整合性と倫理配慮が課題です。参考記事はこちら


6. コカ・コーラのAIホリデーCM炎上

全編AI生成CMで温かみやリアリティが失われたとして批判続出。「魂のない広告」としてブランド信頼に赤信号。参考記事はこちら


7. ゆうパック、サイン省略紹介動画が炎上

「絶対にすっぴんを見られたくない女VSなんとかサインをもらわなければいけない配達員」動画に批判殺到。参考記事はこちら


 

8. Heineken “男性らしさ”押しつけ演出

男性像の固定観念を風刺しようとしたが、「逆差別」「男性攻撃」と受け止める声も。ユーモアとバランス調整が難しい事例。参考記事はこちら


9. Nestlé 水CM “自然誇張”が炎上

「天然水」と宣伝しながら実際は殺菌・ろ過処理あり。消費者団体やEUが告発、信頼失墜の典型事例となりました。参考記事はこちら


10. カンヌライオンズ AI捏造キャンペーン炎上

DM9がAI加工でCNN動画を捏造し、グランプリ受賞後に無効化。代理店責任者辞任、広告賞審査基準の見直しへ。参考記事はこちら


まとめ(全体傾向)

上半期10件の事例をもとに、炎上が発生した原因として次のようなことがあげられます。

1. 価値観・倫理観の変化に追いつけない表現

性的表現(赤いきつね)、性別役割(アサヒビール)、年齢(ゼクシィ)、ジェンダーの習慣(日本郵政、Heineken)、など、時代の感覚とズレた表現が炎上。少し前なら許容されていた演出も「価値観・倫理観ンおアップデート不足」により批判の対象になりうる。

2. AI技術を活用した広告での“信頼性・人間性・ぬくもり”の喪失

Coca-Cola、カンヌライオンズでは「感情のない」「嘘っぽい」「倫理不在」との批判が集中。AIだからこそ慎重に扱うべきという視聴者の目線に反してしまった。

3. ステルス的誇張・演出に対する反感

Poppiの「健康効果の強調」、Nestléの「自然アピール」など、演出・表現の過剰さが虚偽的に受け取られた。

4. スポンサーが負う責任

フジテレビやアサヒビールの吉沢亮契約解除など、出演者側の背景・行動がブランドに跳ね返る現象が加速。企業が「回収より切り捨て」を選ぶと、信頼より炎上が深まることもある。

このように、広告やキャンペーンは企業の単なる「商品説明」ではなく、社会との「価値観の対話」といった側面が鮮明になってきました。
その分、無意識の偏見や安易な演出が“社会の逆鱗”に触れるリスクも増しているのではないでしょうか。

 


広報・広告担当が今すぐ見直すべき「5つの教訓」

各事例を通じて以下のような教訓が導かれています。現場でのリスクワークショップで必ず共有する内容です。

1.表現の“受け取り方”を事前にテストせよ
   社内評価だけでなく、世代・ジェンダー・文化背景の異なる層からのレビューを標準化する。AIを活用したチェックサービスもあります。

2.AIを使うなら、透明性と倫理観の両立が前提
  「AI生成であること」の明示、「どの工程に使われたか」の解説が信頼につながる

3.センシティブなテーマは“専門家”を巻き込め
   メンタルヘルス、ジェンダー、宗教などを扱うなら必ず当事者や有識者のレビューを経る

4.出演者リスクは契約段階から管理すべき
   スクリーンイメージとプライベート行動がリンクしやすい現代、タレント契約には“倫理条項”が不可欠

5.危機対応の透明性が、ブランドを救う唯一の道
   「沈黙」は状況によっては、炎上燃料になることもある。即時・誠実・一貫したコミュニケーションが不可欠


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AUTHOR PROFILE

  • 著者:福田浩至
株式会社ループス・コミュニケーションズ副社長、博士(情報管理) 多数の企業にて、ソーシャルメディアの効果的かつ安全な運営を支援しています。 特に、企業のソーシャルメディア活用におけるルール「ソーシャルメディア・ポリシー」策定や啓蒙教育など積極的な守りの仕組みづくりが専門領域です。
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