こんにちは岡村けんすけです。
6月に大和広告の花崎さんのご依頼で福山でゲーミフィケーションのセミナーで登壇させていただきました。その流れで、なんと代表の花崎さんとの対談が翌日に実現。福寿会館という福山城に隣接した明治時代からあるすごく雰囲気の良い旧館での対談です。
ぼくの不思議なキャリアパスや競馬の話などいつものセミナーでは見られない一面もオープンに話しています。自分の執筆記事よりいいね!が多いとショックかも(笑)
今までのキャリアとソーシャルメディアとの出会い
花崎 岡村さん、今日もよろしくお願いします。そして昨日は勉強会で貴重なお話ありがとうございました!どうでしたか?福山のオーディエンスは?
岡村 そうですね、いつもは東京とか大阪が多いですからね。昨日はいろんな質問をいただけてよかったんではないかと。
花崎 質問多かったですね。ウチの勉強会でも過去最多の質問、あれだけ実際出てくるのはちょっと珍しい。普通日本だと「質問ありますか?」っていってもなかなか出ない。
岡村 手があがらないみたいな。
花崎 参加者のみなさんもゲーミフィケーションをご自身の業務とつなげて考えるいい機会になったかなと思います。ありがとうございます。
私自身ゲーミフィケーションの書籍で一番初めに読んだのが、ゆめみの深田さんの「ソーシャルゲームはなぜはまるのか」という本でして、これはおもしろいなと。ちょっと後で触れたいんですけど、実はウチの会社で「行動科学」っていうのを導入しているんです。これは組織の中で人をどうやって動機づけるか、というコンテクストの話なんですけど、ゲーミフィケーションも行動科学も本質的に人間理解ですよね。人間の動機づけとそれに基づく行動みたいなところを、科学的に解明していこうというアプローチが、非常に近いなあと思っていて。そういったことも含めて今日いろいろお話を聞かせていただければと思います。
岡村 よろしくお願いします。
花崎 業界関係者というか、特にソーシャルメディアまわりでは、ループスさんはすごく有名だし、その中で岡村さんがゲーミフィケーション専門領域でやってるというのは結構ご存じの方いらっしゃるかと思うんですけど、前職はどういったお仕事をされていたんですか?
岡村 私は今のループスで3社目になるのですが、最初の会社ではプログラマー、SEとして徹夜しながらグループウェアとか業務系のシステム開発をしていました。その後、2社目で働いていた時の部長がループスに転職して、「岡村けえへんか(来ないか)」と声をかけられました。私も、もうちょっとおもしろいことしたいという希望があったので移ることを決めました。でもソーシャルメディアのベンチャーで働くこと自体、正直個人的にはよくわかってなかったんですよ。当時はミクシィも使ってなかったし。
花崎 それは何年頃のお話ですか?
岡村 5年前ですね。2007年なので。ループスに入って、私自身も劇的にかわりました。SNSのASPサービスをやっていて、独自コミュニティを運用したいっていう会社さんに対しSNSのパッケージを提供していました。外向け(コンシューマー向け)のシステムということもあり、誤作動したらエライことなるというので、その時期は結構大変でしたね。苦労してリリースにこぎつけたとしても、企業が独自コミュニティで成功するってなかなか成功しにくいんです。はじめるより、運用が大切というか。
花崎 継続的に活性化させていくところってたぶん難しいのかなって気がしますよね。
岡村 そこが本当に難しい。あの頃ミクシィなどにはすでにいろんなコミュニティがありました。だから「わざわざこちら(社内の独自SNS)に行くインセンティブって何なの?」となる。ミクシィのほうが人数も多いし楽しいと。
当時はまだツイッター、フェイスブックは日本では流行ってはいなかったのですが、そういったやり取りを通し、我々自身、当社がもっているパッケージだけじゃなくて、外部のプラットフォームを使うことの可能性に気付き始めていました。また、当初は電話を一件ずつかけながら、アウトバウンドで営業をやってた時期もありました。でも「ソーシャルメディアいりませんか?」って電話かかってきても、「そもそも何?」みたいに言われてしまう。更に「ミクシィやってないねんけど」と言われると、一から理解していただかなければならない難しさがありました。
そこで、営業方針を方向転換しようという話になったのです。SNSパッケージを扱っているときは、リスティング広告を数十万単位で出稿していた時期もあったのですが、それを一切やめました。会社の方針として、「逆に、ソーシャルメディアに関心がある方からに見つけていただこう」ということになり、まず斉藤がブログで情報発信を始めました。斉藤のブログでは、ツイッターやフェイスブックなどを始めとした、ソーシャルメディアを使ったマーケティングを成功させる秘訣を24時間以内に配信する、というポリシーで運営し、非常に多くの方に見ていただくことができました。
さらに社員も「自分の得意分野を」ということで各自情報発信することになりました。私の場合はそれがゲーム領域だったのです。まだ日本でやってる方は殆どいなかったんですが、ちょうどソーシャルゲームもフェイスブックで流行りはじめていた時期でした。
ブログによって、ユーザーさん、つまりファンがついてくれたという面は大きかったですね。
ファンの方々が、ソーシャルメディア関係の仕事が発生した際に、「いつも情報出してくれているループスさんにお願いしよう」といった感じでお声がけをしてくれるようになったのです。それでも最初の1年くらいはすごく苦しんで、ブログのPVも少なかったです。しかしツイッターの爆発によって、「ループスさんすごくいい情報出してくれている」というのをどんどんみなさんに広めていただけるようになりました。そういう方から結果的にお声掛けがくるようになったという経緯があります。
ループスでの成功 リアルとソーシャルの連動
花崎 今は売り込み的な営業活動を一切しなくても、お問い合わせが来るような状況なんですよね。短期間で素晴らしいですね。当然ソーシャルメディアのフォローの風というのはあったでしょうけど、とにかくアプローチがユニーク!ゲーミフィケーションに関するブログも、斉藤さんとほぼ同時期に始められたんですか?
岡村 ブログを開設したのは斉藤がはじめてから3か月くらい後ですね。最初は情報を出すことにすごく抵抗がありました。
「競合に情報流れちゃうじゃないですか」という意見があったりしました。あと「ブログを書く時間がないですよ」みたいな話もあったんですけど、「とにかくやろう」ということで継続して書いていました。
当初週1回は書こうという話だったんですけど、結局月1回程度しか書けなかったですね。
花崎 私もウチでやってるフェイスブックのキュレーション投稿くらいなら毎日少しずつできるんだけど、ブログってもう少し継続するのにハードルが高いなーというところは感じていて。当時モチベーションを維持するために何かこう工夫とかされていましたか?
岡村 最初はすごく辛いながらもがんばって書いていました。それから徐々に見られるようになり、リツイートされる割合が増えてきました。それから講演依頼も来るようになったのです。ミクシィさんがプラットフォームを立ち上げられる前に、ゲーム系のセミナーが開かれていたのですが、そういうところに呼ばれる機会も増えました。情報を出せば、次第に名前も売れてきたという感じです。
花崎 なるほどね。当然デジタル上で拡散していくんだけど、やっぱりリアルなイベントなんかも含めて、岡村さんを皆さんが知って、そこからブログにやって来てというリアルとネットのいい循環ができたんですかね。
岡村 ソーシャル単独ってなかなか難しいと思うんです。リアルとうまく組み合わせることで、先ほどのコミュニティの活性化というところにつながるんですよね。リアルで仲良くなっていくと、その人がインフルエンサーというか、エバンジェリストになっていただけるというところがあると思います。
花崎 私も、もともとソーシャルメディア大学で岡村さんの話をリアルでお聞きして、それがご縁で今回のセミナー、インタビューにつながっていった。そういうのってやっぱりパワフルですよね。実はあの週、セールスフォースのCloudForceも見てたんですよ。その時も組織内にどうゲームを活かしていくかみたいな話をされていて。週2回も岡村さんの話を聞いたんですね。
岡村 私の話しを2回もですか。たしかに珍しいですね(笑)。
あの当時はまだゲーミフィケーションもそんなに認知度は高くありませんでしたからね。
花崎 刊行ラッシュがありましたよね。書籍のね。むちゃくちゃ出てきて。
岡村 NHKのクローズアップ現代でも採り上げられたりしましたね。
花崎 そうですよね。そういう意味では「旬」と言うと語弊があるかもしれないですけど、今注目を集めているコンセプトですよね。
岡村 そうですね。旬のところもありますし、対象としてどういう会社さんでも適用できそうなイメージがわくところがポイントだと思います。ソーシャルって、企業ごとに向く・向かないがあると思っています。単にフェイスブックとかツイッターでアカウント開設しましたってだけではなかなか成功しない。おそらく我々もそうで、たとえばブログをせずにフェイスブックとかツイッターだけで情報発信しても、今のようなブランディングってできなかったと思うんですよね。
ブログがあってそれを拡散する装置としてソーシャル使っていただけなので。そういうところを意識して、キラーコンテンツを用意できる会社でないと難しい。もちろん大手は別ですよね。ローソンさんとかユニクロさんとか、結構すでにファンがいらっしゃるところは、ブランド自体がキラーコンテンツになるので、ファンになったり、新商品アップしたり、勝手にコミュニケーションしてくれる。
花崎 そうですよね。単にページを開設するだけでなく、コンテンツが伴わないといけませんね。
ところで岡村さん、ゲーミフィケーションっていう言葉は聞いたことあるし、なんとなく言ってることはわかってるんだけど、正確にそれをとらえきれてない方も現時点ではまだまだいらっしゃると思うんです。そこであらためて簡単に「ゲーミフィケーションとは」ってところについて、ご説明いただけませんか?昨日お聞きしたあとで恐縮なんですけども(笑)。
岡村 また同じ内容になっちゃうかもしれないですけど(笑)。ゲーミフィケーションって実は本質的には昔からあったものなんです。例えば居酒屋のハッピーアワー。17時~19時はビール半額にしますよというのもゲーミフィケーションなんですよね。その時間帯ならば行きたくなる、その時間だったら得だから行こうという風に人を動かす。昔からゲーム、ファミコンなどはそうですよね。マリオとかドラゴンクエストといったゲームって、ユーザーを動かす要素をうまく含めていたと思います。
例えばスーパーマリオの1面がすごくわかりやすい。まず説明書見なくても誰でもできる。トコトコ歩いて行くとジャンプできるし、箱みたいなのをたたくとコインが出てくる。キノコを食べると大きくなる。1面でそんなすべての要素を表示させている。そうすると簡単にゲームを続けていくことができる、という仕組みです。そんなゲームの要素をリアルの場やネット上でも適用できないのか、というところがゲーミフィケーションになります。
行動科学との共通点 継続と動機づけ
花崎 冒頭でお話ししたように、ウチが社内導入している行動科学が、本質的にすごくゲーミフィケーションに似ているなと思ってるんですね。そこでも具体的な手法、例えばポイントカードみたいなものをつくって動機づけるとか、きめ細かく承認をしてあげるみたいなことって結構言われていて、それこそチェックインするとバッジがもらえるゲーミフィケーションの仕組みと非常に近い。
そういう意味では、どちらも人の心理に寄り添うものの考え方、普遍的な人間理解に立脚した考え方なんだと思います。だからこそ知っておく価値がすごくあるものだなと思っていて。それこそビジネスだけでなくプライベートでも活用できますよね。
岡村 そうですよね。それこそ女性と付き合うときなど、すごく自然にみなさん応用されてたりするんですよね。
花崎 行動科学ではこちらが意図する行動を相手がとらないのには2つのハードルがあると。1つはそもそも「やり方がわからない」っていうのと、もう1つは「やり方はわかってるんだけど続けることができない」というもの。先ほどおっしゃったマリオのファーストステージにおけるオンボーディングはまさに前者にあたるのかなと思いました。一方でおそらくより重要なのは行動を続けてもらうための動機づけをどうセットしていくのかということ。そんな感じでしょうかね。
岡村 そうですね。継続してもらうために、どういう動機づけをして、そこでどういうエッセンスを使うか。行動科学っておっしゃってましたけど、2・3年ぐらい前にアメリカで出された「ソーシャルゲームのダイナミクス」っていう本の中でも行動科学に関係するようなエッセンスに言及されていました。
花崎 例えば「離職率を下げる」がテーマの場合。これってゲームで言うところの離脱率と同じで、続けてもらうための知見がポイントですよね。例えば、続けてもらうために、効果的に機能する考え方があればちょっと教えてください。
岡村 そうですね。大きいところで言うと「報酬」はすごく大事になってきますよね。これには貨幣価値があるものとないものの2種類があるんです。実質としての何か達成したらお金がもらえるというのと、お金ではない報酬、「うれしい」「楽しい」というものが与えられるという2種類がありまして。実は貨幣価値がある報酬よりも、貨幣価値がない「うれしい」とか「楽しい」といったものの方が続きます。
昨日も紹介させていただいたシンクスマイルさんでは、社員同士でバッジを贈り合い、褒めあった結果、それらが貯まるとランクアップして褒賞が受け取れるといった仕組みを導入されています。結果的には、褒賞が受け取れることよりもバッジをもらったりすることのほうがうれしいと。やっぱり人から褒められるってすごくうれしいですからね。
確かにお金ももちろんうれしいですが、あくまで一時的なものだし、一人だけで完結してしまう。バッジもらいあうというのは、みんなから褒められるといった他者との関係性がある。さらに可視化されているので、この人はどういう人かというのも見えてくる。実際に社員さんにも聞いてみたのですが、「バッジもらうほうがうれしいよ」と言われていましたね。
花崎 動機づけの方法を金銭的なものと金銭的でないものに分けて考えることって、普段あまり考えずにやっている気がしますよね。たまたま金銭的なものを思いつくのかもしれないし、逆の場合も。金銭的なインセンティブっていうのは何か短期的に動機づけたい時にはもしかしたら効果的なケースもあるかもしれないですけど、継続的にやるときには難しいかもしれないですね。
岡村 お金だとお金目的になってしまうんですよ。
花崎 ああ、目的が変わっちゃうと。
岡村 「お金のためにやる」となってしまう。おそらく仕事でやる場合には、やっぱり仕事そのものを楽しくしてもらわないといけないと思うんですよね。お金にしてしまうとお金をもらうために頑張るようになってしまう。
花崎 このエリアの小売さんでもよく見受けられるのが、ポイントカード的なCRM施策。とくに量販店さんなんかはこぞって作ってますよね。そのポイントが「何曜日は何倍」とか、よくありますよね。ポイントって金銭の代用品みたいなものだとすれば、ポイントが顧客の目的の一部と化してしまう。すると、よりポイントが貯まるお店が出てくれば、そういう人は去って行くということになりかねない。ライフタイムバリューをあげ、お客様と長くお付き合いしたいという時にはやっぱり継続性がないと。そういうことでしょうね。
最終的に値引き競争だとか、ポイントどこまでつけるのかといった類いの話はきりがないですよね。泥沼の戦いになっている業界ってやっぱり見受けられるし。そういう意味では、「そのお店や会社ならではの楽しさ」みたいなことをセットすることによって、そのお店から離れたくないというような顧客との接点をもっておきたいですね。
人ってなんらかのフィードバックをもらって動機づけられると思うんですけど、ポジティブなフィードバックとネガティブなフィードバックがありますよね。例えば何かが取り上げられるとか、罰を与えれるといったネガティブなものと、何かもらえる、賞賛されるといったポジティブなもの。行動科学でよく言われるのが、ポジティブにしろネガティブにしろ、すぐ確かに得られる結果がすごく大事だといわれています。逆に不確かですぐに与えられないフィードバックは続きにくい。例えば続きにくいのはダイエットや英会話、英語の学習みたいなものですよね。
ああいったものって、今日一日食事を抜いたからって、一気に体重が何キロ落ちたとかならないじゃないですか。英語も今日単語十個覚えたとしても、すぐペラペラしゃべれるわけじゃない。そういうのって続きにくいですよね。そういう時に楽しめる仕掛け、違う指標みたいなものを持って、それを見える化していくみたいなところでやっていくってすごい大事だし、ゲーミフィケーションの得意分野なのかなって思うんですけど、そこらへんはどうですか?
岡村 そうですね。ダイエットや勉強するところにゲーミフィケーション的な要素を取り入れるケースは、最近少なからずありますね。効果が見えにくいので、やった結果を見えるようにしていくのが大事です。やればレベルアップしたり、1日1回来れば何かしらインセンティブがあったりとか。
花崎 人の心の機微をうまくすくい上げる心配り。そこをどううまく設計に反映してあげるのかというところは大切でしょうね。
人の承認欲求をくすぐる仕組みとして、フェイスブックのいいね!ボタンってとても優れている思っていて。いいね!がつくと悪い気しないし、ちょっとうれしいわけですよね。いいね!する側もワンクリックでできてしまう。あれってフェイスブックに人が集まっていろんな情報を共有し続ける仕組みとしてはゲーミフィケーション的に秀逸なのかなと。
岡村 まさにそうですよね。昔SNSって、ミクシィもそうですけど、コメントを入れるだけでしたよね。コメントを入れる人って、参加者の5%~10%ぐらいなんですよ。これは昔から変わっていません。投稿する人、コメントする人は限られてきて、大多数の人は見てるだけの「傍観者」になってしまうんです。そういうサイレントマジョリティの「声なき人の声」を見せる形として、フェイスブックを始めとしたいいね!ボタンってすごく優れた設計になっていると思います。今はついてないサイト探すのが大変なくらいですよね。
花崎 やる前っていいね!ボタンが何がうれしいのかって正直思ってたところもあったんですけど、やっぱりやってみるといいね!をいただくと人間の本能的な承認欲求が満たされる。しかも情報発信のハードルがめちゃくちゃ低いと。本当にボタンを押すだけ。さらにソーシャルプラグインで他のところにも設置できる。本当によくできた仕組みですよね。
岡村 コメント書かない人でも、いいね!ボタンは押すっていう人はいますよね。
可視化と拡散性を組み込んだ設計
岡村 ゲーミフィケーションでもそういう設計が大切です。キャンペーンの場合でも、参加してもらうだけで終わってしまうケースがすごく多い。例えば何かアイデア募集をする際もいいね!ボタン設置したりするのがすごく重要です。さらにいいね!が多くつけばその人が優勝だという風にしたりする仕組みを考えたり。しかしそれだけだと、いいね!をつける人の動機がなくなってしまうので、いいね!をつけた人の中から抽選で何かプレゼントするなど、評価してみようと思ってもらいやすい仕組みも必要です。その両方の方々のことを考えて設計するとよいと思います。
花崎 参加する人の立ち位置ごとに分けて考えると。
岡村 フェイスブックの場合、比較的いいね!を押してもらいやすいと思います。ただ、一般的にキャンペーンって参加者以外の人がいいね!押すことってあまりないと思うんです。そういうところを後押ししてあげる。
花崎 岡村さん、たしかフェイスブックのカバー画像、競馬ですよね。競馬がお好きというイメージがあるんですけど。ちょうど昨日も競馬に関する記事をシェアされてましたよね。競馬もゲーム性のあるものだと思うんですけど、そのハマる要素をゲーミフィケーション的に分析するとどんな感じになりますか?
岡村 パチンコや競馬は、よくソーシャルゲームに例えられることが多いですね。一般的にギャンブルはソーシャルゲームとすごく似ていて、ハマる要素があります。ハマりすぎると危ないので、制限が掛けられているケースがすごく多いですね。実はソーシャルゲームは、これまではあまり制限が掛っていなかったんですが、最近になって規制みたいな話が徐々に出てきています。
競馬のハマる要素についていえば、2つ。馬好きという観点でもハマリますし、馬券を買うことによってもハマる。最近は馬券の種類も結構増えてきて、一攫千金もあり得る。それこそ1回で2億みたいな。
また、一人で楽しむこともできるんですけど、仲間と一緒に「当たった」「はずれた」みたいに盛り上がれる要素もある。そういったところがやはり楽しめる要素なのかなと思います。
花崎 競馬に対する愛情を多分人一倍お持ちの岡村さんが、先日の記事にもあった「競馬離れ」というこの由々しき状況を、もしゲーミフィケーション的に打開するとすれば、岡村さんならまずどういったことを盛り込んで、その人気を回復していこうと思いますか?
岡村 私自身も一人で競馬をやっているときより、他の人達とやっているときのほうがより楽しいので、みんなで予想を共有したりするのはいいと思います。あと「行っている」ということを他の人にも「見える化」する。「俺はこれだけ毎週毎週東京競馬場に行っとるんやぞ」みたいなことをアピールできるとおもしろくなる。
あとパドック(競馬場での馬の下見所)の情報。今JRAでは情報の個別配信が一般的で、パドック解説は会場である東京競馬場の中でやっています。また会場では、キャンペーンなどもやってるんですけど、そういった会場内の情報をもっと見えるようにしてあげることは、大切かなと思います。
花崎 確かにそうですね。
岡村 そうすれば、どういう人達が来ているのかという情報も、他のファンからも見えますし、それこそ継続性につなげていけるようになる。競馬場って、イベントをすごいやっているんですよ。食べ物系も、浜松餃子とか出てきたりするんですよね。
花崎 へぇ~。
岡村 それが殆ど共有(シェア)されていない。そこで、「イベントに参加している人達がこんなに楽しいんだよ」ということを見せてあげれるような仕組みが必要ですよね。それは別にウェブでも現地だけでもいいと思うんですけど。
花崎 確かに以前、それこそオグリキャップとかの全盛期には、同僚なんかとの日常会話の中に競馬ネタって結構出ていたし、競馬通がちょっと楽しそうに話しているのを聞いて、「有馬くらい買ってみようかな」とか、心情として出てくるところもありますよね。普段やらない人の興味をかきたてることができるかもしれない。また、既にやってくれている人に対する何らかの新しい価値をJRAさんから提供することも可能になるでしょうね。
岡村 そうなんですよね。「競馬場に来ればスタンプを押して」とか「何か抽選でプレゼント」みたいな単発のキャンペーンはやっているんです。でも、それだけじゃなくて「毎週来ているぞ、こいつすごいな!」みたいな見せ方の仕掛けが加わるとファンは継続して頑張って行くと思うんですよね。
花崎 JRAサイドから何か称号なんかもらえた日には、ヘビーユーザーは喜ぶでしょうね。
岡村 何かバッジつけてたら「すごいな」みたいな(笑)
花崎 そうそう(笑)。それこそ別の入口から入れちゃうとか、特別な所で見れちゃうとか。
岡村 馬主席で見れるなんてのは、もう夢ですよね。ファンからすると。
花崎 そういう何らかの特別感を演出したり、いろいろ機会はあるでしょうね。
岡村 そうすると競馬から離れにくくなりますし、その人達からまた情報がシェアされたりっていうことはあるのかなぁと。
花崎 なるほど、おもしろいですね!ぜひ、やってくださいよ(笑)
岡村 ハハハ、JRAさんからお声が掛ればやらせていただきます (笑)
ますます広がるゲーミフィケーション
花崎 イマジナクトラボでは、昨日見て頂いたようなリアルのセミナー、勉強会をちょうど2011年の1月から始めていて、今年もほぼ毎月のペースでやってるんです。私達としてはより多くのマーケターの方に継続して参加し、学びつづけてほしい。さらにいえば座学で学んだことを実践で活かしてもらいたいと思っています。そういったゴールに向けてゲーミフィケーションがいろいろ適用できるんではないかと。
どこまで実現できるかどうかは別として、例えば参加回数だとか、フェイスブックページの投稿に対するいいね!やコメント、情報のシェア、グループでの発言とか。そういったものを数値化、定量化してマーケッターとしての経験値として見える化していくことができないかなぁということ。学習系の事例って結構あるとお聞きしましたけど、そういう事例ありますか?マーケティング領域じゃなくてもいいんですけど。
岡村 そうですね。まだそこまでやってるところはないかもしれません。いずれにしても参加者のキズナを醸成するステップとしてゲーミフィケーション的な要素を盛り込んで仕組みを設計してあげる感じでしょうね。
花崎 ありがとうございます。ゲーミフィケーションって、これからいろんなところに適用されてくると思うんですけど、「今後こういう形で進化していくんじゃないか」みたいなご見解をお持ちでしたら、教えてください。
岡村 そうですね。海外、特にアメリカの場合はもう2015年までに70%くらいの会社がゲーミフィケーションの仕組みを導入するといった予測が立てられています。日本でもおそらくマーケティングのみならず、社内でも使っていこうという流れが加速してくるのではないかと考えています。
日本はもともとゲーム文化のある国。ゲームカルチャーって日本がうちたててどんどん世界に広げていった歴史がありますね。ファミコンもそうですし、プレイステーションも全世界に広がっていったというところがあるので、まあ日本人の得意なところだと思うんです。その意味からもゲーミフィケーションをよりうまく使えるのは日本なんじゃないかというのは感じています。それこそ、AKBは本当にゲーミフィケーションの要素を使いまくって、結果これだけCDが売れていない時代にあれだけ売っています。
花崎 そうですね。1枚あればいいものを複数買ってしまうというのは、完全に行動が強化されていますよね。買わざるを得ない状況に。
岡村 まさにゲーミフィケーションを徹底的にしているのがAKBや、ソーシャルゲームなんですよね。で、日本はこの領域で主導的な立場にたてる可能性を秘めていると。海外でそんなやり方が編み出されたという話はあまり聞かないし、月10万、20万ゲームに使うというところも海外にはない。
花崎 ないんですね。
岡村 そうするとまあ日本が一番うまく使えるんじゃないかと。
花崎 岡村さんのご活躍の場がこれからますます広がってくる感じですね。世界に冠たる事例をぜひ楽しみにしています。
最後に岡村さんの今後の活動についての抱負といいますか、こうしていきたいなというところがあれば、お聞かせいただけますか?
岡村 そうですね。特にゲーミフィケーションのところは、まだあまり定義というところがなされていないところなので、報酬有/無し、貨幣価値有/無しみたいなところも含めて啓蒙していきたいなと。何か「とにかくバッジをつければゲーミフィケーション」とか、「金銭的なインセンティブを組み込んだキャンペーンをはりましょう」みたいなことではなく。
私やゆめみの深田さんは、継続して、付き合っていけるところにゲーミフィケーションという仕組みをとりいいれようとアプローチしているので、それをしっかり啓蒙していきたいですね。そしてゲーミフィケーションというキーワードがバズワードにならないように。
花崎 ほんと今後のご活躍をまた楽しみにしています。また機会があったらぜひ福山にお越しくださいね。
今日はどうもありがとうございました。
岡村 ありがとうございました。
撮影・取材 福寿会館
【対談を振り返って】
いつもセミナーで話していない行動学的な話やソーシャルメディアとの関連もかなり話しましたが、自分でもあとから原稿を見てこんな事言ってたんだと感心しました(笑)
対談の中でもお話ししていますがゲーミフィケーションは身近な「ゲーム」というキーワードには興味を持たれやすいと思います。ソーシャルは難 しそうでもゲームだったらと思う方は多いかもしれません。前日のゲーミフィケーションセミナーも終了後、質問の嵐でした。とはいえ今までにも あった概念であるゲーミフィケーションが最近になって注目されているのはソーシャルメディアの普及、活用によるところが大きいので、ゲーミ フィケーションとソーシャルメディアの組み合わせの効果については引き続き訴えかけていきます。
※地方でのセミナー依頼も承りますのでお気軽にご相談ください
株式会社大和広告 代表取締役社長 花﨑 章
広島県生まれ。中央大学商学部卒。大学卒業後、広告会社営業、メーカー広告宣伝担当を経て、2002年から現職。社長業を務めるかたわら2007年に社会人大学院デジタルハリウッド大学院に入学。主にデジタルテクノロジーとマーケティングに関する研究に参画し、オフラインマーケティングの経験と新たに獲得したオンラインマーケティングの知見と人脈を生かした幅広い活動を展開している。その他コーチング、アクションラーニング、NLPなど、個人と組織内の効果的なコミュニケーションや学習に関する研究も行い、コラボレーションツールを活用した自社ビジネスへの応用を実践中。デジタルコンテンツマネジメント(DCM)修士。LABプロファイル® 認定コンサルタント&トレーナー。
株式会社大和広告 http://www.daiwa-ad.jp/
本記事の掲載ご協力 イマジナクトラボ http://www.imaginact.net/
株式会社ループス・コミュニケーションズ
ソーシャルメディアコンサルタント
mobage、GREE、mixiなどのソーシャルアプリ、ゲームを得意とするソーシャルメディア・コンサルタント。オンライン、オフライン問わずゲーム要素を取り入れることでファンとの活性化を図ることができる「ゲーミフィケーション」について研究している。グループウェア、CRM等の業務系システムにも精通し、adwords/Admob/Facebook広告などの広告関連業務なども幅広く担当。ブログ「in the looop」ゲーミフィケーション、ビジネスSNS担当。OGC2012「ソーシャルゲームのテクニックでゲーミフィケーションを設計する」登壇。Facebookページ「ゲーミフィケーション・ラボ」運営。著書「ゲームの力が会社を変える」8月発売予定
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成果の可視化と成功体験のライフサイクルがゲーミフィケーション。: 【対談】人を動かすゲーミフィケーションの基本 http://t.co/6eqZTdSB
【対談】人を動かすゲーミフィケーションの基本 [ITL] http://t.co/2V12gJaC @LooopsComさんから
いろいろとお世話になっている @SignorFiore さんとループス @kensukeo の対談がまとまってます。この仕組みの導入はさらに進んでいきそう。 / 人を動かすゲーミフィケーションの基本 http://t.co/p1rS2lGg
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