ユーザー数が4億人を突破し、2015年10月1日からは日本でも広告が全面解禁になるなど盛り上がりを見せているInstagram(インスタグラム)。若年層に人気のソーシャルメディアということもあり、多くの企業アカウントが開設され、ブランディングや商品訴求などビジネスに利用される機会も増えている。
そこで、今回からInstagram分析ツール「Aista」を利用し、企業アカウントの投稿へのいいね!率ランキングを、フォロワー数規模別に作成した。さらに、各ランキングの中でいくつかアカウントをピックアップし、運用や投稿の特徴を整理、解説する。
Instagram いいね!率 調査方法
- データ提供元について
Instagram分析ツール「Aista」登録アカウント
- データ取得期間
2015年9月1日〜9月30日
- いいね!率の定義
投稿のいいね!数÷投稿時のフォロワー数
- ランキングの用語解説
・カテゴリ:Aista内で振り分けられた分類
・平均いいね!率:期間中の1投稿あたりの平均いいね!率
・フォロワー数:期間最終日のフォロワー数
・投稿数:期間中の投稿総数
・平均ハッシュタグ数:期間中の1投稿あたりの平均ハッシュタグ数
全体サマリー
当記事では、Instagramにおける企業アカウントのフォロワー数別に平均いいね!率によるランキングを作成した(フォロワー数5,000〜9,999、10,000〜49,999、50,000〜99,999、100,000〜)。
フォロワー数5,000〜9,999では平均投稿数20.7、フォロワー数10,000〜49,999では平均投稿数20.0で、フォロワー数が5万人未満の企業アカウントでは 1日に1投稿未満である。一方で、フォロワー数50,000〜99,999では平均投稿数38.8、フォロワー数100,000〜では37.8と、フォロワー数が5万以上のアカウントでは1日1投稿以上を行っている。
フォロワー数5,000〜9,999の企業アカウント
いいね!率ランキングトップ10
平均投稿数 20.7
平均ハッシュタグ数 3.4
1位は東京カメラ部公式で、平均いいね!率が唯一10%を超えた。2位は読売テレビで、現在は木曜ドラマの「婚活刑事」関連の投稿のみを行っている。3位のCanCanは、カテゴリとしては「雑誌・webマガジン」であるがファッション関連の雑誌である。4位以下に「ファッション」カテゴリが5アカウントもランクインしていることからも、ファッションとの親和性の高さをうかがわせる。
ピックアップアカウント
東京カメラ部公式(1位:平均いいね!率11.34%)
東京カメラ部は、日本最大級の審査制写真投稿サイトであり、元々Facebookページを積極的に活用し、ユーザーからの写真投稿を紹介している。唯一平均いいね!率が10%を超えたアカウントだった。9月の投稿数は53あったものの、全てユーザーの投稿画像を紹介したものである。
ハッシュタグ「#tokyocameraclub」「#東京カメラ部」をつけたユーザーの投稿の中から、東京カメラ部の運営者が選定した画像を、改めて東京カメラ部公式のアカウントで投稿し、紹介している。
投稿1
投稿2
例のように、選定したユーザーのアカウント名を投稿文内に入れること、投稿に対しては選定されたユーザーやその他ユーザーによるコメント欄でのコミュニケーションが見られた。また、東京カメラ部公式のアカウントも返信をしている投稿も見られた。
ローソン(7位:平均いいね!率6.44%)
FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアを積極的に活用している企業であり、Instagramでも専用の投稿画像を用いて運用している。9月の投稿数は9でランキング内では多くない一方、平均ハッシュタグ数が6.6と最も多く活用している。飲食物の商品をオシャレに盛りつけ季節感を出すことで紹介しており、ハッシュタグは自社名の他、商品に合わせたハッシュタグを活用している。
投稿1:商品をオシャレに盛り付けた投稿
商品に合わせて「#メロンパン」「#朝ごはん」「#breakfast」など名詞のハッシュタグを活用。
投稿2:季節感を出した投稿
また、「本気で、おいしいプロジェクト」というブランディングキャンペーンを行っており、Instagramではハッシュタグ「#本気でおいしい」を作成し、本気でおいしいと思った料理などをユーザーに投稿してもらうキャンペーンを実施している。
フォロワー数10,000〜49,999の企業アカウント
いいね!率ランキングトップ10
平均投稿数 20.0
平均ハッシュタグ数 4.6
1位はANAで、唯一平均いいね!率が10%を超えた。2位には、NECのPCブランドLaVieのアカウントが入っている。3位にスターバックスJP、4位にJALなど、他のソーシャルメディアも積極的に活用している企業のアカウントがつづいている。
ピックアップアカウント
ANA(1位:平均いいね!率11.51%)
9月度の投稿数は6で5日に1件ほどの投稿頻度であり、上記ランキングの中の企業では最も少ない。投稿の特徴としては、飛行機の模型や関連グッズなど、ちょっとした小道具(フォトプロップス)を使った投稿を行っている。オリジナルハッシュタグである「#ANA旅」や「#anaprops」なども使用している。また、プロフィール欄に「ANAソーシャルメディア利用規約」のURLを記載し、運用方針等をユーザーに示している。
投稿1:飛行機の模型を使用した投稿
「#空」「#飛行機」といった一般的なハッシュタグの他に、絵文字ハッシュタグや「#ANA旅」「#ana_jp」といったオリジナルハッシュタグを活用している。ユーザーからのポジティブなコメントも目立つ。
投稿2:フォトプロップスを使用した投稿
飛行機に関連するグッズを使用している。ハッシュタグも「#フォトプロップス」の他に、「ANAのフォトプロップス」という意図であろう「#anaprops」を活用している。「#anaprops」でハッシュタグ検索をすると、ANAのInstagramフレームで撮影した写真を載せているユーザーも見られた。
LaVie City(2位:平均いいね!率9.89%)
NECのPCブランド「LaVie」のアカウント。ミニチュアの街「LaVie City」の物語という連載形式の投稿を行っており、製品自体は作中にさりげなく出ているだけである。「#LAVIE_CITY」や「#miniature」など定常的につけているハッシュタグから、物語の内容に合わせたハッシュタグを活用している。また、投稿文も日本語だけでなく英文でも投稿している。
投稿1:製品をさりげなく登場させている投稿
「#父と息子」「#絆」など物語に合わせたハッシュタグを活用。さりげなく製品名がでている。
投稿2:季節に合わせた投稿(動画投稿)
稲刈りの様子をブラシを使い表現している動画投稿。英文で投稿しているため、海外ユーザーのコメントも多数見られる。
フォロワー数50,000〜99,999の企業アカウント
いいね!率ランキングトップ10
平均投稿数 38.8
平均ハッシュタグ数 5.8
1位のPUNYUSでも5.69%に留まる結果で、平均いいね!率が10%を超えるアカウントがなかった。平均投稿数が38.8とこれまでのランキングより大きく増加しているが、こちらは4位のサマンサタバサが投稿数125、9位のEVRISが投稿数125で、この2アカウントが平均値を押し上げている影響による。「ファッション」カテゴリが7アカウントランキングするなど目立っている。
ピックアップアカウント
PUNYUS(1位:平均いいね!率5.69%)
PUNYUSは、人気芸能人であり人気Instagramユーザーである渡辺直美さんがプロデュースするアパレルブランドのアカウントである。9月の投稿数は平均ハッシュタグ数が22.9と他のアカウントと比較すると数倍のハッシュタグを活用していることがわかる。新店舗オープンやセール情報を投稿する他、渡辺直美さんやモデルを使った商品紹介投稿が特徴だ。
投稿1:セール情報
オリジナル画像を使用し、コメント欄で詳細を説明している。ブランド名のハッシュタグをはじめ、「#fashion」「#present」など関連する人気ハッシュタグを利用している他、「#ナルト」など画像の特徴を活かしたハッシュタグも活用。
投稿2:モデルを起用した商品紹介
商品そのものと商品を着こなしているモデルを使うことで、商品イメージをユーザーに伝えている。また、どの投稿もハッシュタグ一覧の最後にオンラインストアのURLを紹介していることも特徴的(リンクはされず文字列の表示のみ)。
無印良品(5位:平均いいね!率4.28%)
9月の投稿数が25と、ほぼ毎日投稿していることがわかる。商品をオシャレに写し、「#無印良品」「#denim」などのハッシュタグを使い紹介している。画像だけでなく動画投稿も取り入れている点、投稿文を日本語だけでなく英語でも記載している。
投稿1:商品をオシャレに写す
外国人のアカウントからのコメントが目立っている。
投稿2:動画投稿
商品を組み立てている様子を紹介している。英語でも投稿文を記載している。
フォロワー数100,000〜の企業アカウント
いいね!率ランキングトップ10
平均投稿数 37.8
平均ハッシュタグ数 4.7
1位は東京ディズニーリゾートで、平均いいね!率が17.46%と本調査で最高値となっている。また6位にディズニーランド、9位にウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオズが入るなどディズニー関連のアカウントが目立つ。9月の平均投稿数は37.8で、8位ブランデーメルビルが139だったのをはじめ、2位の24カラッツは41、3位の月間EXILEは50など積極的に投稿を行っている。
ピックアップアカウント
東京ディズニーリゾート(1位:平均いいね!率17.46%)
本調査において最高値となっている(2番目がANAで平均いいね!率11.51%、フォロワー数は21,643人)。ディズニーリゾート園内を綺麗に撮影し一言添えて投稿するなど、運用に関してはシンプルだが、プロフィール欄に「パークでの写真は #tokyodisneyresort をつけてね!」などユーザーの投稿を促す工夫が見られる。
投稿1:園内をお洒落に撮影
ハッシュタグはディズニー関連のものがほとんど。
投稿2:複数の投稿を1枚の投稿に見せる
プロフィールの投稿一覧でみると、画像がつながって見える。
WEGO(4位:平均いいね!率6.03%)
日本のアパレルブランドであるWEGOがランクインした。9月の投稿数が36と、1日1投稿以上行っている。平均ハッシュタグ数が7.9で、ブランド名の他に「#fashion」「#harajuku」など人気のハッシュタグを積極的に活用している。
投稿1:モデルを写した投稿
投稿2:商品の紹介
商品に対するポジティブなコメントが目立つ。
ピックアップ・ポイント
全体を通して、Instagram上で人気が高い「ファッション」カテゴリの企業アカウントが目立つ中、「交通」「フード」「レジャー施設」などのカテゴリの企業アカウントも投稿内容やハッシュタグの活用など運用上の工夫が見られた。また、キャンペーン実施の有無により本ランキングは変動してくるので、引き続き調査をしていきたい。
アカウントプランナー紹介:若月 翼(わかつき つばさ)
1990年山梨県生まれ。三浦海岸在住。早稲田大学スポーツ科学部を卒業後、インターン期間を経てループスにジョイン。在学中はスポーツ政策の学生学会の運営やアスリートの震災復興支援活動のサポートなどを行う。現在は企業のソーシャルメディア活用支援などに従事。興味関心はスポーツ×デジタルマーケティング。
“Instagram企業アカウント トレンド調査 2015年9月度”
“Instagram「交通」「フード」「レジャー施設」などのカテゴリ投稿内容やハッシュタグの活用など運用上の工夫が見られた。”