これまで時系列表示であったフィードが、ユーザーの興味・関心が高そうな投稿から表示される新アルゴリズムに変更されることが発表され、大きな動きを見せているInstagram。今後、企業のInstagram活用において重要なポイントになることは間違いないだろう。
今回は、フィードのアルゴリズム変更が適用され始める少し前の2016年5月度における、いいね!率が高い企業アカウントの投稿を見ていきたい。今回もInstagram分析ツール「Aista」を利用し、いいね!率ランキングを、フォロワー数規模別に作成した。さらに、各ランキングの中でいくつかアカウントをピックアップし、運用や投稿の特徴を整理、解説する。
Instagram いいね!率 調査方法
- データ提供元について
Instagram分析ツール「Aista」登録アカウント
- データ取得期間
2016年5月1日〜5月31日
- いいね!率の定義
投稿のいいね!数÷投稿時のフォロワー数
- ランキングの用語解説
・カテゴリ:Aista内で振り分けられた分類
・平均いいね!率:期間中の1投稿あたりの平均いいね!率
・フォロワー数:期間最終日のフォロワー数
・投稿数:期間中の投稿総数
・平均ハッシュタグ数:期間中の1投稿あたりの平均ハッシュタグ数
全体サマリー
当記事では、Instagramにおける企業アカウントのフォロワー数別に平均いいね!率によるランキングを作成した(フォロワー数5,000〜9,999、10,000〜49,999、50,000〜99,999、100,000〜)。下記は、作成したフォロワー数別のいいね!率ランキング上位10の平均を比較したものである。
()内は前回数値
全体では、引き続きファッションカテゴリの他、テレビカテゴリのアカウントが上位10位以内に頻出した。テレビカテゴリのアカウントが増加し、力を入れていることがわかる。
平均いいね!率は、フォロワー数100,000〜を除き全体的に上昇傾向。特に10,000〜49,999は前回から+4.85ポイントと大幅に上昇、99.9-刑事専門弁護士-やラヴソングなどテレビカテゴリのアカウントが牽引していた。平均ハッシュタグ数は同様に特に10,000〜49,999では前回から+5.64ポイントの9.5投稿と大幅に増加していた。
フォロワー数5,000〜9,999の企業アカウント
いいね!率ランキングトップ10
平均いいね!率 10.19%(前回9.64%)
平均投稿数 20.9(前回18.8)
平均ハッシュタグ数 9.9(前回6.9)
各数値が前回から上昇・増加した。B.LEAGUE_OFFICIALなどが投稿数の増加を牽引している他、前回から引き続きファッションカテゴリのアカウントが多くランクインしており、ジャスティンデイビスやMaxi Hawaiian Jewelryなどの平均ハッシュタグ数が増加している。
ピックアップアカウント
伊勢神宮(2位:平均いいね!率14.38%)
世界的なイベントである伊勢志摩サミットの開催もあり、フォロワー数が1ヶ月で約2倍となるなど活性化した。いいね!率が増加していたのは伊勢志摩サミット時に各国首脳が参拝した際の様子の投稿で、オバマ大統領など関係者のアカウントをタグ付けしている投稿もあった。サミット関連以外では、Facebookアカウントなど他のメディアでは掲載していない神社の催しの画像などを投稿している。
投稿1:伊勢志摩サミット時の投稿
いいね!数が大幅に増加し、いいね!率も20.44%と非常に高い投稿。オバマ大統領など関係者のアカウントだけでなく、伊勢志摩サミットのアカウントもタグ付けしている。
投稿2:催しの様子
Facebookなどでは投稿していない画像も投稿。伊勢神宮に関するハッシュタグを日本語、英語両方で使用しているほか、キャッチコピーである「心のふるさと」もハッシュタグ化して使用している。
フォロワー数10,000〜49,999の企業アカウント
いいね!率ランキングトップ10
平均いいね!率 12.00%(前回7.15%)
平均投稿数 17.7(前回18.5)
平均ハッシュタグ数 9.5(前回3.8)
上述したように、99.9-刑事専門弁護士-やラヴソングなどテレビカテゴリのアカウントの平均いいね!率が高く、全体平均を牽引していた。Instagramと相性の良いフードカテゴリのアカウントもランクインしていた。
ピックアップアカウント
99.9-刑事専門弁護士-(1位:平均いいね!率19.43%)
出演者のファンからのいいね!数が増加し平均いいね!率が19.43%と、今回の調査で最高の数値となっている。Instagramアカウント開設時に、フォロワー数が多いTwitterアカウント(6月8日現在で15万人以上)で紹介したことや、出演者が自身のInstagramで99.9-刑事専門弁護士-のアカウントをタグ付けして投稿していることも、アカウントが活性化した要因と考えられる。
また、TwitterとFacebookでは番組プロデューサー目線で撮影の裏話やネタバレ、くすっと笑える出演者の話などの投稿を行っている一方、Instagramではアシスタントプロデューサー目線で独自の投稿を行うなど、使い分けが見られた。
投稿1:アシスタントプロデューサー目線での投稿。
会話文のようなユーモアあるハッシュタグを使用。「更新ありがとうございます!」と、出演者にだけでなくアカウント自体に好感を持っているユーザーも多い。
投稿2:アシスタントプロデューサー目線での投稿
TwitterやFacebookとは違う画像を使用。出演者に関する投稿は、ファンからの好意的なコメントが増加する。
フォロワー数50,000〜99,999の企業アカウント
いいね!率ランキングトップ10
平均いいね!率 9.18%(前回7.32%)
平均投稿数 23.6(前回29.9)
平均ハッシュタグ数 8.7(前回9.6)
ドラマ24「ナイトヒーローNAOTO」や「伽椰子と俊雄のほのぼの親子日記」など、テレビ、映画カテゴリのアカウントの平均いいね!率が上昇していた。テレビカテゴリのアカウントは出演者を写した画像の投稿が多く、出演者や作品のファンのいいね!が増加していた。その他はANAやJAL、LaVie Cityなど前回も平均いいね!率が高かったアカウントがランクインしている。
ピックアップアカウント
伽椰子と俊雄のほのぼの親子日記(3位:平均いいね!率12.25%)
ホラー映画「貞子VS伽椰子」のアカウントであるが、作品内のキャラクターである伽椰子とその息子の俊雄を「何気ない日常」としてコミカルに紹介しているユニークなアカウントである。作風と大きく異なる投稿を行うことで、ホラー映画ファン以外にも作品を訴求している。
投稿1:ホラー要素がないコミカルな投稿
作品内容や作風とは異なり、ホラーキャラクターの日常を投稿している。作品内の印象的なセリフ(表現)を「#あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」「#ニャー」のハッシュタグとして活用している。
投稿2:イベントに合わせた投稿
映画のプロモーションの一貫である始球式に向けて練習している様子を投稿。作風とのギャップからか、ファンからの好意的なコメントが目立つ。
フォロワー数100,000〜の企業アカウント
いいね!率ランキングトップ10
平均いいね!率 4.93%(前回5.90%)
平均投稿数 44.5(前回29.1)
平均ハッシュタグ数 6.7(前回4.9)
平均投稿数は44.5で前回の29.1から大幅に増加した。平均ハッシュタグ数は微増。1位東京ディズニーリゾート、2位月間EXILEを始めフォロワー数100,000〜のランキングに大きな変動はなかったため、ピックアップアカウントではランキング外だが12位のIKEA JAPANを取り上げる。
ピックアップアカウント
IKEA JAPAN(12位:平均いいね!率3.14%)
投稿数は4で、ランクインしている他のアカウントと比較すると少ないが、平均ハッシュタグ数は10.3とやや多い。投稿内容は、IKEA内なるイケアレストランの期間限定商品の紹介や、一般ユーザーがIKEA商品をオシャレ用いバルコニーを写した投稿を、Repost(他アカウントの投稿を利用)の形で「ベストバルコニスト」として紹介している。また、6月度の投稿ではあるが、イケア商品を用いオリジナルインテリアを作る動画投稿を行っている。
投稿1:期間限定商品の紹介
「#IKEA」「#オープンサンド」など関連するハッシュタグを用いるだけでなく、投稿の一部としてハッシュタグを用いている。画像自体もInstagramならではの構図で、色鮮やかなものである。
投稿2:DIYの動画投稿
自社商品と簡単な文房具を用いたランプ作りの紹介。キャプションも入っている。
早送りでテンポ良く進む。
完成して飾っている様子も紹介している。全体で10秒程度の短い動画となっている。
ピックアップ・ポイント
今回は、全体的にテレビや映画、書籍・webマガジンといったカテゴリのアカウントのランクインが目立った。テレビカテゴリでは出演者のファンが多いこともあり、舞台裏や撮影裏の様子を投稿するだけでもいいね!数が増加する傾向があるが、その中でも99.9-刑事専門弁護士や伽椰子と俊雄のほのぼの親子日記などアカウント独自の視点や世界観を構築しているアカウントも見られた。
Instagramがアルゴリズムを変更し、興味関心が高い投稿が上位に表示はじめたことで、企業の活用方法も大きく変わっていく可能性がある。
アカウントプランナー紹介:若月 翼(わかつき つばさ)
1990年山梨県生まれ。三浦海岸在住。早稲田大学スポーツ科学部を卒業後、インターン期間を経てループスにジョイン。在学中はスポーツ政策の学生学会の運営やアスリートの震災復興支援活動のサポートなどを行う。現在は企業のソーシャルメディア活用支援などに従事。最近の興味関心はスポーツ×VR。
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