話題の「LUUP」のクチコミを分析してみた 〜ネット炎上リスク診断の活用

福田浩至 | 2021/08/25

話題の「LUUP」のクチコミを分析してみた 〜ネット炎上リスク診断の活用

近年、電動キックボードや自転車などをシェアして使うサービスが増加する中、東京の渋谷・新宿などでは緑色がワンポイントの「LUUP(ループ)」に乗った人を目にする機会が増えています。

今回は、今話題の電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」のクチコミを分析し、ネット上で拡散されているポジ/ネガな話題をもとに企業の評判とネット炎上の脅威となり得る話題について診断してみました。

 

LUUPに関するクチコミの件数・推移を把握する

LUUPは、街中のポートに置いてある電動マイクロモビリティをシェアして使えるサービスです。2020年に都内6エリアでサービス開始し、時節がら、三密を避ける移動手段として関心も高まっています。今年4月には大阪もサービスエリアに加わりました。

 

今回は、Twitterを対象にLUUPに関するクチコミを見ていきます。
クチコミの分析は以下の流れで進めていきます。

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下のグラフは「LUUP」を含むツイート件数の日次推移を示したものです。

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観測期間:2021年1月3日〜2021年7月31日
ソーシャルメディア・アナリティクスツール「Brandwatch」を使用


3月ごろまでは10〜20件/日程度で推移していますが、4月から急増しており、一時は1,400件/日を超えるほどツイート件数が増加しました。これについては後述しますが、現在は少し落ち着いて60件/日程度で推移しています。

 

LUUPのクチコミをポジ/ネガで仕分ける

次に、LUUPのクチコミの内容を大まかに仕分けていきます。

下のグラフは、LUUPを含むツイートに含まれる文言から「顧客」「社員」「会社」の3つの領域に該当するものを抽出し、さらにそれをサービスや事業内容や運営企業に対して好意的(ポジティブ)/否定的(ネガティブ)なツイートを仕分け、期中の日次平均件数として示したものです。

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ツイートの仕分け条件は概ね以下の観点で設定。分類手順の詳細はこちら

顧客領域:サービスを利用した人やサービスを認知した人の発言。
社員領域:社員の仕事に関係する発言。
会社領域:会社の経営や事業内容に関する発言。会社の発信するリリースや社長の発言なども対象に含む。


どの領域もポジティブなツイートが多数となっていますが、顧客領域はネガティブがツイートが若干目立ちます。

それぞれの領域別に傾向を見ていきましょう。以下は顧客・社員・会社の領域別に仕分けたツイート件数の日次推移です。

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顧客領域では、4月以降にネガティブなツイートが増加している様子がうかがえます。一方で社員、会社領域ではネガティブなツイートはポジティブなツイートと比較して、極めて少ないことが分かります。

また、各領域の日次ツイート件数は、顧客領域がネガティブとポジティブを合わせると24件/日程度、会社領域が28件/日程度と拮抗しています。しかしグラフのとおり、会社領域の日次ツイート件数を押し上げているのは、1,000件/日を超えた2021年4月23日の話題であることが分かります。

 

拡散を引き起こした話題(トピック)を特定する

次にツイートが増加したタイミングに何があったのかを見ていきましょう。

下のグラフは、各領域別のツイートが拡散したタイミングとその規模を特定し、棒グラフで表現したものです。それぞれのタイミングで、ツイートの拡散を生み出した話題(トピック)が存在します。なお、棒グラフでは、ポジティブな拡散をプラス、ネガティブな拡散をマイナスで表現しています。

※拡散のタイミングと規模の特定手法は、こちらの過去記事をご参照ください。

データから読み解く「#家にいるだけで世界は救える」の拡散状態

 

(1)顧客領域の話題

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ポジティブな話題は、2021年の初めから毎月のように発生しています。最も大きな拡散が発生したタイミングは3月25日です。ここでは以下のようなキャンペーンのプレスリリースに対してに反応したツイートが目立ちました。

 

ネガティブな話題は、特に、2021年6月8日に大規模な拡散が発生していることが分かります。これは、以下のツイートが拡散の原因です。

 

メディア登場も多い国会議員のツイートですが、電動シェアキックボードの事故報道に対する言及があったため、ネガティブな話題として仕分けています。実際、このツイートの返信には以下のような危険を懸念する意見が多く寄せられています。

・楽しそうだけど危険ですね
・(前略)走る様子から運転手は無防備、車から認知しづらく危険度の高さはバイク同様だと思いました。
・(前略)スピードは出ているので、ヘルメット未着用の事故が起きた際は結構な事故になりそうですね。


その一方で、

・いいよなーこれ
・乗ってみたい笑
・楽しそう&気持ち良さそう

と、サービスに好感を抱いた返信もあります。

これ以外のネガティブな拡散は「怖い」「危険」という単語を使って新たなサービスに対して抱く安全性への懸念が多く見られました。

サービスが本格的に始まり、利用者が増加したために増大した話題もあります。4月の後半から5月にかけてLUUPを見かけた人が、以下のような懸念をツイートしているものが多く見られました。

 

また、以下のようなツイートが散見されました。関心の高まりにサービス供給が追いついていない状況が推察されます。

・暇なのでLUUPでも乗ってみるかと思って近所のステーションを調べているが、どこも充電切れじゃねーか
・LUUP昨日初めて乗った。あるって書いてある場所にないし、あると思ったら充電切れてるし思ったより近場にないから増やして欲しい

 

 

(2)社員領域の話題

社員領域では、ポジティブでもネガティブでも拡散した話題は確認できませんでした。

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(3)会社領域の話題

社員領域と同じくネガティブな拡散は確認できませんでした。ポジティブな拡散は、観測期間中に12件観測されています。

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拡散された12件の話題は以下の通りです。

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最も拡散されたのは、2021年2月5日の実証実験開始の話題です。以下のギズモード・ジャパンの投稿が大きく拡散されました。

 

また、岡井代表のアカウント(@DAIKIOKAI)からのツイートが7件も確認できます。特に4月23日に投稿されたシェアアプリのリリースが最も大きな拡散を生み出した話題となりました。

 

 

企業の評判と、ネット炎上リスクの診断

上記をまとめると、期中の各視点のトピックの拡散規模の累計値は以下のグラフのようになりました。社員、会社視点では、ネガティブな拡散は発生していないことが分かります。一方で、顧客視点ではネガティブな話題の拡散規模がポジティブな話題を上回っている状況が見て取れます。

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このような結果をもとに、現在のLUUPについて世間の評判と、今後ネット炎上の脅威となり得る話題について、期中の推移を見てみましょう。

LUUPのクチコミに関するネット炎上リスクを4週間単位で評価したもの(評価表)が以下です。この評価表では、3つの領域でそれぞれについてのリスクを現在の評判(ツイート件数の傾向)と、トピック(拡散を引き起こした話題の傾向)においてA〜Dの4段階で評価しています。

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A〜Dの段階は、以下のような状態を示しています。

A:安全
B:やや安全
C:注意を要する
D:危険(対策が必要)


3つの領域のうち、社員・会社領域ではすべての期間で評判もトピックも「安全」となっていますが、問題は顧客領域です。

2月ごろのネガティブなトピックが若干評判に影響を及ぼしていますが、3月には評判は持ち直しており、4月後半まではその状態を維持しています。しかし、4月後半から5月にかけてはネガティブなトピックが複数発生し、これを契機に5月〜6月の評判にも悪影響を与えていることが確認できます。

7月以降は、新たなネガティブなトピックが発生していないことから、評判も回復している状況です。ただし、ツイート件数も増加しており世間の注目も高まってきています。このような状況で、再度ネガティブなトピックが発生した場合には、評判が再び悪化することも懸念されます。

このように顧客領域のクチコミではサービス利用者の増加に伴い、4月後半にネガティブなトピックが目立つようになりました。そのため、2021年4月25日〜6月19日までの約2か月間に渡り、顧客領域のトピックはD(危険)と評価しています。

以上のことから、顧客の不満解消の強化に注力することが求められている状況にあると考えられます。クチコミから顧客視点のネガティブなトピックの内容を確認し、不満の原因を把握することで、効果的な対策を講じることも可能ではないでしょうか?

このように視点別にクチコミの拡散状況を可視化することで、世間の評判の把握や、対処すべき課題の特定が可能になります。

 

 

ループス・コミュニケーションズでは、企業や商品・サービスのネット上での評判/今後の炎上リスクを分析する「ネット炎上リスク診断サービス」を提供しています。もしも皆さまの会社やブランドについて分析してみたいといったご要望がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

 

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AUTHOR PROFILE

  • 著者:福田浩至

株式会社ループス・コミュニケーションズ副社長、博士(情報管理)

多数の企業にて、ソーシャルメディアの効果的かつ安全な運営を支援しています。 特に、企業のソーシャルメディア活用におけるルール「ソーシャルメディア・ポリシー」策定や啓蒙教育など積極的な守りの仕組みづくりが専門領域です。

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