カルディ「生ハム回収」から見るSNS上の拡散メカニズムと対策
2025年5月8日、カルディコーヒーファームを運営する株式会社キャメル珈琲は、お詫びと自主回収のお知らせ「オリジナル 生ハム切り落とし」|カルディコーヒーファーム公式サイトというリリースを発表しました。
このニュースは瞬く間にSNS上で拡散され、大きな話題となりました。
本記事では、このカルディ生ハムに関するSNS上の反応を実際のデータに基づいて分析し、情報がどのように拡散していくのか、そして企業としてどのような点に注意すべきかについて解説します。
目次
SNSで何が起きた?クチコミの広がりを読み解く
まず、ニュースが発表される前とされたあとのSNS上の反応の違いをポスト数の推移から見ていきましょう。
対象メディア:X
集計期間:4月13日から5月13日
収集ツール:Brandwatch
抽出条件:”#カルディ” OR “カルディ”
リリース発表前日までの1か月(4月7日~5月7日)のカルディに言及する1日平均のポスト数は1,806件です。
しかし、ニュースが報じられた5月8日にはポスト数が13,749件へと急増しました。
この数値からも、ニュースがいかに大きな反響を呼んだかが分かります。
ニュース発表直後の反応は?時間帯ごとの動きをチェック
次に、ニュース発表当日の5月8日の1時間ごとのポスト数の推移を見ていきましょう。
今回の事案についてニュース最初にニュースサイトに上がったのは、5月8日12時19分にYahoo!ニュースに取り上げられた以下の「ねとらぼ」の記事です。
Yahoo!ニュース|カルディ全店で販売の生ハムから「サルモネラ属菌」検出…… 「心よりお詫び」7万個自主回収 (現在ページは削除されています)
この記事に反応した最初のXでの投稿として、12時31分にねとらぼに転載された記事が確認できました。
カルディ全店で販売の生ハムから「サルモネラ属菌」検出…… 「心よりお詫び」7万個自主回収(ねとらぼ) https://t.co/pa4bm2qcW3
安いんだよねこれ
こないだ食べたな〜
https://x.com/gvh_f6/status/1920320678093340915
この投稿のリポスト数は0であり、これ以降もサルモネラ菌が検出されたニュースについて言及するアカウントは確認できますが、発表があった12時台において、この話題は11件できました。
その後、最初にYahoo!ニュースに取り上げられてから約1時間20分後の13時39分に、XのLINE NEWS公式アカウント(フォロワー数:52万)がこの「ねとらぼ」の同じ記事を掲載し、投稿します。
カルディ全店で販売の生ハムから「サルモネラ属菌」検出…… 「心よりお詫び」7万個自主回収(ねとらぼ)https://t.co/dYsewW6Ecz
— LINE NEWS (@news_line_me) May 8, 2025
この投稿は538件リポストされ、多くの人がこのニュースを知るきっかけの一つとなりました。上のグラフをみても、同時刻に急激にポスト数が増大していることが確認できます。
さらに、14時59分にはライブドアニュースがスポーツニッポンアネックスの記事を掲載し、Xのライブドア公式アカウント(フォロワー数:204万)で投稿します。リポスト数は3,610件に達し、多くのユーザーがニュースを認知し始めました。
これに伴い、言及数も加速度的に増えていき、大手メディアのニュースアカウントなども取り上げるようになっていきます。
【発表】カルディ、人気商品の「生ハム」自主回収 一部からサルモネラ属菌を検出https://t.co/8RfnH8jmIg
「お客様にはご迷惑をお掛けいたしますことを心よりお詫び申し上げます」と謝罪した。対象商品は、「オリジナル 生ハム切り落とし」賞味期限が2025年5月7日~25年5月18日のもの。
— ライブドアニュース (@livedoornews) May 8, 2025
【速報】カルディの生ハムから“サルモネラ属菌” 全店で販売した商品を自主回収「オリジナル 生ハム切り落とし」対象商品は?https://t.co/YSIw5JEtbf
対象の商品は「オリジナル 生ハム切り落とし」で、賞味期限は2025年5月7日~18日のものです。— TBS NEWS DIG Powered by JNN (@tbsnewsdig) May 8, 2025
17時台にはポスト数が2,726件とピークを迎え、それ以降は減少していき、5月10日になると騒動発生前に近いポスト数(1,492件)に落ち着きます。
拡散のカギは誰の投稿?メディアアカウントの影響力を探る
その鍵はSNS上の「情報伝達者」、特にフォロワー数の多いメディアアカウントの影響力にありました。話題が拡散した契機となった代表的な上記のニュース記事3件の反応をまとめてみました。
- 5月8日12時19分:Yahoo!ニュース(公式アカウントでは投稿せず)
- 5月8日13時39分:LINE NEWS(公式アカウントの投稿に対するリポスト数 538件)
- 5月8日14時59分:ライブドアニュース(公式アカウントの投稿に対するリポスト数 3,610件)
この段階で、TBS NEWS DIGなど他の大手メディアのニュースアカウントも取り上げるようになり、情報が爆発的に拡散していったのです。
カルディの炎上が早期に終息した理由とは?
今回のカルディの事例は、SNS炎上としては比較的「軽度かつ短期」で収束した点が注目されます。
X(旧Twitter)上で話題が広がったのは主に5月8日〜9日の2日間、10日にはほぼ話題が落ち着いています。投稿件数も事案発生前の水準に回復しています。
Xにおいて炎上が継続する期間を調査した研究(福田,大曾根クチコミのソーシャルメディア別拡散特性の分析,情報システム学会誌 Vol.15, No.2)によると、3.8日としています。これと比較して、早期に収束できたといえると思います。
この早期収束を実現できた主な要因は、次の2点に集約されると考えます。
1. 好意的なブランドイメージとファンの存在
Xアカウント公式アカウントではリリースを発表した5/8に5件の投稿を行っていますが、自主回収の話は一切触れず、通常通り様々な商品の紹介投稿を行っています。寄せられたコメントにも自主回収の話題は2件のみでした。
他社の炎上時には公式アカウントに批判が集中するケースも多い中、カルディのX公式アカウントにはそうした動きはは全く見られませんでした。
今回の事案では被害を受けた顧客がいなかったことも大きいですが、日頃からブランドへの信頼や好感を寄せるファン層が、危機発生時にも冷静な対応を可能にする雰囲気を生み出しているのではないでしょうか?
2. 自発的かつ誠実な対応・リリース文の内容
カルディは、問題となった商品について「健康被害のお申し出はございませんでしたが、全ロットの販売を中止し、自主回収を行う」という、顧客の安全を最優先にした誠実な姿勢を示しました。
このような「批判される前に動く」対応が評価され、ユーザーからも「誠実な対応」として肯定的に捉えられています(実際の投稿例)。
一方で、「回収される生ハムについての詳細な情報がわかりづらい」といった声も一部にありました(実際の投稿例)。
ユーザー目線の情報を的確にリリースに反映させるためには、ソーシャルリスニングを通じてこうした声を拾い上げることが、今後ますます重要になるでしょう。
このように、ブランド力+誠実な初動対応+ユーザー視点の情報発信が、炎上リスクの軽減と早期終息に繋がるという点は、SNS運用担当者、リスク管理者にとって重要な示唆となります。
まとめ:SNSでの情報発信、気をつけたいこととは
SNS炎上は、企業のブランド価値を一瞬で揺るがすリスク要因です。迅速かつ適切に対応するためには、日頃からの備えと実践的な知識、現状を的確に把握することが不可欠です。
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今回のカルディの事例のような実例をもとに、どのような対策が求められるのかを専門家が解説します。ご興味のある方は、ぜひ以下より詳細をご確認ください。
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