ソーシャルシフト:ステップ1、プロジェクトのコアをカタチづくる

斉藤徹 | 2011/11/04

ソーシャルシフト:ステップ1、プロジェクトのコアをカタチづくる

有志で社内勉強会を組織化、スタートアップする

 

まず第一ステップは、社内有志で「勉強会チーム」を組織化することからはじめたい。顧客接点の中心となる広報宣伝、マーケティング、営業・店舗、顧客サービス、Web担当、商品企画などの部門を中心に、ソーシャルシフトの必要性を強く感じているメンバーを集う。単に勉強会を定期開催するだけではなく、継続した対話交流や情報交換ができるよう対話プラットフォームを用意したい。筆者はFacebookグループ、それも関係者以外は閲覧できない「非公開」ないし「秘密」のグループで交流することをおすすめする。

 

リアルな勉強会とソーシャルメディア上、オフラインとオンラインの対話によって、継続的に情報共有や意見交流を重ねる。企業として、ブランドとしてあるべき姿を考え、顧客接点において改善すべき点を洗い出し、自社のソーシャルシフト計画を練り上げるのだ。徐々に前向きな管理職も巻き込むカタチで、社内の同志を増やしていく。ネクストステップとなるトップ説得のため、経営トップに信頼されている経営陣ないし管理職をこのチームのアドバイザーとして就任いただくのも一案だ。

 

もう一つ重要なことは、勉強会チームで自社ブランドおよび商品ブランドに対するネット上の評判をモニターし、分析しはじめることだ。実際にソーシャルメディアで自社や競合がどのように語られているかを自分たちの目で確認すること、そしてそれに基づき問題意識を共有することは何よりの推進力となるはずだ。この段階では予算がついていないので、無料ないし低料金のツールを利用し、勉強会全員で分析するのが良いだろう。ここで得られた自社に対するクチコミや評判は、管理職の巻き込みやトップ・プレゼンテーションにおいても極めて効果的だ。全体を俯瞰した分析数値やグラフなどもあった方がベターだが、賞賛や非難もあわせた「生々しい生活者の声そのもの」がトップの心を貫くケースが多いので、加工のしすぎには注意したい。

 

Twitter系のみを対象とする場合のツール例 (多くが無償)

・Topsy 〜 Tweet検索エンジン

・Hootsuite 〜 ソーシャルメディアクライアントでキーワード収集可

・Twitraq 〜 Twitterアクセス解析など

 

ブログやクチコミサイト、掲示板も対象とする場合 (多くが有償)

・クチコミ係長 〜 ブログ分析、クチコミ分析ツール

・感度レポート 〜 ソーシャルメディア分析サービス

・見える化エンジン 〜 テキストマイニングツール

・カスタマーリングス 〜 トータルCRMツールなど

 

社内勉強会で一定の方向性がみえたタイミングで、トップ・プレゼンテーションの機会を模索する。トップ・プレゼンテーションの目的は二つだ。ひとつは「透明性の時代」を認識してもらうことだ。外部環境が大きく変わり、それにあわせて自社も大胆に変革する必要があることを理解してもらう。外部講師による客観的な講演も効果的だろう。もうひとつは勉強会チームによる「ソーシャルシフト試案」に支持をいただくことだ。これは勉強会チームがプレゼンし、質疑応答も十分に行うことが重要だ。経営層の支持がないと本格的なソーシャルシフトは困難だ。何度でも粘り強く、「生活者の生の声」を持参して説得を繰り返そう。現場の弛まぬ熱意が、やがてトップを動かすはずだ。経営トップの支持を得られたら、勉強会を発展させ「ソーシャルシフト準備室」開設の承認を得る。この準備室は、プロジェクトチームを正式に発足させるための過渡的な組織であり、主たる目的は、「ソーシャルシフト・プロジェクト」発起のための社内承認を得ることだ。典型的な企画書ストーリーをあげておきたい。

 

1. プロジェクトの目的

2. 予備調査 (ネット上の自社および他社評判の調査)

3. 自社ブランドにおける顧客接点の洗い出し

4. 自社「コーポレートプランド」「商品ブランド」に関するブランディングの現状確認

5. 現状の課題点を抽出 (あるべき姿と顧客体験のギャップを中心に)

6. 課題に対する打ち手の検討

7. ソーシャルシフト・プロジェクトの全体構想

8. 概算予算、想定する体制と会議体、スケジュール

 

準備室でこのような企画書を創り上げ、社内稟議プロセスにかける。プロジェクト体制などについては次項にて記載しているので参考にしてほしい。本社各部門においては、さまざまな抵抗や質問攻めが想定されるが、この稟議プロセスで丁寧に承認を得てゆくことが、その後のプロジェクト運営に大きく影響する。会社を進化させる使命感を共有し、メンバーが力をあわせてこの困難を乗り越えたい。

 

 

ソーシャルシフトのためのプロジェクトチームを組織化する

 

社内稟議を得た上で、本格的なソーシャルシフト推進プロジェクト(以下「ソーシャルシフト推進室」と省略)を組織化する。ここでは変革の必要性を痛感している経営幹部を責任者として位置づけてもらうのがベストだ。これ以降も経営陣には適時プロジェクトの進捗や顧客の生の声をレポートし、相互の信頼関係を維持していくことが大切だからだ。また、ソーシャルメディアは実際に体験しないと決して理解できないものだ。できればこの機会に、経営幹部にもソーシャルメディア利用を促進しておきたい。ソーシャルメディア利用法もあわせて、幹部を含む勉強会や強化合宿を行うことも効果的な施策だろう。続いてソーシャルシフト推進室のメンバーを組織化する。この組織がリードして

 

1. ブランド哲学(ミッション、ビジョン、コアバリュー)とオープンリーダーシップの明文化

2. 顧客接点の調査と改善

3. ソーシャルメディア活用の推進

4. 顧客の声を傾聴する仕組みの構築

5. 社員の幸せと顧客の感動を核とした社内文化の醸成

 

を行うことになる。社内変革の推進者として極めて重要な役割を果たすため、慎重な人選が必要だ。プロジェクト成功の可否はこの人選にかかっていると言ってもよい。勉強会メンバーを中心として、多少時間をかけてでも最適な組織構成を心がけるべきだろう。当初は兼任となるケースがほとんどだろうが、ソーシャルシフトは企業の命運をかけたプロジェクトと言っても過言ではない。次のような理想的布陣を敷くことをおすすめしたい。

 

マーケティング部門(ブランド企画能力、リサーチ能力)、CSないし営業部門(顧客接点の現状理解)、商品企画(商品企画プロセスと製品知識)、Web担当(現行Webとソーシャルメディア活用知識)、各1人をソーシャルシフト推進室の専任メンバーとする。それぞれが各部門における専門性を持ち、その上で顧客ロイヤリティに強い情熱を持つ正社員が望ましい。知識や能力不足の場合には外部コンサルタントなどで補う。グループの最終責任者としては、前述した経営幹部に就任していただくことが望ましい。もしCMO(Chief Marketing Officer)ポジションの役員がいれば最適任だ。

 

さらに、ソーシャルシフト推進室を多面的に支援する会議体「お客様の声委員会」を設置する。この「お客様の声委員会」こそ「ブランドの哲学」「リーダーシップ・スタイル」「ソーシャルメディア・ポリシー」などの策定をソーシャルシフト推進室と一体になって推進し、顧客の声に基づくフィードバック・ループを継続的に運用していく中核的な会議体となる。

 

また可能であれば、外部有識者で構成する「ブランド審議会」を監査機関として組織化したい。この審議会はブランドに精通する一流の社外メンバーで構成し、プロフェッショナルの視点からブランド価値の継続的向上を図る組織として位置づける。典型的な成功事例は「無印良品」の豊富な実績を持つ著名なクリエイターで構成されているアドバイザリーボードだ。無印良品の店頭にある商品は、すべてボードメンバーによる商品判定会をくぐり抜けたものだ。ブランドに対する信頼や愛情は、そんな頑固な一貫性から生まれてくる。ブランド審議会を発起できる場合にはブランド哲学の策定にも関与していただくべきだろう。

 

ステップ2「ブランドコンセプトを練り上げる」に続く。

 

※より詳細な内容は書籍「ソーシャルシフト―これからの企業にとって一番大切なこと」(日本経済新聞出版社)でご覧いただけます。

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10 件のフィードバック

  1. mamelabo より:

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  2. looops_naoto より:

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  3. tatsuyakitano より:

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  4. kohei_41 より:

    【ブログ】 ソーシャルシフト:ステップ1、プロジェクトのコアをカタチづくる – 有志で社内勉強会を組織化、スタートアップする まず第一ステップは、社内有志で「勉強会チーム」を組織化することからはじめたい。顧客接点の中心となる広報宣… http://t.co/qhmnlP5g

  5. izumi_hvc より:

    ソーシャルシフト:ステップ1、プロジェクトのコアをカタチづくる http://t.co/l7OntMgl via @LooopsCom

  6. tomatoh1978 より:

    うちもこの方式とってます。コツはプロジェクト毎であること。構成メンバーがまったく同一でもグループを分けること。 RT ソーシャルシフト:ステップ1、プロジェクトのコアをカタチづくる http://t.co/sFgPJgaV via @LooopsCom

  7. xmarlborox より:

    [NEWS] ソーシャルシフト:ステップ1、プロジェクトのコアをカタチづくる – 有志で社内勉強会を組織化、スタートアップする まず第一ステップは、社内有志で「勉強会チーム」を組織化することからはじめたい。顧客接点の中心となる広報… http://t.co/byIS2yMi

  8. riusek より:

    この記事読むと講演聴きにいこうかなって感じになる。RT ソーシャルシフト:ステップ1、プロジェクトのコアをカタチづくる http://t.co/BatK8buJ via @LooopsCom

  9. hivelocityinc より:

    ソーシャルシフト:ステップ1、プロジェクトのコアをカタチづくる in the looop 斉藤徹 http://t.co/PDXYML2S

  10. ryo_one より:

    ソーシャルシフト:ステップ1、プロジェクトのコアをカタチづくる in the looop 斉藤徹 http://t.co/bwHc9lSl

AUTHOR PROFILE

  • 著者:斉藤徹

株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役。

 

1985年、慶應義塾大学理工学部を卒業し、日本IBM株式会社入社。1991年2月、株式会社フレックスファームを創業。2005年7月、株式会社ループス・コミュニケーションズを創業し、ソーシャルメディアのビジネス活用に関するコンサルティング事業を幅広く展開。20年を超える起業家としての経験とビジネスに関する知見に基づき、ソーシャルシフトの提唱者として「透明な時代におけるビジネス改革」を企業に提言している。著書に『再起動 リブート』(ダイヤモンド社)『BEソーシャル 社員と顧客に愛される5つのシフト』『ソーシャルシフト これからの企業にとって一番大切なこと』(日本経済新聞出版社)、『新ソーシャルメディア完全読本』(アスキー新書)、『ソーシャルシフト 新しい顧客戦略の教科書』(共著、KADOKAWA)など多数。

 

2016年4月から学習院大学経済学部経営学科の特別客員教授に就任。「起業論」「企業経営とトップマネジメント」「企業経営とソーシャルキャピタル」「インキュベーション塾」の講義を担当する。

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