主要スタートアップのビジネスモデル類型化と、100万人突破のタイミングを分析する

斉藤徹 | 2012/01/16

主要スタートアップのビジネスモデル類型化と、100万人突破のタイミングを分析する

 

先週、この in the looop にて「ソーシャルメディアやスタートアップを中心に、海外の2012年予測記事をピックアップ」という記事を投稿した。一昔前のソーシャル系Webサービス全盛の時代から、スマートフォンにターゲットを絞ったアプリの時代へ。海外の主要ブログメディアが予測する新しいスタートアップなどの新潮流をまとめたものだ。そして「ソーシャルメディアの成否を占う、デビュー直後の瞬間風速」という記事にもあるように、以前にも増してローンチ直後のユーザー数の伸びが重要な意味を持つようになった。当記事では、2002年から始まったソーシャル系スタートアップを20ほどピックアップし、そのビジネスモデルの類型化を試みている。また世代別、ビジネスモデル別に、100万人突破のタイミングについて考察を加えてみた。

 

 

ビジネスモデルによるスタートアップの類型化

 

まずは主要なスタートアップのビジネスモデルを類型化してみたい。それぞれのサービスの収益特性により、広告収入をベースとするメディアモデル、フリーミアムによる有料課金をベースとするソリューションモデル、取引手数料をベースとするマーケットプレースモデルの3つに類型化し、あわせて主要な事例を付記してみた。

 

1. メディア・モデル (広告収入をベースとするビジネスモデル)

メディアモデルのサービスでは、ユーザーが熱中し、友人にすすめたくなるサービスを無料で提供する。そのかわりに得るものはユーザーのプライバシー(個人情報)、特にマーケッターが熱望する利用者属性だ。ここでのコンテンツはユーザー自身の投稿、つまりUGC(User-Generated Content)であることが多い。サービスがメディアとして扱われる1000万人のラインを超えれば、広告などの収入は後からついてくる。それよりも特化分野ごとでナンバーワンになることこそ最優先事項なのだ。例をあげるとFacebook、LInkedin、mixi、GREE、Flickr、Digg、YouTube、Twitter、Tumblr、Foursquare、Pinterest、LINE、Path、Oinkなどだ。いずれも強いソーシャル性を持ったサービスだ。

 

2. ソリューション・モデル (フリーミアム有料課金をベースとするビジネスモデル)

ソリューションモデルのサービスでは、いかに画期的で、時間やお金を節約できるソリューションを提供できるかが重要だ。このタイプのサービスでは、フリーで利用する90-95%の無料ユーザーと、プレミアムサービスを利用する5-10%の有料課金ユーザーで構成され、フリー利用者がサービス拡散の役目を担うフリーミアムモデルのケースがほとんどだ。規模の拡大は、サービス拡散を加速化させ、ソリューション原価を下げる効果があるため、やはりユーザー数の増加は最優先事項となる。例をあげると、Dropbox、Evernote、Spotify、Instagramなどだ。広く捉えればZyngaMobage、携帯版のGREEなどのソーシャルゲーム分野のプレーヤーもこのモデルに属すると言えるだろう。

 

3. マーケットプレース・モデル (取引手数料をベースとするビジネスモデル)

マーケットプレースモデル、つまり売り手と買い手をマッチングさせるタイプのサービスでは収益源は取引に対する手数料だ。ビジネスモデルとしては手堅いが、需要と供給のバランスを適切にとりながら拡大していくのがなかなか難しい。まず商品である買い手を一定数集め、それに十分な価格をつけるために必要な売り手をつける。どちらかだけでは商売が成立しないためだ。初期段階をうまくクリアし、先行して一定規模になれば、規模自体が大きな差別化要因となる。そのため、やはりユーザー数の拡大が収益より優先されることになる。例をあげると、古くはeBay、最近のサービスではAirbnb、Groupon、Kickstarterなどだ。いわゆるシェアサービスはこの形式を取ることが多く、特に海外では急増しているビジネスモデルだ。

 

 

各サービス、利用者数100万人までのタイミングは?

 

映画「ソーシャルネットワーク」は、Facebookのローンチから100万人到達までをストーリー化したものだ。Facebook社内で100万人達成を祝うシーンが印象的だったが、あれはサービス開始からわずか10ヶ月目のことだった。スタートアップにとっては短期的な収益よりもユーザー数の方が重要だ。しかし前述したビジネスモデルによって、黒字化に必要なユーザー数は大きく異なる。Facebookのようなメディアモデルは広告収入がメインとなるため、最低でも媒体として認知されるために1000万人程度のユーザーが必要となることが多い。一方でマーケットプレースモデルは取引手数料という堅実な収益源を持つため、ユーザー数100万人でも黒字化は十分に可能だ。シェア系サービスの収益が比較的安定しているのはそのためだ。ソリューションモデルはちょうどその中間に位置する存在と言えるだろう。

 

どのビジネスモデルにおいても、最初のハードルは100万人。多くのネット系スタートアップにとって最重要な戦略目標となる。100万人を超えれば知名度も上がる。利用者満足が高ければソーシャルメディア上でのクチコミ効果も加速しはじめる。100万人を超えてサービスが急加速した例は枚挙に暇がない。また、どれだけ短期間で100万人というレベルに到達したかも、そのサービスの成長力を占う上で重要な指標と言える。特に一定のタイミングでM&Aイグジットを狙うベンチャー起業家にとって、この成長角度が買収金額を大きく左右する重要な戦略目標であるのは当然のことだろう。

 

では、主要なスタートアップ企業はどのくらいの期間で100万人にリーチしているのか。Business Insider  “How long it took 15 Hot Startups to Get  1,000,000 Users” 記事を元に、筆者が複数ベンチャーを加筆し、創業時期でソートした上でグラブ化してみた。

 

 

この図のうち、DLとしているOink、Path、LINE、Instagramはスマートフォン用のアプリのためユーザー数ではなくダウンロード数を対象としている。また空室の貸し借りをするサービスAirbnbはユーザー数非公開のため、宿泊者数を対象とした。この図をもとに、世代を3つに分け、ビジネスモデルもあわせて、それぞれの傾向を考察してみたい。なお、スタートアップの歴史は古いため、ここでは対象としたサービスを「ソーシャル系スタートアップ」と総称している。

 

 1. ソーシャル系スタートアップ 第一世代 (2002年 – 2006年)

第一世代では、ソーシャルメディアのインフラとなるようなサービスが数多く勃興した。ビジネスモデルはほぼすべてメディアモデルであるのも大きな特徴だ。2002年に登場したSNSの元祖Friendsterを皮切りに、Linkedin、Myspace、Facebook、Flickr、YouTube、Digg、Twitterなどインフラ志向の強いサービスがしのぎを削った時代だ。特に2004年はFacebookFlickr、Digg、さらに日本でもmixiGREEが誕生した記念すべきソーシャル勃興年と言えるだろう。ちなみに100万人到達のタイミングが不明なので表内には入れていないが、Myspaceは2003年8月、YouTubeは2005年2月にローンチしている。Friendsterは招待制をとったことが話題となり、わずか3ヶ月で100万人に達した。当時のSNSはほぼ招待制で、その限定感、プレミアム感からサービスが広がっていったと言えるだろう。最強のソーシャルインフラとなったFacebookは、Friendsterをのぞけば最短で100万人に到達しており、当初から他のSNSを上回る拡散パワーがあったことが見てとれる。8サービスの100万人までの平均到達期間は約18ヶ月だ。

 

2. ソーシャル系スタートアップ 第二世代 (2007年 – 2010年)

第二世代では、第一世代のソーシャル・インフラを活用したさまざまなWebサービスが登場した時代だ。ビジネスモデル面も多様化した。メディアモデル(Tumblr、Foursquare、Pinterest)だけでなく、ソリューションモデル(Dropbox、Spotify、Evernote)、マーケットプレースモデル(Airbnb、Kickstarter)とバランスよく分散しているのが特徴だ。特にFacebookとTwitterのバイラル効果を活用したものが多いため、8サービスの100万人までの平均到達期間は16ヶ月とやや第一世代を上回っている。モデル別に見ると、メディアモデルが19ヶ月、ソリューションモデルが9ヶ月、マーケットプレースモデルが30ヶ月となった。ソリューションモデルは、その機能がフリーミアムモデルで提供されるという格安感、FacebookやTwitterとの強力な連携が、短期間でユーザーを獲得する要因となっている。DropboxSpotifyと比較してEvernoteが15ヶ月と遅いのは、ローンチ後11ヶ月目までソーシャルメディアと連携をしていなかったためだろう。その点Dropboxは、友人を紹介するとストレージ容量が増える、複数人で共有できるなど、友人に紹介するきっかけを演出しており、当初からソーシャル活用に長けていた。またマーケットプレースモデルは需要と供給のバランスをとりながら成長する必要があるため、100万人到達タイミングが他のモデルと比較してかなり遅れる傾向がある。

 

3. ソーシャル系スタートアップ 第三世代 (2010年 – )

第一、第二世代がPCベースのWebサービスをコアとしているのに対して、第三世代はスマートフォンベースのアプリをメインとしている点が大きく異なっている。PCを切り捨ててスマートフォンやタブレットにフォーカスするかわりに、使い勝手や機能をシンプルに絞り込み、 Frictionless Sharing (手間のかからないシェア機能) を追求するのが特徴だ。Webからアプリにベースが変わったことで、100万人までの平均到達期間も1.7ヶ月と大幅に短縮された。第一世代、第二世代と比較すると、なんと1/10程度で達成していることになる。アプリはすでに競争過多に見えるが、実はWebサイトと比較すると遥かに少ない。また アプリストアによるランキングやリコメンデーションにより、注目アプリに人気が集中する傾向が強く、話題になってしまえば100万人達成はさほど困難なハードルではなくなった。ただし開発が比較的容易なため、ヒット分野には後発の競合が続々参入してくる傾向があり、いかに継続利用してもらうかが大きな課題となっている。最短期間は装い新たに登場したPathの新バージョンで、なんとローンチ2週間という短期間で100万ダウンロードを実現した。

 

なお、すでに大ブランドとなっている企業によるソーシャル系サービスは、既存ユーザーやブランドがあるためにスタートアップよりさらに短期間でユーザー獲得を実現することがある。最も顕著な事例がGoogle+で、ローンチ6日間で100万人、二週間で1000万人を超えたと推測されている。

 

最後にKevin Rose氏による「いかにゼロから100万人のユーザーを獲得するか」という講演ビデオ(2009/10)を紹介しておこう。彼はDigg創業者でもあり、第二創業したMilkが開発したアプリOinkではわずか3週間で100万ダウンロードを実現(グラフ内を参考のこと)している。Oinkについては「ソーシャルメディアやスタートアップを中心に、海外の2012年予測記事をピックアップ」を参考にしてほしい。

 

Taking your Site from One to One Million Users by Kevin Rose from Carsonified on Vimeo.

 

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ソーシャルグラフの進化と新興サービスがとるべき戦略

 

 

記事執筆)  斉藤  徹 https://www.facebook.com/toru.saito

COMMENT

29 件のフィードバック

  1. invent より:

    これはいいまとめ。

  2. takataakira より:

    Path、すごいな。 : 主要スタートアップのビジネスモデル類型化と、100万人突破のタイミングを分析する

  3. hagi0626 より:

    必読

  4. libero18 より:

    ソーシャル系スタートアップのビジネスモデル類型化まとめ

  5. inurota より:

    良い俯瞰。

  6. tofu-kun より:

    加速してるなー

  7. mobilesensor より:

    ということは、今空いているところもなんとなく分かりそう。 RT @hkunimitsu: 主要スタートアップのビジネスモデル類型化と、100万人突破のタイミングを分析する in the looop 斉藤徹

  8. matsuzawan より:

    ビジネスモデル比較

  9. muratotti より:

    あとでじっくりみとこ。

  10. shuitic より:

    なるほど…

  11. tageo より:

    主要スタートアップのビジネスモデル類型化と、100万人突破のタイミングを分析する

  12. K569 より:

    後で

  13. rindai87 より:

    ビジネスモデル、これ以外ないのかなぁ

  14. luccafort より:

     あとで読む

  15. toshi19650104 より:

    主要スタートアップのビジネスモデル類型化と、100万人突破のタイミングを分析する in the looop 斉藤徹

  16. yasu6sakon より:

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  17. nanigashi03 より:

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  18. hide4891 より:

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  19. deg84 より:

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  20. yuto_koide より:

    世界で勝つなら30ヶ月以内に100万人。あとユーザー少なくてもツール系ならソリューション・モデルで…と思ったが、うちはクローズドでもいいから密度は欲しいな。|主要スタートアップのビジネスモデル類型化と、100万人突破のタイミングを分析する http://t.co/haGYVHqK

  21. taikiasari より:

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  22. taku21xx より:

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  23. osabecchi より:

    これだよ!探してた記事!!→主要スタートアップのビジネスモデル類型化と、100万人突破のタイミングを分析する [ITL] http://t.co/imxkMsd2 @LooopsComさんから

  24. mako_yukinari より:

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  25. ti197502 より:

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  26. naoroom1986 より:

    時系列でまとめてあってわかりやすい。第1世代がPC中心のソーシャルインフラを作り、第2世代がそのインフラを活用した拡散の仕組みでユーザー数を拡大していき、第3世代でスマホタブレットでシンプルに、と

  27. sm029 より:

    主要スタートアップのビジネスモデル類型化と、100万人突破のタイミングを分析する [ITL] 先週、この in the looop にて「ソーシャルメディアやスタートアップを中心に、海外の2012年予測記事をピックアップ」という記事を投

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  • 著者:斉藤徹

株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役。

 

1985年、慶應義塾大学理工学部を卒業し、日本IBM株式会社入社。1991年2月、株式会社フレックスファームを創業。2005年7月、株式会社ループス・コミュニケーションズを創業し、ソーシャルメディアのビジネス活用に関するコンサルティング事業を幅広く展開。20年を超える起業家としての経験とビジネスに関する知見に基づき、ソーシャルシフトの提唱者として「透明な時代におけるビジネス改革」を企業に提言している。著書に『再起動 リブート』(ダイヤモンド社)『BEソーシャル 社員と顧客に愛される5つのシフト』『ソーシャルシフト これからの企業にとって一番大切なこと』(日本経済新聞出版社)、『新ソーシャルメディア完全読本』(アスキー新書)、『ソーシャルシフト 新しい顧客戦略の教科書』(共著、KADOKAWA)など多数。

 

2016年4月から学習院大学経済学部経営学科の特別客員教授に就任。「起業論」「企業経営とトップマネジメント」「企業経営とソーシャルキャピタル」「インキュベーション塾」の講義を担当する。

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