【2012年5月】直近決算発表に基づくmixi、GREE、Mobage、Amebaの業績比較

斉藤徹 | 2012/05/19

 
国内4大ソーシャルアプリ・プラットフォーム、mixi、GREE、Mobage、Amebaを運営する4社の2012年1-3月期決算が出揃った。コンプガチャ問題で大きくゆれるソーシャルゲーム業界だが、その経緯もあわせ、客観的な視点で各社の財務状況をレポートしたい。この記事は,各社が投資家向けに公表している最新の決算報告と広告代理店・クライアント向けに発行している媒体資料を主要な情報ソースとし、必要に応じてネットレイティングス社「Neilsen/NetRatings NetView」およびビデオリサーチインタラクティブ社「Mobile Media Measurement」による視聴データ調査、さらに三菱UFJモルガン・スタンレー証券リサーチ資料「ソーシャルゲームの正体を探る」を参考にしている。それらのデータに基づき、できる限り公平な視点で、各社の業績やサービスを比較することを心がけている。

 

   
■ 各社の最新四半期(2012年1-3月期)、全社業績比較について

 

まず、各社の最新四半期決算資料に基づき、企業としての財務分析からはじめたい。

 

 

 【2012年1-3月期 全社売上および利益の比較チャート】

 

まず全社ベースにおける財務比較をしてみたい。この中で「前期比」とは2011年10-12月期との比較、また「利益率」は営業利益率を示している。ここ最近、際立だった急成長を示していたGREEだが、対前期比で売上111%、営業利益110%とやや鈍化し、逆に苦戦を続けていたDeNAは売上124%、営業利益119%と成長性でライバルを上回った。mixiとCyber Agentも、それぞれ対前期比で見て堅実な成長を示す結果となった。

 

なお、DeNA(ビッターズ事業など)、mixi(Find Job事業など)、Cyber Agent(広告代理事業など)の三社には、SNS以外の事業も行っている。それらを除き、SNS関連事業だけを抽出して、課金売上と広告売上に分解して比較すると次のようになる。


【2012年1-3月期 SNS事業売上の比較チャート】
 

規模が異なるため、さほど注目されていないが、大きく収益構造を変換しつつあるのがmixiだ。フィーチャーフォン減衰のため広告売上は落ちているが、mixiゲームの効果により課金売上を前期比155%と伸ばす結果となった。これによりmixiの課金売上比率は前四半期の34%から48%と急増している。Mobageは課金売上を128%と急成長させた一方で、広告売上は前期比を下回る結果となり、課金売上比率が97%にまで高まった。なお、ソーシャルゲーム業界は、GREEとMobageを中心に、ここ三年間半で際立った急成長を見せている。その売上成長を時系列で俯瞰したのが次のグラフだ。

 
 

【2008年7-9月期 〜 2012年1-3月期までのSNS関連売上の時系列推移】 

 

なお、この記事内で1Qとは1-3月期、4Qとは10-12月期をあらわしている。2009-2010年にかけてのSNSアプリ・オープン化をターニングポイントとし、MobageとGREEの二社は一気に成長を加速する。特にMobageは大ヒット内製ゲーム「怪盗ロワイヤル」を旗頭に快進撃を続け、2010年10-12期には売上・利益ともGREEに2倍近くの差をつけて独走していた。それから1年、GREEはオープン化とカードバトル型ソーシャルゲームの大量投下によって驚異の急成長をとげ、ついに前四半期にMobageを捉え、逆転へと至った。大きく差を開けられたカタチになっていたMobageだが、今四半期に再び再成長の軌道を描き始めた。

 

特に、2011年以降、GREEの売上急成長を牽引したのは、従来型ゲームと比較してARPPU(Average Revenue Per Payed Users、課金ユーザー1人あたりの月売上高)が非常に高い「探検ドリランド」に代表されるカードバトル型ソーシャルゲームとテレビCMの大量投下だった。このカードバトル型ゲームの多くは、社会問題となっているコンプガチャ機能を含んでいる。(参考までGREEとMobageの最新ゲームランキング20を見ると、GREEはすべてに、Mobageも約6割のゲームにガチャ機能が内包されており、その多くはコンプガチャ機能を含んでいる)

 

コンプガチャ機能については、消費者庁が景表法違反と正式な見解を発表しており、7月1日以降は罰則対象となることが明らかになった。ソーシャルゲーム業界においては5月末までに「コンプガチャ」機能を廃止すると宣言しており、コナミ社のようにすでに独自に廃止した企業も出始めた。GREEやMobageの売上にどの程度の影響がでるか予測は困難だが、5月18日にアップデートされた三菱UFJモルガン・スタンレー証券「ソーシャルゲームの正体を探るⅥ」に記載されている「コンプガチャ全面停止における業績への影響に関する考察」を転載したい。

 

「コンプガチャは全面停止も、ガチャは現状のまま」が業界としての考え方だろう

 

コンプガチャが景品表示法に抵触との消費者庁の見方(5 月8 日、日経報道)

ディー・エヌ・エー、グリー、ミクシィの2012 年1~3 月期決算発表の数日前である2012 年5 月6 日に、日本経済新聞は「アイテムを購入して揃えると別の希少なアイテムを獲得できるコンプガチャについて、消費者庁が5日までに、景品表示法に抵触する可能性があるとして近く業界に周知する方針を固めた』と報じた。消費者庁は「詳細は検討中だが、コンプガチャは景品表示法に抵触しているとの見解を示す方向で準備している」とコメントしている(日本経済新聞2012 年5 月8 日付)ガチャは「取引」であるが、コンプガチャはガチャという「取引」に付随して発生するレアカードが「景品」として当たる「懸賞」とみなされる。そして、景品表示法は、「二以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用いた懸賞(ここでは、コンプガチャ)による景品類(ここでは、レアカード)の提供はしてはならない」としている。因みに、ガチャは「取引」であり、景品表示法には抵触しないという見方である。

 

それを受け、ソーシャルゲーム業界はコンプガチャの全面停止を発表(5 月9 日)

この動きに対して、ソーシャルゲーム業界はプラットフォーム事業者6 社(=NHN Japan、グリー、サイバーエージェント、ディー・エヌ・エー、ドワンゴ、ミクシィ)が2012 年5 月9 日、各社で開発、運営しているソーシャルゲームなどのサービスにおける全てのコンプガチャに関し、新規にリリースするゲームについて中止する方針を決定、各社で現在運営中のソーシャルゲームのコンプガチャも、2012 年5 月31 日までに終了、以降は新たなコンプガチャを行わないことを決定した。尚、プラットフォーム事業者6 社が取り扱うゲームに関し、ガイドラインを作成し、早急に公開する予定であることも発表した。コンプガチャは射幸性(=偶然の成功や利益を狙う度合い、ギャンブル性)が強いため、ARPPU(Average Revenue Per Paid User)の水準を押し上げているとMUMSS(三菱UFJモルガン・スタンレー証券)は考えている。今後は、「重課金者を作らないゲーム設計」が注目され、より多くのユーザーが安心して楽しめるソーシャルゲームが提供されるようになるとみている。

 

コンプガチャを全面停止しても、増収可能を示唆しているミクシィの会社予想

コンプガチャ全面停止による収益インパクトについて、プラットフォーム事業者6社より先にコンプガチャ全面停止を発表したKLab は、コンプガチャを全て廃止すると売上が15%程度は下がるが、ソーシャル性やイベントなど本来のゲーム性の強化で、売上の下落は5%以下に収まると説明している。ディー・エヌ・エーも、2012 年4~6 月期は5 月中旬以降の1 カ月半、2012 年7~9月期は四半期フルに影響を受けるが、新たなゲームシステム導入等の施策を継続的に打ち出す効果によって、2012 年10~12 月期以降は、モバコインの消費高が上向きになっていくとみている。また、ミクシィは2013 年3 月期の売上高について、コンプガチャ全面停止を勘案、145 億円~155 億円のレンジと公表。下限値145 億円の場合、内訳として、課金売上高は85 億円の模様。よって、四半期平均で約21 億円。2012 年1~3 月期の課金売上高は17.0 億円(内、mixi アプリ売上高は15 億円と推定)であるため、コンプガチャを全面停止しても、2012 年1~3 月期の水準からの増収は可能という想定であろう。

 

業界は、RMT を排除し、未成年も保護するが、ガチャの規制はしないだろう

MUMSS が2012 年3 月9 日付Industry Update で「ソーシャルゲーム≒パチンコ」という見方を提示して以降、ソーシャルゲーム業界はRMT(リアルマネートレーディング)を徹底的に排除すること、及び、未成年(あるいは青少年)を保護することを明確に打ち出してきた(図表7)。例えば、未成年(あるいは青少年)保護について、「ソーシャルゲームプラットフォーム連絡協議会」の中で、少年(18 歳未満)ユーザーの利用限度額を月額1 万円以下と設定(2012 年4 月23 日リリース)。個別対応では、グリーが4 月26 日から15 歳以下のユーザーは月額5,000 円まで、16~19 歳のユーザーには月額1 万円までとし、ディー・エヌ・エーは6 月を目途に、15 歳以下のユーザーは月額5,000 円、18歳未満のユーザーは月額1 万円までとした。他方、ソーシャルゲーム業界は(コンプガチャではなく、)ガチャへの自主規制は考えていないと思われる。RMT を排除してアイテムを換金出来ないようにし、且つ、未成年(あるいは青少年)を保護すれば、ガチャにおけるレアカード出現確率などは“大人が判断すべきもの”という考え方であるのかもしれない。但し、RMT をゼロにするには、利害関係者も巻き込んで、相当の取組み(≒覚悟)が求められるだろう。

 

ソーシャルゲームにおける自主規制の動向 〜 3月9日以降

 

 

 

■ 各サービスのARPU比較について

 

続いて,ARPU(Average Revenue Per Users、会員ひとりあたりの月売上高)を比較をしてみたい。次のグラフは、それぞれの売上高を各社が発表している国内の登録会員数で割ったものだ。参考まで、最新の各社登録会員数(国内のみ)は、mixi 2711万人、GREE 3019万人、Mobage 39980万人、Ameba 2202万人。Mobageが突出しているのは Yahooモバゲーの会員数を含むためだ。すでに各社とも海外における売上も発生しはじめ、アクティブ会員比率もサービスによって異なるため、このARPUはあくまで参考値として捉えていただきたい。

 


【2012年4-6月期 〜 2012年1-3月期 ARPUの時系列比較】
 

ここ一年間のGREEのARPU向上が目立つが、これは前述したカードバトル型ソーシャルゲームによるものだ。今後は「重課金者」をつくらず、持続可能なソーシャルゲームを提供することが各社の大きな課題となるだろう。例えば、モブキャスト社が提供しているプロ野球シミュレーションゲーム「モバプロ」にはコンプガチャはなく、かつ「選手」の力にピークがあるため RMT(リアルマネートレーディング)へのインセンティブも少ない。このような過度な課金や換金性を刺激しないゲーム設計が大切になるだろう。

 

なお、前回レポートでも紹介したが、東京ゲームショー2011来場者における調査報告書が参考になるので掲示しておきたい。Mobageの課金利用者率は31%でARPPU(課金ユーザーあたりの月課金額)は7505円、GREEの課金利用者率は29%でARPPUは9998円、mixiの課金利用者率は17.8%でARPPUは5653円、Facebookの課金利用者率は16.7%でARPPUは4900円となっている。ヘビーユーザーを対象としたアンケートのため課金利用者比率が高めになっている点などには注意したいが、男性の20代後半から40代にかけての層、また女性の20代後半の層が、比較的高額な課金ユーザーとなっていると推定できるだろう。
 

【東京ゲームショー2011 来場者調査 報告書より、ソーシャルゲームの課金プレイ状況】

 

さらに詳細な情報は「東京ゲームショー2011 来場者調査 報告書」をどうぞ。

 

 

■ 各サービスのスマートフォン対応と海外展開について

 

各社とも積極的にスマートフォン対応をすすめている。4社のうち、機種別ページビューを公開しているmixiおよびAmebaの最新状況は以下のとおりだ。ページビュー比率ではmixiで13%、Amebaで16%程度だが、mixiにおいてはスマートフォンがPCのページビューを超え、mixiユーザーの47%はスマートフォンから利用している。またAmebaにおいてはアクティブユーザーでスマートフォン255万人と、フィーチャーフォンの221万人を超えることとなった。さらにこの6月、Cyber AgentはスマートフォンAmebaをコミュニティプラットフォームとして改訂し、アプリAPIもオープン化すると発表した。ゲームメーカーも11社が参入を予定しており、さらなるアクセス拡大が見込まれる。いよいよ日本においても本格的なスマートフォン時代が到来したことを予感させる四半期となった。

 


 【2012年3月 機種別ページビュー比較】

 

 最後に海外展開の状況だが、各社とも投資段階にあるため、先行きを予測することは困難だ。ただしここに来て海外におけるヒットゲームが登場してきた。Cyber Agent の連結子会社 Cygames が開発し、Mobageプラットフォーム上で稼働する「神撃の バハムート」英語版が、4 月22 日にGoogle Play 売上ランキングで米国 1 位を獲得した。英語版は日本語版に比べて 課金率やARPPU は同程度で、売上高は5 分の1 である模様だ。またGREEは5 月2 日に、海外ゲームベンダーであるFunzioの買収を発表した。彼らはスマートフォン向けゲームにおいて「Modern War」「Crime City」「Kingdom Age」等のヒット作門を持っており、2012 年4 月の売上高は5 百万ドル超とのこと。成熟に向かいつつある日本市場に対して、海外市場は市場のポテンシャル、成長性とも高いため、海外投資が成功していくようであれば、各社はまた新たな成長路線を描けるだろう。以下は「ソーシャルゲームの正体を探る Ⅳ」で試算された国内ソーシャルゲーム市場規模の予測だ。

 

この予測によると、国内ソーシャルゲーム成長の急成長は2012年いっぱいで、それ以降は課金利用者の増加にともなう穏やかな伸びに転じると見込んでいる。現時点では投資段階である各社の海外展開だが、今年中にどの程度の広がりを描けるかに、投資家筋の注目が集まっている。

 

 

記事執筆)  斉藤  徹 https://www.facebook.com/toru.saito

COMMENT

21 件のフィードバック

  1. hagi0626 より:

    この数字が、コンプガチャ規制後の推移の比較対象になるんだろうな。メモ。

  2. shintokeimail より:

    GREEのARPUの伸ばしっぷりは鬼気迫るものがあるな

  3. akuwano より:

    ほぅほぅ

  4. shina0417 より:

    バハムート!

  5. yuyamazaki より:

    参考になる。

  6. prototechno より:

    なんつう額や…

  7. F-PLUS より:

    【2012年5月】直近決算発表に基づくmixi、GREE、Mobage、Amebaの業績比較 in the looop 斉藤徹

  8. tachiage より:

    【2012年5月】直近決算発表に基づくmixi、GREE、Mobage、Amebaの業績比較

  9. s08626th より:

    まぁまだソーシャルゲーム稼ぐよな / 【2012年5月】直近決算発表に基づくmixi、GREE、Mobage、Amebaの業績比較 in the looop 斉藤徹

  10. yusuke_nak より:

    【2012年5月】直近決算発表に基づくmixi、GREE、Mobage、Amebaの業績比較 in the looop 斉藤徹 http://t.co/sfYq6RDs

  11. hanakonoguchi より:

    【2012年5月】直近決算発表に基づくmixi、GREE、Mobage、Amebaの業績比較 http://t.co/0u0e26hM @LooopsComさんから

  12. mtakuto より:

    @hitoshitakamatu 株価については良く分からない。個人的にSGがやりたくて入社した訳では全くないからあまり気にしてないかも。うちはサイバーエージェントより営業利益3倍以上あるから倒産する可能性をファクトで見ると非常に低い。
    http://t.co/59eoKO16

  13. atakap より:

    ソーシャルゲームの課金プレイ率もまとまってる=>【2012年5月】直近決算発表に基づくmixi、GREE、Mobage、Amebaの業績比較 http://t.co/v08nicEl @LooopsComさんから

  14. readymade0819 より:

    【2012年5月】直近決算発表に基づくmixi、GREE、Mobage、Amebaの業績比較 [ITL] http://t.co/oQ7xHeOo #ITL グラフに若干の悪意を感じてしまうがwちゃんと数字を追うとmixiも頑張ってるなぁ

  15. jude_obscure_ より:

    @nakamura_shan こんな記事があった、概ね推測通り
    http://t.co/15AwlBJr

  16. yoneko より:

    参考資料を色々漁っている。ソシャゲ界隈売上 http://t.co/Tcp9JlWn

  17. basepins より:

    スマホ、ソーシャルゲームの業績比較

  18. chigusayouki より:

    【2012年5月】直近決算発表に基づくmixi、GREE、Mobage、Amebaの業績比較 [ITL] http://t.co/eWeen34n #ITL @LooopsComさんから

  19. beisaku123 より:

    【2012年5月】直近決算発表に基づくmixi、GREE、Mobage、Amebaの業績比較 [ITL] http://t.co/TvoL8YW5 #ITL @LooopsComさんから 特にAmebaは経営不振+利用者からの信用不信でダメーバと云われている所以だ

  20. kohnosuke より:

    【2012年5月】直近決算発表に基づくmixi、GREE、Mobage、Amebaの業績比較 [ITL] http://t.co/h7EuBVgT #ITL @LooopsComさんから

AUTHOR PROFILE

  • 著者:斉藤徹

株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役。

 

1985年、慶應義塾大学理工学部を卒業し、日本IBM株式会社入社。1991年2月、株式会社フレックスファームを創業。2005年7月、株式会社ループス・コミュニケーションズを創業し、ソーシャルメディアのビジネス活用に関するコンサルティング事業を幅広く展開。20年を超える起業家としての経験とビジネスに関する知見に基づき、ソーシャルシフトの提唱者として「透明な時代におけるビジネス改革」を企業に提言している。著書に『再起動 リブート』(ダイヤモンド社)『BEソーシャル 社員と顧客に愛される5つのシフト』『ソーシャルシフト これからの企業にとって一番大切なこと』(日本経済新聞出版社)、『新ソーシャルメディア完全読本』(アスキー新書)、『ソーシャルシフト 新しい顧客戦略の教科書』(共著、KADOKAWA)など多数。

 

2016年4月から学習院大学経済学部経営学科の特別客員教授に就任。「起業論」「企業経営とトップマネジメント」「企業経営とソーシャルキャピタル」「インキュベーション塾」の講義を担当する。

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