リアル小売業の大命題、スマホをいかに追い風にするか?

斉藤徹 | 2014/03/03

iPhone登場以来、生活者がインターネットにアクセスする時間は大幅に伸び、端末の勢力図が塗変わった。主役はPCではなくスマートフォンとタブレットだ。訪問時間で見ると2013年は2010年の約2倍となった。増えた分は、まるごとスマートフォンとタブレットからのアクセスだ。

 

PCインターネットはeコマース事業者を産みだしたが、モバイルインターネットはネットとリアルの境目を取りさらった。目の前にある商品の評判はどうか、もっと安いお店はないか、利用できるクーポンはないか、スマホは買い物のプロフェッショナル・アドバイザーとなり、リアル小売業は破壊的なイノベーションにさらされている。

 

2014年1月に発表された最新米国コムスコア調査で、この様子を客観的に俯瞰してみよう。

 

これは米国トップ小売業のサイト訪問者をあらわしたもので、グリーンは「モバイルのみ」でアクセスするユーザーを示している。この「モバイルのみ」利用者の比率を抽出すると次のようになる。
 
興味深いのは、ターゲット(総合スーパー)、QVC(テレビショッピング)、ベストバイ(家電量販店)、ウォルマート(総合スーパー)などリアル小売業の方が、ネットフリックス、イーベイ、アマゾンといったネット専業小売業よりもモバイル比率が高い点だ。生活者は商品を目の前にして、スマホで店舗サイトにアクセスしているのだ。
 
では、生活者は店頭でスマホを何に利用しているのだろうか。やはり2013年のコムスコア米国調査で、店頭でのスマホ行動を男女別に見てみよう。参照元は Millennial Media の Mobile Mix Reports 2013 だ。
 
 このグラフを見るとすでに多くの生活者がスマホを使って多様な行動をしていることがわかる。性別比で見ると、男性はバーコード読み取り、製品機能や効用の確認、価格の比較、さらにはネットでの購入など、機能的に情報を活用する傾向があるのに対して、女性は写真の撮影や送信、友人との会話など交流をする傾向が強いのが特徴だ。
 
さらに店頭での購買決定要因に関しても見てみよう。

 

この図では、価格、クーポン、店舗特典といった「価格要因」をブルーで、レビューや推薦、ソーシャルサイトなどの「ソーシャル要因」をイエローで色分けしている。価格が最も重要な要因となっているのは当然だが、それに準ずるカタチでさまざまなソーシャル要因が購買決定に影響しているのが見て取れるだろう。

 

このような消費行動の変化の中で、リアル店舗を持つ小売業はどう対応すれば良いのだろうか。

 

アサツーDKの国内調査レポート「スマートフォンと購買行動」(2013/5、概要はリンク先を参照) にそのヒントがあるので紹介したい。この調査では、興味深い発見として、①商品ジャンルによっては店頭検索がお店での購買促進につながっていること、②家電製品などでも価格を調べてすぐネットで購買するのではなく、むしろ店員との価格交渉の材料として利用している ことが明らかになった。それを商品ジャンル別にまとめたものが次の図だ。

 

店頭での検索行動は、商品ジャンル別に検索する内容、検索先、検索後の行動が異なっている。PCや家電、ファッション、アクセサリーでは価格が重視されている。興味深いのは、値引き可能な店舗が多いPCや家電では、検索結果を店員との交渉材料に使っていることだ。それに対して、化粧品や日用品、衣料品、食品などでは商品の評判がチェックされ、安心することが店頭での購買に結びついていることがわかった。また飲食店では、入店前にクーポンの有無をチェックする利用者像が浮き彫りになった。

 

近年、店舗をあたかもショールームのように訪問し、実際にはネットで購入する「ショールーミング」という購買行動が増えており、リアル小売業を悩ませている。特に大手ネット専業者は、商品のバーコードを読み取ると自動的にネット価格と比較できるスマホアプリを提供しており、店頭でのスマホ利用がさらに加速することは間違いないだろう。

 

しかし、低価格サイトを発見したとしても、生活者は直ちにネットで購入行動をとるわけではない。わざわざ店頭に出向いた手間を考えると、彼らは納得できる取引ができれば店頭で購入するのだ。それは「他店が安く販売していた場合には店員にお知らせください」といった常套手段の応用形とも言える。

 

また、コマースサイトもさることながら、生活者は訪問した店舗のスマホサイトを訪れることが多いこともわかった。そこで彼らが望む安心やお得感を演出できれば、購買行動を後押しすることが可能となる。

 

リアルとネットのボーダーレスな競合は激化の一途をたどっている。生活者の購買心理を知り、かれらが求める行動や情報を提供できるか。スマホ時代のリアル小売業にとって、これは極めて大切な命題になってゆくはずだ。

 

 

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1 件のフィードバック

  1. mpresso より:

    スマホによる消費行動の変化

AUTHOR PROFILE

  • 著者:斉藤徹

株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役。

 

1985年、慶應義塾大学理工学部を卒業し、日本IBM株式会社入社。1991年2月、株式会社フレックスファームを創業。2005年7月、株式会社ループス・コミュニケーションズを創業し、ソーシャルメディアのビジネス活用に関するコンサルティング事業を幅広く展開。20年を超える起業家としての経験とビジネスに関する知見に基づき、ソーシャルシフトの提唱者として「透明な時代におけるビジネス改革」を企業に提言している。著書に『再起動 リブート』(ダイヤモンド社)『BEソーシャル 社員と顧客に愛される5つのシフト』『ソーシャルシフト これからの企業にとって一番大切なこと』(日本経済新聞出版社)、『新ソーシャルメディア完全読本』(アスキー新書)、『ソーシャルシフト 新しい顧客戦略の教科書』(共著、KADOKAWA)など多数。

 

2016年4月から学習院大学経済学部経営学科の特別客員教授に就任。「起業論」「企業経営とトップマネジメント」「企業経営とソーシャルキャピタル」「インキュベーション塾」の講義を担当する。

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