今回のテーマは「他者との相互理解を深める対話の技術」です。ビジネスにおいても、他者と円滑にコミュニケーションを取るためには、相手を深く理解し合う姿勢が不可欠です。今回は特に「対話」によるコミュニケーションに焦点を当て、共感と理解を基にした関係構築の重要性を学びます。
議論と対話、ふたつのコミュニケーション
コミュニケーションには「ダイアローグ(対話)」と「ディスカッション(議論)」という2つの手法があり、それぞれ異なる目的と役割を持っています。この違いを理解し使い分けることが、効果的なコミュニケーションの鍵となるとのことです。
ディスカッション(議論)
ディスカッションは、意見の正当性を話しあい、一つの最適な解を見つけることを目的としています。ここでは、知識や経験が豊富で権限のある人の発言が重視され、優れた意見を選び出して結論を導くことが重要です。選択肢が明確で、判断が求められる場面で活用され、主張や説得を通じて仮説を立証し、合意に至るプロセスです。ディスカッションでは、競争的な要素が強く、意見をぶつけ合うことが多いため、時に対立や緊張が生じることもありますが、迅速な判断が求められるシーンにおいては有効です。
ダイアローグ(対話)
一方、ダイアローグは意見の妥当性を話し合うのではなく、お互いの意味や体験を共有し合うことを目的としています。参加者は対等な立場で、お互いの考えや感情に共感しながら話し合うため、複雑な問題や答えが見えにくい状況で有効です。ダイアローグのプロセスでは、各自の仮説を表面化し、判断を保留しながら探求を続けることで、対立ではなく発見を促します。このような「対話」では、意見の背景や深層にある価値観を共有するため、相互理解が深まり、複雑な問題へのクリエイティブな解決策が生まれやすくなります。
使い分けの重要性
ディスカッションが迅速な意思決定や最適解の追求に向いている一方で、ダイアローグはメンバー間の相互理解を深め、関係性を築くために有効です。ディスカッションのみでは、意見の衝突が強調されがちですが、ダイアローグを組み合わせることで、お互いの立場や思いを尊重し合う風土が生まれやすいとのことです。これにより、チーム全体の関係性が強化され、円滑な協働が可能になります。
このように、ディスカッションとダイアローグを状況に応じて使い分けることが、豊かなコミュニケーションを実現するポイントとのことです。
対話によって、他者と相互に理解しあおう
他者と深く理解し合うためには、次の3つのステップが効果的です。
ステップ1: ウチをソトに(話す技術)
まず、自分の考えや気持ちを相手に伝える際には、相手を変えようとするのではなく、自分の思いや感情を正直に伝えることが大切です。これは「わたしメッセージ」を使うことに似ており、自分の内面を率直に表現することで、相手に受け入れやすく、自然な形で理解を促します。
ステップ2: ソトをウチに(聴く技術)
次に、相手の話を聴くときには、相手の目線に立って、相手が世界をどう見ているのかを想像しながら耳を傾けます。共感をもって聴く姿勢が、相手に「自分は理解されている」と感じさせ、深い信頼関係を築くことにつながります。このステップでは、ただ聞くだけでなく、相手の感情や意図を受け止めることが重要とのことです。
ステップ3: 閃きを生む(問う技術)
最後に、創造的な問いかけを通して、相手の本音や新しいアイデアを引き出します。このステップでは、「なぜ」ではなく「何を」「どうすれば」といった質問を活用し、相手が自らの内面に気づき、建設的な対話が生まれるきっかけを作ります。
この3つのステップにより、他者と相互に理解し合い、信頼を深めるコミュニケーションが可能になるとのことです。
1st Step ウチをソトに(話す技術)
他者とコミュニケーションを取る際には、「あなたメッセージ」と「わたしメッセージ」の使い分けが重要です。
あなたメッセージ
「あなたメッセージ」は、相手を主語にして相手の行動や考え方に対して意見を述べる伝え方です。たとえば、「あなたはいつも報告が遅い」といったメッセージは、相手に「責められている」という印象を与え、防御的な反応を引き起こしやすくなります。相手が心を閉ざし、結果的に伝えたい内容が届かなくなってしまうことが多いとのことです。
わたしメッセージ
一方で、「わたしメッセージ」は、自分の感情や考えを率直に伝えるための方法です。たとえば、「報告が遅れると、状況が見えなくて不安になる」といった形で、相手の行動が自分に与える影響を伝えます。この方法は相手に防御反応を起こさせにくく、より素直に受け止めてもらいやすいという利点があるとのことです。
わたしメッセージの重要性
「わたしメッセージ」を使うことにより、相手に「変わってほしい」と強要せず、自分の気持ちや考えを自然な形で伝えられます。これにより、対立を避けつつ、相互理解を深めることができ、建設的なコミュニケーションが生まれやすくなります。
このように、「わたしメッセージ」を使うことは、他者と良好な関係を築くための効果的な手段。
2nd Step ソトをウチに(聴く技術)
相手との相互理解を深めるためには、話の「聞き方」にも段階があります。この段階を理解し、相手の立場で耳を傾けることで、信頼関係を築く効果的なコミュニケーションが可能になります。
傾聴の5つのレベル
話を聞くレベルには5段階があります。第一段階は「無視する」ことで、相手の話にまったく意識が向いていない状態です。第二段階は「聞くフリをする」ことです。うなずきや相槌は打つものの、実際には内容を理解していません。第三段階は「選択的に聞く」ことで、相手の話の一部だけに注意を向け、部分的にしか聞いていない状態です。次の第四段階は「注意して聞く」ことで、相手の問題を理解しようと努めるレベルです。
共感的な傾聴(第五段階)
最後の第五段階は「共感による傾聴」で、これは相手の視点に立ってその気持ちや考えを理解しようとする最高レベルの聞き方です。共感的な傾聴では、相手の目線で世界をどう見ているのかを想像しながら話を聞き、感情に寄り添う姿勢が大切です。この段階に達すると、相手は「自分が理解されている」と感じ、信頼感が増し、より深い本音を引き出すことができます。
傾聴がもたらす効果
共感をもって話を聞くことは、対話の質を向上させ、相互理解を深めます。また、相手に安心感を与え、建設的なコミュニケーションを可能にします。特に相手が抱える問題や感情に寄り添う姿勢が、信頼関係を構築する上で欠かせません。
このように、共感的な傾聴の技術を身につけることが、他者との相互理解を深めるための重要な手段です。
3rd Step 閃きを生む(問う技術)
他者の成長を促すためには、問いかけ方が重要です。効果的な問いかけは、相手の内面に潜在する思考や気づきを引き出し、自律的な行動を促す力を持っています。成長をサポートするための問いかけでは、特に「なぜ」ではなく「何を」「どうすれば」といった問いを意識することがポイントです。
なぜではなく、何を・どうすれば
問いかけの際に「なぜ」を多用すると、相手が問い詰められているように感じ、防御的な姿勢を取りやすくなります。これに対し、「何を」「どうすれば」といった問いかけは、相手が具体的に考えを整理しやすく、積極的に解決策を見つける手助けとなります。この形式の問いは、相手が自分自身で課題に気づき、解決に向けた思考を促進するのに役立ちます。
潜在的な気づきを引き出す効果
効果的な問いかけによって、相手の内面にある潜在意識や暗黙知にアクセスし、表現を引き出すことが可能です。これにより、相手は自分の課題や目標をより明確に認識し、自ら成長するための意識を持ちやすくなります。
問いかけによる自律性の向上
このような問いかけを通して、相手が自ら課題を発見し、自発的に解決策を考えるようになります。問いかけによる成長支援は、自律的な行動を促し、相手の内的なモチベーションや自己成長を引き出す効果があります。
このように、相手の気づきや成長を促すためには、適切な問いかけの技術が不可欠です。「何を」「どうすれば」といった問いを通じて、相手が主体的に成長できるようサポートしましょう。
まとめ
他者と円滑にコミュニケーションを取るためには、相互理解を深める技術が重要ということがわかりました。まず、「わたしメッセージ」を使って自分の考えや感情を率直に伝え、相手が受け入れやすい形で話すことがポイントですね。また、相手の話を聞くときには共感的な傾聴が大切で、相手の視点に立って理解しようとする姿勢が信頼を築きたいですね。さらに、相手の成長を促すには「なぜ」ではなく「何を」「どうすれば」と問いかけ、相手が自律的に考えられるようサポートしていきたいと思いました。
明日からすぐにでも実施できるTipsも多く、早速取り入れてコミュニケーションしていきたいと思いました。次回のDAY3の講義も楽しみです!