企業によるSNS公式アカウントの運用は、ブランドイメージ向上に欠かせない発信ツールとして活発化しています。しかし、わずかな誤投稿や投稿ミスが、会社全体のマイナスイメージに繋がり、インターネット炎上を引き起こす可能性があります。ユーザーに不快感を与えたり、信頼を大きく損なったりする事態は、何としても避けたいものです。
このブログ記事では、SNS運用担当者の皆様が直面する投稿リスクに備え、投稿前のチェックリストと予防策を詳しく解説します。この記事を読めば、あなたのSNS投稿が企業イメージを損なうことなく、安心して発信できるようになります。
チェックリストが不可欠な理由
SNSの活用が広がる一方で、リスクへの対策が遅れている企業も少なくありません。実際、「デジタル・クライシス白書2021」によると、2020年にはSNS炎上が1,415件発生し、前年より15.2%も増加したとのデータがあります。炎上したSNSを見た人のうち33.5%が「購入や利用をやめた・検討し直した」と回答しており、ブランドへの印象悪化に直結しています。
炎上の原因としてよく挙げられるのが、運用ルールの未整備です。具体的には、SNSにアップする端末の指定がない、複数人による投稿チェックが行われていないといった状況が見られます。
しかし、全ての炎上が防げないわけではありません。企業が自らの公式アカウントで行う「不謹慎な投稿」や「誤投稿」による炎上は、最も防ぐべきであり、同時に最も予防しやすいものとされています。これらのリスクを未然に防ぐためには、「SNS投稿前チェックリスト」の作成と徹底的な活用が不可欠です。
投稿前10のチェック項目
SNS投稿前のチェックリストは、投稿案作成者と投稿内容チェック担当者による校正・校閲を徹底させるために重要です。以下に、誤投稿や炎上を防ぐための主要な10項目をまとめました。
目的 | チェック項目 | 手動確認(具体的な行動) | 自動補完(ツール活用例) |
---|---|---|---|
1. 誤投稿防止 | アカウント選択の正確性 本投稿用の企業アカウントであるか。テスト投稿用や個人アカウントになっていないか。 |
投稿ボタンを押す前に、ログイン中のアカウント名を必ず声に出して確認する。 | SNS管理ツールで承認フローを設定し、アカウントの取り違えを防ぐ。 |
2. 情報の正確性 | 誤字脱字、衍字(不要な文字)の確認 誤字/脱字/衍字(不要な文字)がないか。 |
作成者以外のメンバーがダブルチェックする。読み上げチェックも有効。 | 固有名詞をユーザー辞書に登録し、ハイライト表示機能で自動検出する。 |
3. ブランドイメージ統一 | 表現の一貫性・適切性 語尾やトンマナ(トーン&マナー)が統一されているか。誤解を招く表現や不快な表現がないか。 |
多様な価値観を持つ担当者(性別・年代が異なるメンバー)でチェックする。運用マニュアルに例文を掲載し、統一を図る。 | AIを活用した文章生成機能で、適切な表現を提案する機能。 |
4. 事実の正確性 | 情報の正確性 日付、曜日、時間、場所など具体的な情報に誤りがないか。 |
参照元情報と照らし合わせ、細部まで確認する。 | 該当なし(手動確認が基本) |
5. 内容の信頼性 | 内容の矛盾・信憑性 内容に矛盾はないか。参照した情報が信頼できるか、デマやフェイクニュースを扱っていないか。 |
信頼できる文書やWebサイトの情報を利用して事実確認(ファクトチェック)を行う。 | 該当なし(手動確認が基本) |
6. 視覚情報の一致 | 画像・動画・URLの正確性 内容と画像・動画、URLの遷移先が一致しているか。URLがNot Foundにならないか、テストサイトではないか。 |
非公開アカウントでテスト投稿を行い、見た目やリンクの動作を確認する。 | SNS投稿ツールに搭載されたURLチェック機能やプレビュー機能を利用する。 |
7. 炎上リスク回避 | 炎上しやすい話題の回避 災害、差別、思想、宗教、スポーツ、スキャンダル、政治、セクシャル(性的な言及、LGBT、ジェンダーなど)といった炎上しやすい話題ではないか。 |
最新の国内外のニュースやトレンドを常に把握し、価値観のズレが生じないかを確認する。SNSエキスパート協会の提唱する「炎上さしすせそ」を避ける。 | 該当なし(手動確認が基本) |
8. 投稿日の適切性 | 投稿日の適切性 投稿日が炎上危険日(過去に大きな災害や事件が起こった日)ではないか。 |
投稿日の過去のニュースや災害カレンダーを調べる。 | SNS管理ツールの「災害・事件カレンダー機能」で投稿危険日を自動検知する。 |
9. 法令遵守 | 法的・権利侵害の確認 著作権、肖像権、商標権を侵害していないか。景表法に違反していないか。 |
専門家や法務部門に確認を求める。 | 該当なし(手動確認が基本) |
10. 表記揺れ防止 | 環境依存文字・半角全角・スペースの確認 環境依存文字が使われていないか。スペースの半角・全角が統一されているか。不要なスペースや改行がないか。外国語のスペルは正しいか。 |
全ての投稿で表記ルールが守られているかを確認する。文書作成ツールのスペルチェッカーやGoogle検索で外国語スペルを確認する。 | 固有名詞と同様に、ハイライト表示機能で自動検出するツールも存在します。 |
チェックリストを社内フローへ落とし込む3ステップ
チェックリストを効果的に運用し、属人化を防ぐためには、組織的なフローへの組み込みが重要です。
SNS運用マニュアルの用意と承認フローの構築
SNS運用担当者が一人で投稿案を作成し、そのまま投稿するフローはリスクが高いため避けるべきです。誤字脱字や固有名詞のチェック、内容の事実確認、炎上しやすいテーマの有無などを、投稿案作成者とは別のメンバーが確認するダブルチェック体制が推奨されます。SNS運用マニュアルに承認フロー(例:「投稿内容の作成のみ許可された担当者」「最終チェックを行う担当者」「投稿を許可された担当者」など)を明確に記載し、チーム全体で共通認識を持つことが大切です。
多様な視点でのチェック体制の確立
SNS投稿の内容や表現は、人によって判断が異なる部分があるため、多様な価値観に合わせたチェックが重要です。性別や年代が異なる担当者でチェックを行うことで、多面的な確認が可能となり、炎上予防に効果的です。また、世論や人々の価値観の変化に常に敏感であること、最近発生した国内外のネガティブなニュースやトレンドを把握することも重要です。
SNS管理ツールの導入と連携
人的ミスを最小限に抑えるためには、SNS管理ツールの活用が非常に有効です。多くのツールには、複数のSNSアカウントを一元管理できる「アカウント管理機能」や、担当者ごとに権限を付与し承認フローを簡単に構築できる「管理者機能」が備わっています。また、投稿のプレビュー機能や災害・事件カレンダー機能を持つツールもあり、チェック漏れを防ぎ、安心して投稿できる仕組みを整えることができます。
ケーススタディ:チェック漏れで炎上した実例
チェックリストの重要性を理解するために、実際にチェック漏れで炎上した事例を見ていきましょう。
アカウント選択ミスによる誤爆
あるアウトドア用品ブランドが、個人の見解であるはずの政権批判を誤って公式アカウントから投稿し、炎上した事例があります。企業のSNS担当者が、プライベートなSNSアカウントに投稿するつもりの内容を、誤って自社の公式SNSアカウントで投稿してしまうミス(「誤爆」)は頻繁に見られます。これは、投稿内容次第で深刻なネット炎上を引き起こす可能性があるため、特に注意が必要です。
画像・動画・リンク選択ミス
ウォーターマークが入ったままの仮画像を誤って投稿し、ユーザーから「意図的な著作権侵害」と批判が集まり炎上した企業事例があります。また、投稿内容と画像が一致しない、URLがNot Foundになる、あるいはテストサイトに遷移してしまうなどのミスも、ユーザーに混乱を与え、信頼を損なう原因となります。
不適切な投稿内容・誤字脱字
子ども向け製品を扱う玩具メーカーが「某小学5年生の女の子の個人情報を暴露」と投稿し炎上した事例は、内容の不適切さが問題となりました。また、誤字脱字や社名・商品名のタイピングミスも、企業の信頼性を損なう致命的なミスとなりえます。
投稿タイミングのミス
2015年8月9日の長崎原爆投下日に、大手エンタメ系企業が「なんでもない日おめでとう」と投稿し、不謹慎であるとして物議を醸した事例があります。これは、一見何気ない投稿でも、投稿日が悪いと炎上につながる典型的な例です。災害や事件があった「炎上危険日」は、投稿内容が不謹慎・無神経だと思われ、企業イメージ悪化を招く恐れがあるため、事前に確認する習慣が非常に重要です。
重要:これらの事例は、些細なチェック漏れが企業に大きな損害をもたらす可能性を示しています。
よくあるQ&Aで疑問を解消
まとめと次のアクション
企業アカウントでSNSに投稿する際は、誤投稿(誤爆)や投稿ミスを予防するために、SNS投稿前チェックリストをしっかりと確認することが何よりも大切です。また、SNS運用マニュアルの用意、チームによる運用体制の構築、そしてSNS管理ツールの利用は、アカウント管理や承認フローの導入を助け、インターネット炎上を未然に防ぐ上で非常に効果的な方法です。
どんなに慎重に運営していても、人為的なミスを100%防ぐことは困難です。そのため、SNS投稿チームを複数名で構成するなど、ミスを起こさない仕組みを投稿フローに組み込むことが重要です。
さらに、「守り」のSNSマーケティングを強化する次のステップとして、投稿後のリアルタイム監視(SNS監視サービスなど)の導入を検討することをお勧めします。株式会社ループス・コミュニケーションズが提供する「炎上ミハル」のようなレピュテーションリスク管理ツールは、ネット上の風評を24時間監視し、AIがネガティブな情報を自動判定することで、炎上や悪質な風評の火種をいち早く見つけることができます。平常時から監視体制を構築し、万が一のトラブル発生時にはスピーディーな初動対応ができるように備えましょう。
参考リンク&法的ガイド
- 総務省|東海総合通信局|その3 半角カタカナや機種依存文字を使用しない
- Facebookシェアデバッガー
- Twitterカードバリデーター
- SNSエキスパート協会: 炎上さしすせそなど、SNSリスクに関する情報を提供
- 株式会社ループス・コミュニケーションズ(炎上ミハル提供元)
注意点: 上記の参考リンクは、提供されたソース内に記載されているものであり、情報の完全性や最新性を保証するものではありません。特に法律やガイドラインに関する情報は変動する可能性があるため、常に最新の情報を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。