近年、Googleマップに書き込まれる悪質な口コミが、企業や店舗に深刻な影響を与えるケースが増加しています。これらの口コミは、売上減少や顧客離れ、採用活動への悪影響など、ビジネスに直接的なダメージを与えかねません。
消費者の情報収集行動が変化し、スマートフォンの普及やSNSの台頭により、ユーザーはいつでもどこでも気軽にお店の情報を調べられるようになりました。特に飲食店やサービス業では、消費者の95%が購入を決める前にオンラインの口コミを参考にしているというデータもあり、口コミの評価が集客に大きく関わっています。
Googleの口コミは、Google検索やGoogleマップで店舗名とともに目立つ位置に表示されるため、その内容は人々の行動に大きな影響を及ぼします。たった1件の悪質な口コミでも、店舗の印象を大きく左右し、信頼性を損なう可能性があるのです。
本記事では、Googleマップに書き込まれた悪質な口コミへの対処法について、まとめています。
悪質な口コミの具体例と見極めポイント
Googleに口コミの削除要請が認められるためには、Googleのポリシーに違反している必要があります。悪質性の高い口コミであっても、Googleのポリシーに違反していなければ削除が認められないケースも少なくありません。
Googleに削除要請が認められる口コミ(ポリシー違反)の具体例
- 敬意に関するコンテンツ:ハラスメント、ヘイトスピーチ、不適切なコンテンツ(個人やグループを攻撃・中傷する行為)、個人情報を含むコンテンツなど。
- 詐欺的なコンテンツ:実体験に基づかない虚偽のエンゲージメント(サクラ)、なりすまし、誤情報、誤解を招く表記やユーザーを騙す目的での虚偽記述(不実表示)など。
- 成人向けコンテンツ:わいせつ・冒とく的な表現、露骨な性的描写、アダルトコンテンツ、暴力や残虐行為を含むコンテンツなど。
- 危険なコンテンツ・違法コンテンツ:規制されている商品やサービスの販売、未成年者に対して危険な行為を促すもの、違法なコンテンツ、子どもの安全を害するもの、テロリストのコンテンツなど。
- 情報の質がよくないコンテンツ:関連性のないコンテンツ、宣伝・勧誘を目的としたコンテンツ、意味不明なコンテンツ、繰り返して投稿されたコンテンツなど。
Googleに削除要請をしても認められない口コミの具体例
- 星だけでコメントがない口コミ:コメントがない場合、不当に評価を下げる目的であると判断できないため、基本的に削除できません。
- 事実の確認が難しい口コミ:口コミの内容が事実であるかどうかの判断がGoogleにはできない場合、削除は困難です。例えば、店舗から受けた印象はコメントした本人しか知り得ないため、第三者であるGoogleは真実を判断できません。
- 個人の感想にすぎない口コミ:店舗にとってマイナスな口コミであっても、単なる個人の感想であれば削除されません。これは、個人の感想まで削除できると、店舗にとって都合の良いコメントしか残らず、口コミの意味がなくなるためです。例えば、「料理がまずかった」という主観的な評価は削除されにくいです。
正当なクレームと悪質口コミの見分け方は、その内容が事実に基づいているか、具体的な改善につながる指摘であるか、そして感情的・攻撃的な表現が含まれていないかがポイントです。悪質な口コミは、虚偽の情報や感情的な非難を含み、具体的な問題点が示されていないことが多いです。一方、建設的な批判はサービスの向上につながる具体的な指摘や提案を含みます。
Googleへの通報・削除申請の手順と実際の通りやすさ
悪質な口コミを削除するためには、Googleに削除依頼を申請する必要があります。
Googleに悪質な口コミを削除申請する方法
Googleビジネスプロフィールから報告する
- ビジネスプロフィールマネージャにログイン。
- メニューから「口コミ」を選択。
- 削除したい口コミを選び、「不適切なクチコミとして報告する」をクリック。
- 「口コミを報告」で口コミの問題点を選択し、削除要請する。
Googleの検索結果から報告する
- Googleで悪質な口コミが記載されている店舗名を検索。
- ナレッジパネルの「すべてのGoogleの口コミを見る」を選択。
- 削除したい口コミを選択し、「レビューを報告」をクリック。
- 「口コミを報告」で口コミの問題点を選択し、削除要請する。
Googleマップの検索結果から報告する
- Googleマップで悪質な口コミが記載されている店舗名を検索。
- 対象店舗を選択し、「口コミ」をクリック。
- 削除したい口コミを選択し、「違反コンテンツを報告」をクリック。
- 「口コミを報告」で口コミの問題点を選択し、削除要請する。
実際の通りやすさ:Googleに削除申請をしても、全ての口コミが無条件で削除されるわけではなく、Googleのポリシーに違反していると判断された口コミのみが削除されます。削除要請は非常に簡易的で、詳細な説明ができないため、口コミの悪質性がGoogleに伝わらず、削除してもらえないことがあります。削除要請は口コミ1件につき1回しかできないのが原則で、何度も申請するとスパムと判断され、アカウント停止のおそれもあります。口コミが削除されてもオーナーに通知は来ず、削除までに約2週間程度の期間がかかるため、申請後に自身で確認が必要です。
通報しても削除されなかった場合の二次対応策
Googleに削除依頼をしても認められなかった場合は、他の対策を講じる必要があります。
- 証拠の保存:投稿者の特定や損害賠償請求を視野に入れる場合、削除依頼を出す前に、口コミの本文、投稿日時、投稿者のアカウント名などをスクリーンショットで保存しておくことが重要です。
- 弁護士に相談:悪質性が高く、すぐにでも削除したい口コミの場合は、ネットトラブルに精通した弁護士への相談が有効です。
- 返信対応:悪質な口コミに対しても丁寧に返信することで、店舗の誠実さを伝え、信頼回復につなげることができます。
- 良い口コミを増やす工夫:低評価の口コミを直接削除できなくても、良い口コミを増やすことで全体の評価を高め、悪質な口コミが目立ちにくくなります。
返信対応で広報が気をつけるべき表現とテンプレート例
Googleマップの口コミは、投稿者本人だけでなく、多くのユーザーに閲覧されるため、返信コメントは店舗全体の印象に影響を与えます。悪い口コミであっても真摯に対応することで、他のユーザーに誠実さや改善意欲を示すことができ、信頼回復や新たな顧客獲得のチャンスにつながります。
広報が気をつけるべきNGな返信対応
- 感情的な反論や防衛的な態度:問題の悪化や、第三者に「対応が荒っぽい店」という印象を与える可能性があります。
- 言い訳がましい説明:問題を軽視していると受け取られかねません。
- コピペや定型文のみの返信:内容を読んでいないと見なされ、不信感につながることがあります。
- 返信の遅延または無反応:対応が遅れるほど印象が悪化し、問題を放置していると受け取られます。
- 一方的な謝罪で信用を落とす:誤解を認めたと誤解され、風評被害につながる可能性があります。
- プライバシーへの配慮不足:個人情報や来店詳細を記載すると、プライバシー侵害のリスクがあり、トラブルを拡大させかねません。
広報としての公式対応例と返信文の工夫
返信の基本原則は、迅速な対応(24~48時間以内が理想)、感謝と共感の姿勢、具体的な改善策の提示、そして敬意を持った言葉遣いです。返信は簡潔で分かりやすく、第三者が読んだときに誠実さが伝わるように意識しましょう。
返信テンプレート例
「〇〇〇〇様、この度はご来店いただき、ありがとうございます。〇〇〇〇については、大変申し訳ありませんでした。お客様のご指摘を真摯に受け止め、今後このようなことがないよう、〇〇〇〇のように対応させていただきます。貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。」
「〇〇〇〇様、この度は評価をいただき、誠にありがとうございます。何か気になった点をお伝えいただけましたら、さらなるサービス向上のために参考にさせていただきます。今後ともご愛顧賜りますよう、よろしくお願いいたします。」
「ご来店とご意見をいただきありがとうございます。ご記載の内容について確認いたしましたが、当日の状況と異なる点がございます。ただし、お客様のご気分を害する結果となってしまったことは深くお詫び申し上げます。今後はより丁寧なご案内を心がけてまいります。」
(より強く否定する場合は、「当店ではそのような事態は発生しておりませんでした」と冷静に事実を伝えつつ、お客様のご不満にはお詫びと改善意欲を示します。)
「この度はご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございませんでした。頂いたご指摘をもとに、改善に努めております。もしよろしければ、改めてご来店いただけましたら幸いです。皆様に気持ちよくお食事いただけるよう、スタッフ一同取り組んでまいります。」
良好な返信は、投稿者が後から評価を変更してくれる可能性も生み出します。
口コミ対策をチームで行う運用体制の整え方
悪質な口コミへの対応は、一人の担当者だけでは限界があります。組織全体で問題意識を共有し、連携して取り組むことが重要です。
店舗スタッフとの情報共有・連携方法
- 定期的なミーティング:週次または月次でGoogleマップや口コミサイトの評価をモニタリングし、スタッフ全員で共有しましょう。ポジティブな意見も含め、店舗の現状把握と目標設定に役立ちます。
- 原因分析と改善策の立案:具体的な指摘があった場合、その状況や原因を掘り下げ、具体的な行動プランを立てます。スタッフ不足、オペレーションミス、接客態度などが原因となることが多いです。
- スタッフ教育の強化:接客態度やマニュアル、クレーム対応の基礎を徹底し、均一なサービス品質を目指します。小さな不満がネガティブ評価につながるのを防ぎます。
- ロールプレイングの実施:マニュアルだけでなく、実際にあったクレーム事例を共有し、スタッフ同士でロールプレイングを行うことで、実践的な対応力を高めます。
SNS担当・広報・店長間の役割分担の例
- モニタリング担当:GoogleアラートやSNS検索機能を活用し、店舗名や関連キーワードに関する投稿を継続的に監視します。悪評や誤情報をいち早く察知し、関係部署に報告する役割を担います。
- 返信担当(広報・店長):問題のある口コミに対して、迅速かつ誠実な返信を行います。返信内容は複数人で吟味し、感情的にならないよう注意し、第三者の目線を意識した表現を心がけます。
- サービス改善担当(店長・現場スタッフ):口コミで指摘された問題点に基づき、商品・サービスの品質改善、スタッフ教育、店舗運営の見直しなどを実施します。
- リスクマネジメント担当(リスク担当者・弁護士):悪質性が高い口コミや法的措置が必要なケースの判断と、専門家への相談を行います。法的な対応が必要な場合の窓口となり、証拠の保全や手続きを進めます。
- 責任者の決定:異常を察知した際に誰が、どのように対応するのかというフローをあらかじめマニュアル化し、対応責任者を明確にしておくことが重要です。
ポジティブな口コミを増やすための合法的な施策
悪質な口コミへの対応と並行して、良い口コミを増やす努力を継続することが、中長期的な評価改善につながります。良い口コミが増えれば、悪い口コミが相対的に目立たなくなり、ユーザーからの信頼を得やすくなります。
Googleポリシーに違反しない方法
- 金銭や商品、割引サービスなどの見返りを条件とした口コミ依頼は禁止されています。
- 自作自演やサクラの口コミも禁止されており、発覚した場合はアカウント停止や口コミ削除などのペナルティを受けるリスクがあります。GoogleはIPアドレスやGoogleアカウント情報などで自作自演を見破ることが可能です。
ポジティブな口コミを増やす合法的な施策
- 顧客満足度の向上:最も重要で根本的な対策です。質の高い商品・サービスを提供し、顧客体験を最大化することで、自然と良い口コミが増えていきます。接客の質の継続的な評価と改善も不可欠です。
- お客様に直接口コミを依頼する:来店後や会計時など、お客様の満足度が高いタイミングで「もしよろしければGoogleの口コミにご協力いただけますか?」と直接お願いすることが効果的です。
- 口コミを書きやすい環境を整える:
- QRコードの設置:Googleマップの口コミ投稿ページに直接アクセスできるQRコードを印刷し、店内の目立つ場所(レジ横、テーブル上、メニュー裏など)に設置します。
- SMSの活用:来店後やサービス提供後に「ご利用ありがとうございました。よろしければ、以下のリンクから口コミ投稿をお願いします」といったお礼のメッセージとともに、口コミページへのURLをSMSで送信します。メールよりも開封率が高いのが特徴です。
- Googleビジネスプロフィールの充実:常に最新の店舗情報を反映させ、写真の更新や投稿機能を活用してイベント告知などを行うことで、ユーザーの期待値とのギャップを埋め、マイナスな口コミを防ぎ、良い口コミを集めやすくします。
- SNSを活用した情報発信:店舗の公式SNSアカウントで新メニュー、イベント、舞台裏などを発信し、顧客との交流を深めます。ハッシュタグキャンペーンなども有効ですが、過度なステルスマーケティングは避け、正直な感想を促しましょう。
- 改善のアピール:以前悪い評価をしたユーザーが再来店した際などに、改善した点をさりげなく伝え、評価変更を促す工夫もできます。
まとめ:広報担当が冷静に対処するための心得
Googleマップの悪質な口コミは、一見すると大きな脅威ですが、冷静かつ適切な対処を行うことで、むしろビジネスの信頼性を高めるチャンスに変えることができます。
広報担当者として最も重要な心得は、一件一件の口コミに一喜一憂しすぎないことです。ネガティブな口コミは避けられないものですが、「悪評対策より良い評判を積み上げることが最重要」という認識を持つべきです。低評価の口コミをゼロにすることは難しいかもしれませんが、良い口コミを増やして「悪い評価を目立たなくする」ことが、最終的な解決策として現実的かつ効果的です。
口コミを「問題」としてではなく、「改善の機会」として捉える姿勢が、事業の継続的な成長と顧客満足度の向上につながります。日々のモニタリングと、顧客の声を真摯に受け止めた上でのサービス品質の継続的な改善、そして誠実な返信を徹底することが、長期的な信頼構築と集客力強化の鍵となるでしょう。



