ミツカン「冷やし中華投稿」炎上事例から学ぶSNS広報のリスク管理

関根健介 | 2025/08/26

ミツカン「冷やし中華投稿」炎上事例から学ぶSNS広報のリスク管理

調味料メーカーのミツカンが、X(旧Twitter)に投稿した「冷やし中華」に関する内容が「女性蔑視」などの批判を浴び、最終的に投稿削除と謝罪に至る騒動が発生しました。この事例は一見すると些細な投稿に見えますが、SNSの運用、特に炎上リスク管理に携わる担当者にとって、「謝罪することのデメリット」や「キャンセルカルチャーへの対応」など、今後の広報活動やプロモーション活動における重要な学びと注意点を示唆しています。本記事では、この炎上事例を詳細に分析し、企業がSNSで発信する際の教訓を導き出します。

 

事実の整理

ミツカンは2025年8月13日、Xの公式アカウントで「冷やし中華なんてこれだけでも充分美味しいです」という文言とともに、同社の「冷やし中華のつゆ」を中華麺にかけただけの具なし冷やし中華の写真を投稿しました。この投稿の意図は、暑い日でも手軽にご飯を楽しんでほしいという、「日々頑張っている人たち」を応援するメッセージでした。

しかし、この投稿は一部のユーザーから批判を浴び、ミツカンは8月15日に「不快な思いをさせてしまいましたこと、心よりお詫び申し上げます」と謝罪し、当該投稿を削除しました。

炎上のポイント

今回の炎上は、投稿内容そのものだけでなく、投稿タイミングと世間の議論の文脈が大きく影響しました。

先行する「そうめん論争」

ミツカンの投稿の数日前から、SNS上では「そうめんの調理は簡単か、重労働か」を巡る議論が白熱していました。この議論は、単なる料理の手間話にとどまらず、「家事負担が主婦に偏りがちであること」といったジェンダーに関する社会的な対立構造をはらんで拡散されていました。

投稿の解釈のズレ

ミツカンの「冷やし中華なんてこれだけでも充分美味しいです」という表現、特に「なんて」という言葉が、「作り手の労力を軽視・揶揄している」「料理を馬鹿にしている」と受け取られたことが批判の主な原因となりました。さらに、当時の「そうめん論争」の文脈と結びつき、「主婦や女性をやゆしているように見える」「女性蔑視だ」といった批判に発展しました。また、「栄養や食の楽しみを考えて献立を立てている人間を小馬鹿にしている」といった意見も寄せられました。

「におわせ便乗」の危うさ

ミツカンが「そうめん論争」の文脈を意識した「におわせ便乗」であった可能性が高いとの指摘もありました。しかし、直接言及していないため、これが「論争に一石を投じた」と判断するには証拠が乏しいものの、状況証拠がグレーであるにもかかわらず、ユーザーが安易に「クロだ」と決めつける危うさも示されました。

一方で、「どこに炎上要素があるのか分からない」「手軽においしく食べられるのは最高なのに」「謝る必要がない」といった擁護の声も多数寄せられていました。

企業の対応と評価

ミツカンは批判を受けて「見てくださった方々のお気持ちを害してしまったことを、深く反省しています」「皆様からのご意見を真摯に受け止め、今後は発信の内容により一層の注意を払い、運用に努めてまいります」と謝罪しました。

しかし、筆者はこのミツカンの対応を「過剰反応」と評価し、謝罪は「得策ではなかった」分析しています。

「キャンセルカルチャーの成功例」に

謝罪と投稿削除は、「好ましくない表現」をしたとされる企業を否定し、不買運動などを行う「キャンセルカルチャー」の「成功例」として記録されてしまうことにつながりました。一度謝罪してしまえば、それが客観的な事実となり、今後の同様の事例において「ミツカンは謝ったのに、なぜお前たちは謝らないのか」といった批判の基準となる可能性があります。

「女性蔑視を認めた」印象に

ミツカンの投稿は特定の性別に言及しておらず、謝罪文でも「日々頑張っている人たち」に向けた投稿だったと説明されていましたが、削除したことにより「女性軽視だと認めた」ように見えてしまうという指摘もあります。

「消せば増える」の法則

SNSにおいては「消せば増える」というネットスラングがあるように、投稿を削除することで「それだけ問題のある内容だったのか」と興味を持つ人が増え、かえって火に油を注ぐ結果になることがあります。

中途半端な印象

「結局すぐさま削除してしまったことで、ネットユーザーには中途半端な印象を与え、「消すくらいなら、そもそも投稿しなければよかった」と感じさせてしまい、企業としてのブレを印象づけてしまうことになった」と指摘されています。

学びと今後の注意点

このミツカンの事例から、炎上リスク担当者が学ぶべき点は多岐にわたります。

社会の文脈と空気の把握

  • 投稿が予定されていたとしても、投稿直前の社会的な議論やトレンドを深く理解することが不可欠です。今回の「そうめん論争」のように、一見無関係な投稿が、既存の対立構造と結びついて意図しない形で炎上するリスクを常に意識するべきです。
  • デリケートな話題には安易に便乗しない。「におわせ便乗」は、明確な意図が伝わらないまま誤解を招く可能性が高いです。

メッセージの明確性と多角的な検証

  • プロモーションの意図(例:手軽さ)を明確にし、複数の視点からその表現がどのように受け取られるかを事前に徹底的に検証するべきです。特に「〜なんて」のような、謙遜や気軽さを表すつもりの言葉が、見下しているように解釈される可能性がないか吟味が必要です。
  • ターゲット層だけでなく、あらゆる層にどのように響くか、性別、世代、価値観の異なる多様な意見を取り入れてレビューすることが重要です。

炎上時の対応原則

  • 「途中で断念するくらいなら、最初からチャレンジしない」という原則を肝に銘じるべきです。攻めたプロモーションをするのであれば、一定数の批判が来ることを想定し、それを乗り越える覚悟と、スタンスを貫く強固な姿勢が必要です。
  • 安易な謝罪や削除は、「キャンセルカルチャーの成功例」となり、今後の企業活動に「大きな制約」を加える可能性があります。
  • SNS社会では、消費者の声に耳を傾けない企業は「不誠実」と見なされる一方で、安易に謝罪すれば「ブレている」「中途半端」と批判される可能性があります。「何を言われても曲げずに投稿を続ける」、または「そもそもセンシティブな話題には触れない」のどちらかを取るのがベストであり、それが無理ならSNS運用自体を見直すべきという厳しい意見もあります。
  • 「燃えてないバズにだけ乗っかる」など、リスクの低いバズを狙う戦略も検討に値します。

まとめ

今回のミツカンの事例は、SNSでの企業発信が、意図しない解釈や社会的な文脈によっていかに大きな波紋を呼ぶかを示しています。企業は、炎上を恐れて過度に自主規制するだけでなく、自社のスタンスを明確にし、世間の反応に対して一貫性のある、かつ戦略的な対応をとることが今後ますます求められます。

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AUTHOR PROFILE

  • 著者:関根健介
ループス・コミュニケーションズ所属。某コンサルティング会社にてWebマーケティングやバイラルマーケティングを経験した後、数年放浪し2011年12月からループスへジョイン。ソーシャルメディアの健全な普及をねがい日々精進しています。関心のあるテーマはO2O・地域活性×ソーシャル・医療×ソーシャル・ソーシャルコマース ま〜ソーシャル全般です。 【座右の銘】 意思あるところに道あり 【Facebook】www.facebook.com/kensuke.sekine.7 【Twitter】 @kensuke_sekine
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