Facebook Open Graph ProtocolとセマンティックWebの進化を探る

福田浩至 | 2011/06/14

Facebook Open Graph ProtocolとセマンティックWebの進化を探る

 

Facebookからの流入を高める施策として、Open Graph Protocolの有効活用が注目されている。

 

Open Graph Protocolとは、2010年4月21日、Facebook開発者向けカンファレンスF8において発表された新プラットフォーム「Facebook Platform」に含まれるもので、三つの新機能(Social Plugin, Graph API, Open Graph Control)のうちの一つだ。簡単にまとめると次のようになる。

 

  • Social Plugin … Facebookの「いいね!」などの機能を簡単に組み込めるプラグイン
  • Graph API … Facebook Platform機能を高度に利用するための開発者向けAPI
  • Open Graph Protocol … WebページをFacebookソーシャルグラフに組み込む規定

 

すでに多くのWebサイトにある「いいね!」ボタンはSocial Pluginを、Levi’s Friends ShopなどWebサイトとFacebookとの機能統合はGraph APIを利用したものだ。それに対して、Open Graph Protocolは少しわかりにくい機能なので、最初に解説しておこう。なお、このブログ記事は「ソーシャルグラフ」に関する理解を前提としている。「ソーシャルグラフ」に関しては、下記二つの記事にて詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてほしい。

・ ソーシャルグラフってなんだろう? (2010/6)  
・ 続 ソーシャルグラフってなんだろう 〜 その進化と企業戦略 (2011/5)  

 

 

Open Graph Protocol ってなんだろう?

 

一言で言うと、一般のWebサイトを、Facebookのソーシャルグラフに組み込むための決まり事のこと。つまり、Facebookに「そのページの内容がどんなものであるかを自己紹介する機能」で、URLごとに設定することができる。難しく感じるが、具体例を見れば理解しやすい。

 

<html xmlns:og=”http://opengraphprotocol.org/schema/”
xmlns:fb=”http://www.facebook.com/2008/fbml”>
<head>
<title>The Rock (1996)</title>
<meta property=”og:title” content=”The Rock”/>
<meta property=”og:type” content=”movie”/>
<meta property=”og:url” content=”http://www.imdb.com/the Rock/”/>
<meta property=”og:image” content=”http://ia.media-imdb.com/rock.jpg”/>


</head>


</html>

 

このようにHTMLソースコードの中に「タイトル」「タイプ」「URL」「イメージ画像」「サイト名」「説明文」のような情報を付加することで、FacebookにWebページの内容を伝え、より緊密な連携をはかろうとするものなのだ。

 

詳しい技術的説明は、ループス岡村直人のブログにて記載しているので参考にしてほしい。
次世代SEO「セマンティックウェブ」とFacebook OGPの関係

この手続きによって、WebページがFacebookのソーシャルグラフに緊密に組み込まれるようになり、Facebook内のオブジェクトとして扱われるようになる。では、このような手間を加えると、どのような見返りがあるのだろうか?

 

 

OGP によって、Facebook流入が飛躍的に増加する

 

今、Open Graph Protcol(以下、OGPと略)が注目を集めている理由は、この記述によって「いいね!」が友人のニュースフィードに告知されるようになり、Facebookからの流入が飛躍的に増加するからだ。

 

 

 

逆に言うと、このOGP設定をしなければ、「いいね!」は自分のウォールにアクティビティとして表示されるだけで、友人のニュースフィードには飛ばない。この機能差はきわめて大きく、Facebookからの流入量が数倍になるとブログ上でもレポートされている。

またもう一つの利点として、ニュースフィードに表示される投稿形式、すなわち、タイトル、画像、URL、説明文を自らが規定できることがあげられる。

 

上: OGP未設定  下: OGP設定後

 

さらに、OGPを設定するとそのWebサイト用のFacebookページが自動生成(og:type=articleをのぞく)され、このページのウォールにコメントなどを投稿することで「いいね」 を押したユーザーにアップデート通知できる点も見逃せない。

 

 

セマンテックWebってなんだろう?

 

そして、このOpen Graph Protocolには極めて重要な側面がある。それは、ティム・バーナーズ・リー氏が提唱して注目をあびた「セマンティックWeb」、停滞気味だったこのコンセプトが再加速する可能性だ。

 

セマンティックWebとは「情報リソースに意味を付与することで、人を介さずに、コンピュータが自律的に処理できるようにするための技術」のこと。そのためには「メタデータ」と呼ばれるデータを識別するための情報と、「オントロジー」と呼ばれる標準化された分類体系が必要となる。わかりにくいので音楽を例にとって考えてみよう。

まず、情報リソースの例をあげてみたい。音楽系A社でのデータを抽出したとしよう。

 

安室奈美恵、昭和52年9月20日、沖縄県、J-POP

 

これだけだと単なるデータの羅列だが、次のようなメタデータ(グレー部分)を付与するとコンビュータがデータの意味を理解するようになる。

 

名前: 安室奈美恵、生年月日: 昭和52年9月20日、出身: 沖縄県、ジャンル: J-POP

 

ただし、このメタデータを企業ごとに独自でつけていたのでは、インターオペラビリティ(相互互換性)上、問題が発生してしまう。例えば、B社が

 

本名: 安室奈美恵、誕生日: 昭和52年9月20日、出身地: 沖縄県、分類: J-POP

 

のようなメタデータを付与すると、A社とB社のデータベースを統合するには移行手順が必要となる。世界中がバラバラに独自体系をつくっていたら極めて効率が悪いシステムとなることは必然だ。そのために必要となる規定された標準体系が「オントロジー」だ。例えば、次のようなものだ。

 

・ミュージシャン
・大ジャンル
・小ジャンル
・名前
・生年月日
・出身

 

この意味付けタグを情報リソースに付与することで、コンビュータがデータの意味を理解できるようになる。例えば、Googleで「有名 J-POP ミュージシャン 沖縄」と検索すると このような検索結果 となるが、セマンティックWebが普及すれば、トップページに安室奈美恵が登場する可能性が高くなるだろう。つまり、人に聞いたときに近い回答が得られるわけだ。

このように、普及すれば検索や広告、コマースなどの分野でさまざまにキラーアプリケーションの登場が予想されるセマンティックWebだが、ネックになっていたのは、Web制作サイドにタグづけのインセンティブがないことだろう。タグづけで短期的にメリットを得るのは検索エンジンや広告、コマースなどのプラットフォーム事業者であり、Web制作サイドではないからだ。

 

 

OGPが加速する、セマンティックな世界

 

FacebookのOpen Graph Protocolは、OGタグによりWebベージに意味付けするものであり、対応したサイトはセマンティック化されたWebとなる。その規定は The Open Graph Protocol が運営しており、現在は、mixiやGREEでも利用可能となっている。

 

 

まだ一階層しかないシンプルなものだが、オントロジーの一種として TYPE も規定されはじめた。

 

  • Activities:  activity, sport
  • Businesses:  bar, company, cafe, hotel, restaurant
  • Groups:  cause, sports_league, sports_team
  • Organizations:  band,government, non_profit,school, university
  • People:  actor, athlete, author, director, musician, politician, profile, public_figure
  • Places:  city, country, landmark, state_province
  • Products and Entertainment: album, book,drink, food, game, movie, product, song, tv_show
  • Websites:  article, blog, website

 

そして、このOGPの画期的なところは、なんと言ってもソーシャルメディアからの流入量の大幅アップという、Web制作サイドに実利がある点だろう。Facebookの「いいね!」ボタンは1年前で30億回/日、おそらく現在は100億回/日に近づいている。

 

数年後には、ほぼすべてのWebが、Facebookからの流入量を増加させるために「いいね!」ボタンを完備し、OGPに対応するだろう。それも極めて早いスピードで。そしてOGPをトリガーとして、Webの世界が雪崩をうったようにセマンティック化していくのではないだろうか。

セマンティックな世界になると、Facebookはもとより、OGPで意味付けされたデータを活用して、検索・広告・コマースの広範囲にわたって、さまざまなキラーアプリケーションが出現するはずだ。ベンチャー企業にとって、新たなブレイクスルーのチャンスが訪れることにもなるだろう。

 

 

そして、Google vs Facebook 

 

セマンティックWebは、Googleにとってもウェルカムなことだ。Googleの製品管理担当ディレクタ Jack Menzel 氏は、ブログ にて次のように述べている。

 

Web は単なる言葉の寄せ集めではなく、現実世界の物事に関する情報だ。現実世界に存在するものの相互関係を理解できれば、関連性の高い情報を迅速に提供することが可能になる。

 

今まで、Google検索のアウトブットは、キーワード分析による機械的アルゴリズムに基づくものだった。つまり、過去のデジタルデータを徹底的に分析して、利用者の関心を推論する仕組みだ。それが、セマンティックの時代には、推論ではなく、現実社会のデータ(意味付けされたタグ)も検索アルゴリズムに含めることができるようになる。

しかしながら、Facebookの優位性は変わらないだろう。Googleが得るのは、あくまでオブジェクト(モノやコンテンツ)に関する現実社会の情報だけだが、Facebookは、オブジェクトと現実社会の人々をひもづけるするための世界中の個人情報とソーシャルグラフを独占しているからだ。

しかも、Googleが検索対象にすることのできない、クローズされたFacebook領域は年々急拡大しており、今やWebの大きな部分を占めるようになっている。そして、このエリアのデジタル情報、セマンティック情報は、当然、Facebookが独占することになる。

 

 

Googleは、黎明期の段階で、Orkutというソーシャルネットワークを開始し、ブラジルやインドで高い人気を博している。Orkutスタート時点では、草分けサービスであるFriendsterも弱小だったし、Facebookにいたっては着想すら出ていなかった。

Friendsterが爆発的普及をはじめた2004年、一部のイノベータはFriendsterを「新しいGoogle」と呼び、その未見の可能性に着目した。デジタルデータで表現された形式知ではなく、人々のネットワークによる暗黙知を活用できる可能性を見抜いていたのだ。今や、Facebookがその可能性を引き継ぎ、覇者Googleすら追従できない、極めて高い参入障壁を築いてしまった。そして、さらにはOGPによって、本来Googleのエリアであるデジタルデータ領域ですら、リーダーシップを発揮しはじめた。

これからは、Facebookとの提携により、Facebookクローズドエリア内も検索対象とできるMicrosoft Bingが、Googleの強力なコンペティターとして成長する可能性もあるだろう。止まらないFacebookの勢いに待ったをかけられるメガベンチャーの登場は、何年先になるのだろうか。

   

AUTHOR PROFILE

  • 著者:福田浩至
株式会社ループス・コミュニケーションズ副社長、博士(情報管理) 多数の企業にて、ソーシャルメディアの効果的かつ安全な運営を支援しています。 特に、企業のソーシャルメディア活用におけるルール「ソーシャルメディア・ポリシー」策定や啓蒙教育など積極的な守りの仕組みづくりが専門領域です。
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