【2012年2月最新版】直近決算発表に基づくmixi、GREE、Mobage、Amebaの業績比較

福田浩至 | 2012/02/10

【2012年2月最新版】直近決算発表に基づくmixi、GREE、Mobage、Amebaの業績比較

国内4大ソーシャルアプリ・プラットフォーム、mixi、GREE、Mobage、Amebaを運営する4社の2011年10-12月期決算が出揃った。急成長を続けるGREEと、停滞するMobage。前四半期に続いてその傾向は強まり、ついに今四半期においては、売上、利益ともにGREEがDeNAを抜き去る結果となった。今四半期も、特にこの二社の動向にフォーカスしてレポートしたい。

 

なお,この分析記事は,各社が投資家向けに公表している最新の決算報告,および広告代理店・クライアント向けに発行している媒体資料を主要な情報ソースとしている。また、ネットレイティングス社「Neilsen/NetRatings NetView」およびビデオリサーチインタラクティブ社「Mobile Media Measurement」による視聴データ調査、さらに三菱UFJモルガン・スタンレー証券リサーチ資料「ソーシャルゲームの正体を探る Ⅳ」、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会資料「東京ゲームショー2011 来場調査 報告書」も参考にさせていただいた。当記事では,それらの客観的な数値に基づき、できる限り公平な視点で、各社の業績やサービスを比較することを心がけている。

 

■ 各社の最新四半期(2011年10-12月期)、全社業績比較について

 

まず、各社の最新四半期決算資料に基づき、企業としての財務分析からはじめたい。

 

 

2011年10-12月期 全社売上および利益の比較チャート】

 

この中で「前期比」とは2011年9-12月期との比較、また「利益率」は営業利益率を示している。GREEの急成長ぶりが群を抜いており、対前期比で売上136%、営業利益135%とした。対するDeNAは前期に続き対前期比で微減となる。また、mixiとCyber Agentは、それぞれ対前期比で見ると堅実な成長を示す結果となった。

なお、DeNA(ビッターズ事業など)、mixi(Find Job事業など)、Cyber Agent(広告代理事業など)の三社には、SNS以外の事業も運営している。それらを除き、SNS関連事業だけを抽出して、ここ三年間あまりの売上成長を時系列で俯瞰したのが次のグラフだ。

 

【2008年7-9月期 〜 2011年10-12月期までのSNS関連売上の時系列推移】 

 

なお、この記事内で1Qとは1-3月期、4Qとは10-12月期をあらわしている。2009年のSNSアプリのオープン化がターニングポイントとなり、MobageとGREEの二社は一気に成長を加速する。それ以降、Mobageは大ヒット内製ゲーム「怪盗ロワイヤル」を旗頭に快進撃を続け、1年前の2010年10-12期には売上・利益ともGREEに2倍近くの差をつけて独走していた。それから1年、GREEはオープン化とカードバトル型ソーシャルゲームの大量投下によって驚異の急成長をとげ、ついに今四半期にMobageを捉え、逆転へと至った。

このSNS関連事業の売上を、課金売上と広告売上に分解して比較すると次のようになる。


【2011年10-12月期 SNS事業売上の比較チャート】

売上ベースでこの四半期で最も成長したのは36%アップのGREE、さらに11%アップのmixi、10%アップのAmebaと続く。GREEの売上急成長を牽引しているのは、従来型ゲームと比較してARPPU(Average Revenue Per Payed Users、課金ユーザー1人あたりの月売上高)が大幅に高い「探検ドリランド」に代表されるカードバトル型とテレビCMの大量投下だ。

 

多くのカードバトル型ゲームは「ゲームシステム」と呼ばれるゲームの基盤(ロジックや使い勝手)が共通となっており、世界観を変えることで類似ゲームを展開することができる。GREEが巧みなのは、そこにタレントを起用したテレビCMを投入し、新しいファンを生み出し続けていること。例えば「探検ドリランド」はTOKIOファンに、「海賊王国コロンブス」は福山雅治ファンに、「聖戦ケルベロス」はEXILEファンに、「AKB48 ステージファイター」はAKB48ファンに訴求することで、効率的に新規ファン層を開拓している。一方のMobageは、一世を風靡した「怪盗ロワイヤル」、それに続くロワイヤルシリーズの神通力が途切れ始め、それにかわる大ヒット・タイトルを創出できていない。またカードバトルに慣れ親しんだ利用者は、使い勝手の変わらないゲームを好む傾向がある。そのため「レイトン教授ロワイヤル」など新しいアプローチのゲームが登場しても立ち上がりが鈍いというジレンマがある。

 

ソーシャルゲームは、(1)内製ゲーム(自社開発)とそれに準じた協業ゲーム(プラットフォーマーが企画から運営までを担当)と、(2)オープンゲーム(サードパーティ開発)のふたつに分類できる。Mobage、GREEの課金売上の基礎となるコイン消費を種類別にあらわしたのが下記のグラフだ。上図はMobage、下図はGREE、それぞれ2011年10-12月期までの時系列変化を示している。


【Mobage/GREE コイン消費の時系列推移 by 三菱東京モルガン・スタンレー証券】

情報元は三菱UFJモルガン・スタンレー証券、荒木正人氏の「ソーシャルゲームの正体を探る Ⅳ」だ。GREE、Mobageのオープン化は順調にすすんでいるが、ここ半年でGREEが内製ゲームの売上げをほぼ倍増させたため、GREEの内製比率がここにきて59%と高まる結果となった。それに対してMobageの内製ゲームはこの半年で微減している。この内製ゲームの勢いが、ほぼそのままGREEとMobageの明暗に繋がったと見てよいだろう。一方、オープンゲームに関しては、gloopsやKlabなどに支えられたMobageの方が堅調だが、内製ゲームより収益性が劣るため、内製ゲームの不振をカバーできるまでには至っていない。

 

ただし現時点でのMobageのコイン消費は、「ワンピース」「FINAL FANTASY」「キン肉マン」「アイドルマスター」など版権ものの新作ゲームに支えられ、急速な回復基調にあるようだ。それにより2012年1-3月の業績予測は、対今四半期比で売上 119%、営業利益 124%と発表されており、横浜ベイスターズ買収の効果とともに注目したいところだ。

 

なお、mixiは100%オープンゲーム、Amebaは逆に100%内製ゲームで運営している。mixiは、昨年11月に「mixiゲーム」を開始した。これにより (1)ソーシャル性重視などのmixiアプリ規制が緩和 (2)アプリ広告をデベロッパーに開放 (3)キャリア決済の上限金額を2万円から5万円に引き上げ といった変化があったため、GREEやMobageにゲーム提供しているデベロッパーの参入が容易となった。この施策が功を奏し、今期の課金売上は対四半期で136%と急増した。特に戦略的にmixiゲームに投資しているゲーム・デベロッパーはドリコムで、彼らのヒットゲーム「陰陽師」においては、GREE版よりもmixi版の方がARPUが高いとしている。mixiアプリはMobage、GREEと同じ Open Social アーキテクチャーを採用しており、コード流用できる部分も多い。そのため、Mobage、GREEにおける二番手、三番手のmixi参入も予想され、持続的に成長する可能性が高いだろう。最後にAmebaだが、発表されていたサバイバルゲームやカフェゲームのリリースが遅れている。Amebaの場合、mixiとは逆に、現時点ではすべて内製で開発しており、自社のゲーム開発力が問われている状況と言えるだろう。

 

■ 各サービスのARPU比較について

 

各社のマネタイズ特性を探るために,ARPU(Average Revenue Per Users、会員ひとりあたりの月売上高)を比較をしてみたい。次のグラフは、それぞれの売上高を各社が発表している登録会員数で割ったものだ。参考まで、最新の各社登録会員数(国内のみ)は、mixi 2623万人、GREE 2895万人、Mobage 3592万人、Ameba 2002万人。Mobageが突出しはじめているのは Yahooモバゲーの会員数をふくんでいるためだ。

 


【2011年1-3月期 〜 2011年10-12月期 ARPUの時系列比較】

ここ一年間のGREEのARPU向上は極めて異例で、なんと2.5倍ほどになっている。この原因がカードバトル型ソーシャルゲーム、それも「コンプガチャ」と言われるシステムのためだ。コンプガチャとは「有料課金で入手できるカードを数枚そろえると、さらにレアな限定カードを得ることができる仕組み」だ。すべて異なるカードを揃える必要があるため、最初のうちは揃い易いが、最後の2枚、1枚となると確率的にも非常に困難になる。しかしながら、それまで投資している金額を無駄にできないために、さらなる投資をしてしまうという仕組みだ。ネット上ではこの「コンプガチャ」によって、数万円、数十万円を使ってしまったという書き込みも多く、射幸心を煽るとして一部では社会問題視されはじめている。(参考記事 : ソーシャルゲームが抱える潜在リスク) なお、MobageのARPUが減少傾向にあるのは、PCベースでARPUの低いYahoo!モバゲーの会員を含んでいるためだろう。

 

参考まで、2011年11月に行われた「東京ゲームショー2011」来場者へのアンケート調査(標本数はmixi213人、GREE234人、Mobage268人、Facebook48人)におけるソーシャルゲームの課金状況は以下の通りだ。

 

【東京ゲームショー2011 来場者調査 報告書より、ソーシャルゲームの課金プレイ状況】

 

これらによると、Mobageの課金率は31%でARPPUは7505円、GREEの課金率は29%でARPPUは9998円、mixiの課金率は17.8%でARPPUは5653円、Facebookの課金率は16.7%でARPPUは4900円となっている。ヘビーユーザーを対象としたアンケートのため、課金利用者比率が高めになっている点などには注意したいが、男性の20代後半から40代にかけての層、また女性の20代後半の層が、比較的高額な課金ユーザーとなっていると推定できるだろう。さらに詳細な情報は「東京ゲームショー2011 来場者調査 報告書」をどうぞ。

 

 

■ 各サービスのスマートフォン対応と海外展開について

 

各社とも積極的にスマートフォン対応をすすめている。4社のうち、機種別ページビューを公開しているmixiおよびAmebaの最新状況は以下のとおりだ。成長率は高いものの、ページビュー比率では9-11%程度に留まっている。また3ヶ月前の2012年9月と比較すると、mixiは116%、Amebaは167%の伸びとなっており、Amebaにおけるスマートフォンのの順調な成長が際立つ結果となっている。

 


【2011年12月 機種別ページビュー比較】

 

GREEとMobageはページビュー非公開に転じているが、スマートフォンへの移行は順調で、ARPPUもフィーチャーフォンとほぼ同等としている。サービスが多機種間にわたると、利用者は仮想通貨を無駄にしないよう同一のプラットフォームでゲームをする傾向が強まるだろう。つまり、今までよりも利用者のプラットフォーム間移行に対する障壁が高まる。そして、デベロッパーも同様、プラットフォームの選別が進む可能性が高い。

 

最後に海外展開の状況だが、積極的なMobage、GREEとも投資段階にあり、先行きを予測することは困難だ。GREEは買収したOpenFeintのユーザーをそのまま引き継ぎプラットフォームとして拡大する方針(現在、会員数は世界規模で1.9億人)で、今年6月に開催される世界最大のゲームショー「E3 2012」に初出展することも明らかにした。一方で、Mobageは買収したngmocoの「plus+Network」とは別の新プラットフォーム「Mobage」をベースに展開している。この場合ゼロからの会員獲得というハードルがあり、現地大手プレイヤーとの提携がキーとなるだろう。またそれに伴い、ngmoco社員のリストラ計画も報道された。

 

 

【追記】DeNA海外広報担当よりコメントが入りましたので、追記させていただきます。リストラに関しては、昨年、世界各地でDeNAグループの拠点設立・買収が相次ぎ、グループ全体の機能(特に開発)を統合する段階に入ったところで、リソース配分を最適化する必要が出てきたことが背景にあるとのことです。

 

驚異の急成長を続けてきた国内ソーシャルゲーム市場だが、これからは徐々に成熟期に転じるだろう。以下のグラフは「ソーシャルゲームの正体を探る Ⅳ」で試算された国内ソーシャルゲーム市場規模の予測だ。

 

この予測によると、国内ソーシャルゲーム成長の急成長は2012年いっぱいで、それ以降は課金利用者の増加にともなう穏やかな伸びに転じると見込んでいる。現時点で収益化の目処がみえていない両社の海外展開だが、今年中にどの程度の広がりを描けるかに、投資家筋の注目が集まっている。

 

 

記事執筆)  斉藤  徹 https://www.facebook.com/toru.saito

   

AUTHOR PROFILE

  • 著者:福田浩至
株式会社ループス・コミュニケーションズ副社長、博士(情報管理) 多数の企業にて、ソーシャルメディアの効果的かつ安全な運営を支援しています。 特に、企業のソーシャルメディア活用におけるルール「ソーシャルメディア・ポリシー」策定や啓蒙教育など積極的な守りの仕組みづくりが専門領域です。
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