新しい「Adobe Marketing Cloud」は、管理者、マーケター、クリエイティブの壁を超えて

福田浩至 | 2013/03/07

新しい「Adobe Marketing Cloud」は、管理者、マーケター、クリエイティブの壁を超えて

 久々のブログを、ソルトレイクシティのホテルにて。

 

3月6日から開催されている、米国アドビシステムズのイベント「Adobe Digital Marketing Summit 2013」に参加しています。 全世界27ヶ国から「デジタル・マーケティング」関係者、約5000人が集結。ちなみに、会場の雰囲気はこんな感じです。

 

[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=KjBvtD0hAco#![/youtube]

Adobe Summit 2013 – What is real-time marketing

 

本題に入る前に、アドビ社の最近の動向についてよくご存じない方のために少々の補足の解説を。同社は「イラストレーター」や「フォトショップ」で知られています。プロのクリエイターにとって、この分野では完全にディファクト・スタンダードです。そんなアドビ社が、2012年、とても大胆なクラウド戦略を発表しました。

 

ポイントは2つ。ひとつは同社のクリエイティブ・ツールをクラウド化し、定額使い放題にする新サービス「Adobe Creative Cloud」を開始したこと。例えば月額5000円で「イラストレーター」や「フォトショップ」などを使い放題、しかも20GBのストレージつき。これによって、クリエイター同士が協業できるようになった点も見どころです。

 

そして、もうひとつは、買収した企業群のサービスを「Adobe Marketing Cloud」として統合したこと。こちらもクラウドベースで、アクセス解析、ソーシャルメディア、広告、ターゲティングなど、デジタル・マーケターに必要な多くの機能をクラウドサービスとしてパッケージしたものです。

 

 

なぜ、今、組織を超えたリアルタイムな協働が必要なのか

 

で、今回のサミットのキモは、このふたつのサービスを統合して、シームレスに使えるようにしたことです。なぜ今、それが必要なのか。それはメディアや端末が多様化し「専門性を持った多くの人たち」が関与するようになったこと。にもかかわらず、ソーシャルやモバイルの登場で「リアルタイムな対応」を求められるようになってきたためです。

 

これを地でいったのが、少し前にかなり話題になった、スーパーボール停電におけるオレオの凄技。それに対する大喝采です。ご存知ない方、詳しくは 「スーパーボール停電で大勝利」 をどうぞ。

 

 

このチームは、 何があっても10分以内に対応できるよう、責任者やクリエイティブが不測の事態を待ち構えていました。そして34分の停電という大チャンスをモノにして、数万のライクやリツイートを生み出したのです。

 

 あなたのチームには、このようなリアルタイムの対応ができるでしょうか?マーケティングの責任者、アクセス解析を担当する人、企画全体を俯瞰するマーケター、Webコンテンツの担当者、ソーシャルメディアの担当者、デジタル広告の担当者など、多くのプロジェクトでは、さまざまな専門性を持つ人たちが参加しています。縦割りで組織の間に壁のある会社も多いでしょう。また、広告代理店やWeb制作会社など、社外の人たちが関与してるケースもとても多いですよね。

 

今、時代が求めているのは、プロフェッショナルのリアルタイムな反応。瞬間芸とも言えるクリエイティブをいかにしてチームで実現するか。また、競合他社を先回りするために、顧客の反応をリアルタイムに分析して、すぐにコンテンツを改善することも強力な武器となります。サイロのような組織の壁を超えて、それにどう対応すれば良いのか。そのためには、テクノロジーを超えて、組織の問題を解決する必要があります。今回発表された「Adobe Creative Cloud」と「Adobe Marketing Cloud」の統合、その最大の価値はここにあると僕は考えています。

 

 

新クラウド。クリエイティブとマーケティング統合のポイント

 

 イベントで新しく発表された「Adobe Marketing Cloud」に関して、3月6日に発表された内容を総括し、次の4点にポイントを絞ってみました。

 

組織を横断したチームのプラットフォームになること

デジタルマーケティングのさまざまな機能を含むクラウド環境が提供され、そこで多くの関係者が、同じ場所で打ち合わせしているように情報共有をできること。例えば、社外のクリエイターがつくったコンテンツをもとに、マーケターがユーザーに対してA/Bテストを行い、その結果をアナリストが分析し、責任者を含めてリアルタイムに改善していく。それらがクラウド上で対話しながら進行する。また当事者同士だけでなく、関係者の間でも自然に情報共有される。そんな組織を横断したリアルタイム横断を可能にする点が、新しいクラウドサービスの特徴です。

 

多様な端末に対応していること

コンテンツの提供先として、PCやモバイルを含む多様な端末に対応していること。ソーシャル・アプリも同様、PC向けにはFacebookアプリ、スマホ向けにはスマホアプリなどを適切に配信できます。パーソナライゼーションやレコメンデーションも可能です。またクラウドサービスを使う端末としても同様です。スマホやタブレットなどでも使えるので、例えば当事者がさまざまな場所にわかれていても緊急対応が可能です。

 

多様なデジタル資産を蓄積していけること

今まで、それぞれのPCに眠っていた過去のキャンペーンなどに関する情報を、企業の貴重な資源として一元管理することができるようになります。クリエイティブの成果物だけでなく、それに対する顧客のさまざまな反応、アクセス解析といった無形資産もチームとして蓄積でき、生産性や業務品質の向上につながるでしょう。

 

広範囲にわたる機能のユーザーインターフェースが統合されていること

「Adobe Marketing Cloud」の機能は5本立てになっていますが、それらが統合されたユーザーインターフェースになっているのはちょっと驚きでした。まだデモ段階だとは思いますが。5機能は、SiteCatalystやDiscoverなどをベースとしたアクセス解析やデータ分析を受け持つ「Adobe Analytics」、Test&Targetなどをベースとしたターゲティングやパーソナライズ、レコメンデーションを受け持つ「Adobe Target」、ソーシャルメディアの投稿や分析を受け持つ「Adobe Social」、Webエクスペリエンス管理システムやデジタルアセット管理を受け持つ「Adobe Experience Manager」、デジタル広告コストの最適化を受け持つ「Adobe Media Optimizer (日本ではAdobe Media Manager)」です。

 

ちなみに米国では、ネットをベースにする小売業、グローバルに展開する金融業、マスメディアやネットメディアなどが主要顧客とのことです。「Adobe Marketing Cloud」は、月額で相応のコストが必要になりますので、デジタル・マーケティングを主戦場とする中堅以上の会社が対象になるでしょう。昨年9月にイベントにご招待いただいて 記事 に書いたSalesforce社のクラウドサービスは、高関与商材や企業向け商材を人的な営業が中心となって販売する企業に強みがあります。名前が似ているために混同する方も多いかもしれませんが、それぞれ業種で向き不向きがありますので、ご参考にしてください。

 

これ以上の詳細については、同社の 日本語プレスリリース をご覧ください。

また、マーケティングにクラウドに関する概要は、同社の 日本語サイト をご覧ください。

 

それと、このブログの読者が興味を持っていらっしゃるであろう「Adobe Social」については、このムービーをご覧いただくと全体像がわかるかと思います。
 

[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=eIoGqPqKAv8[/youtube]

Adobe Social Demo   by Adobe Systems

 

さて、そろそろソルトレイクの夜明けも近づいてきました。脳みそも溶けそうになっているので、このへんで筆をおかせていただきます。もうひとつ、来週ぐらいに続編を書こうと思っています。なお、今回、僕はアドビ システムズ社に招待いただき、このイベントに参加しています。ただし、特に記事内容の指定もなく、同社の検閲なども通しておりませんので、感じた通りのことを書いています。念のために報告させていただきます。

 

では、今日のイベントをひと通り見させていただいた後、夜には飛行機に乗って日本に向かいます。穏やかな飛行であることを祈念して。おやすみなさい。(と思ったら、もう朝食の時間でした 涙)

 

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2 件のフィードバック

  1. beintro335 より:

    新しい「Adobe Marketing Cloud」は、管理者、マーケター、クリエイティブの壁を超えて [ITL]

  2. dice3 より:

    adobe

AUTHOR PROFILE

  • 著者:福田浩至
株式会社ループス・コミュニケーションズ副社長、博士(情報管理) 多数の企業にて、ソーシャルメディアの効果的かつ安全な運営を支援しています。 特に、企業のソーシャルメディア活用におけるルール「ソーシャルメディア・ポリシー」策定や啓蒙教育など積極的な守りの仕組みづくりが専門領域です。
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