「ほっかほっか亭」エイプリルフール投稿炎上から学ぶ、企業SNSのリスク管理

関根健介 | 2025/04/10

「ほっかほっか亭」エイプリルフール投稿炎上から学ぶ、企業SNSのリスク管理

2025年4月1日、持ち帰り弁当チェーン「ほっかほっか亭」が公式X(旧Twitter)に投稿したエイプリルフールネタが、瞬く間に炎上しました。その内容は「全国全店でライスの販売を停止する」というもので、現実の米価格高騰と重なり、「笑えない」「シャレにならない」といった批判が殺到したのです。

この一件は、現代社会における企業のエイプリルフールネタのあり方、特にSNSが普及した情報社会での情報発信の危険性を示唆しています。本記事では、この炎上事例を詳細に分析し、広報・プロモーション担当者が今後の活動において留意すべきリスク兆候、炎上原因、そして未然防止策としての教訓を深く掘り下げていきます。

「ほっかほっか亭」運営会社 エープリルフールのSNS投稿で謝罪 | NHK

概要:事実の時系列整理

2025年4月1日午前0時1分、ほっかほっか亭は公式Xアカウントに「本日より全国のほっかほっか亭 全店舗にてライスの販売を停止します。誠に申し訳ございません」という内容を投稿しました。この投稿には、マスコットキャラクターが頭を下げるイラストが添えられ、「#エイプリルフール」というハッシュタグも明記されていました。

さらに、その9分後の午前0時10分には、佐藤健輔取締役(商品本部長)名義で「ライスの販売停止について」と題した謝罪文風のメッセージも投稿されています。このメッセージでは、販売停止の理由を「米の価格高騰を鑑みて」と説明し、「これ以上は、価格高騰の波に抗えなくなりました」と述べました。代替案として「おかずトリオやオードブルをご購入いただけますと幸甚です」とも記載されていました。これも「#エイプリルフール」のハッシュタグ付きでした。

しかし、この投稿が現実味を帯びていたことから、SNS上では批判や困惑の声が相次ぎ、会社には「本当にライスの販売をやめるのか」といった問い合わせが約20件寄せられました。

これを受け、ほっかほっか亭総本部は同日午後になって、公式Xを更新し、「皆さまを動揺させてしまい、配慮が足りなかったと感じております。大変申し訳ございません」と謝罪しました。その中で「今後もほっかほっか亭では国産米100%の炊きたてごはんを全店で提供してまいりますのでご不安に感じられた皆さまは、ご安心いただけたらと思います」と国産米の提供を継続することを強調しました。問題の投稿は社内の担当部署が作成し、役員もチェックしていたとされています。

 

リスク兆候:炎上前後の兆候をどう検知できたか

今回の炎上には、いくつかのリスク兆候が潜んでいました。これらを事前に検知できていれば、炎上を回避できた可能性があります。

  1. 時事性と社会不安との合致:投稿があった2025年4月1日の時点で、米の価格高騰が深刻化しており、農水省が備蓄米の販売に踏み切るなど、コメ不足が現実の問題として進行していました。このような社会情勢下で、主食である米の販売停止というネタは、ジョークではなく「不安を煽る嘘」や「風評」と受け取られるリスクが極めて高かったと言えます。
  2. 企業自身の経営状況との関連:ほっかほっか亭は、コメの仕入れ価格上昇を受けて2025年2月にほとんどの店舗で弁当の値上げを行っていました。このため、ユーザーにとっては「リアルにあり得る話」として、冗談と認識しにくい状況でした。
  3. 商品の性質と顧客への影響:「ライス」は弁当の中核を担う「看板商品」であり、ユーザーにとって「死活的な内容」でした。主食というセンシティブなテーマを扱うこと自体が、食品を扱う企業にとって極めて慎重であるべき点でした。
  4. ユーモアの伝達の難しさ:「#エイプリルフール」と明記されていても、情報の受け手にはリテラシーの個人差があり、コンテキストが伝わらない人が一定数いるリスクを認識すべきでした。特にSNSでは情報が瞬時に拡散され、誤解が「事実」として広まる可能性も高まります。

炎上原因:ユーザーの怒りのポイント

ユーザーの怒りのポイントは、主に以下の点に集約されます。

  • 現実との乖離のなさ: 米価高騰やコメ不足という「今そこにある不安」を抱える中で、「ライスの販売停止」というネタが現実味を帯びすぎていたこと。消費者は「食の不安」を触発され、不快感を抱きました。
  • 冗談のレベル感のずれ: 「冗談にしてはシャレにならない」という意見が多数寄せられました。ユーモアのつもりが「不安を煽る」「風評」と受け取られてしまい、逆効果になったと言えます。
  • 顧客との信頼関係の損害: 長年利用してきた顧客からは「好きだったのに残念」「こんなこと言う会社だったっけ?」といった「裏切られた感」や失望のが見られました。ブランドイメージや顧客体験と乖離した内容は、親近感どころか信頼を損なう結果を招きます。
  • 情報の曖昧さ: 一部のユーザーは「本当に販売停止になるのか」と動揺し、投稿の趣旨を理解できない人もいました。わずか9分後に「謝罪文」が投稿されたことも、冗談なのかどうかをさらに分かりにくくしたという指摘もあります。

企業の対応:実施内容と反応

ほっかほっか亭総本部は、炎上を受けて2025年4月1日夕方には公式Xを更新し、謝罪しました。謝罪文では「皆さまを動揺させてしまい、配慮が足りなかったと感じております。大変申し訳ございません」と述べ、「お米の物価高騰が止まらない現状ではありますが、今後もほっかほっか亭では国産米100%の炊きたてごはんを全店で提供してまいります」と、国産米の提供継続を改めて強調しました。

 

 

この謝罪後も、SNS上では「騒いでる方はユーモアが分からない」「謝るほどのこと?」と擁護する声から、「米不足を笑いのネタにするな」「足りなかったのは配慮じゃなくてセンス」といった厳しい声まで、議論が白熱しました。

一方で、マーケティングコンサルタントの西山守氏の見解では、この一件は「大成功とは言えないが、失敗したとも言いがたい」とされています。その理由として、投稿が削除されていないこと、謝罪投稿で自社の炊きたてごはんをさりげなくアピールしていること、さらに料理研究家のリュウジ氏がほっかほっか亭の投稿に「ツッコミ」を入れる形で話題を増幅させた「プロレス投稿」の可能性も指摘されています。リュウジ氏は以前からほっかほっか亭とのコラボ企画を行っており、過去にも商品内容についてX上で苦言を呈し、ほっかほっか亭側が謝罪と改善を返答するというやり取りがありました。

SNSの反応:感情のトーンや拡散ルート

SNS上では、ほっかほっか亭のエイプリルフール投稿に対して、大きく分けて「批判派」と「擁護派」の声が見られました。

批判的な声

批判的な声のトーンは、笑えない」「洒落にならない」「リアルすぎて怖い」「不謹慎」「不安を煽るような嘘は良くない」「顧客離れにつながる」といったものが中心でした。特に、物価高騰で生活に不安を感じている層からは「冗談に聞こえない」「米の問題で困っている人もいるのに軽く扱うのはどうなの?」という怒りの声が上がりました。

擁護する声

対して、擁護する声は、「こんなことで炎上は過剰反応」「エイプリルフールなんだから冗談と受け止めればいい」「ユーモアがない世の中だ」といったものでした。中には、今回の件が「いい宣伝になった」と見る向きもありました。

情報の拡散は、SNSの特性上、瞬時に全国に広まりました。投稿のスクリーンショットが保存され、削除後も拡散が続くなど、企業が情報をコントロールしにくい状況が浮き彫りになりました。

教訓:他社が学ぶべきポイント+未然防止策

ほっかほっか亭の事例から、企業がエイプリルフールなどのプロモーション活動を行う際に学ぶべき重要な教訓と未然防止策が導き出されます。

  1. 社会情勢とのリンクを避ける: 現在進行中の社会問題(物価高、災害、感染症など)を題材にすると、ジョークではなく「煽り」や「風評」と受け取られるリスクが高いです。ユーモアの意図があっても「今そこにある不安」に便乗したジョークは逆効果になりやすいという原則を徹底すべきです。
  2. ポジティブな驚きを提供する: 顧客に「笑顔になれる嘘」を目指すことが重要です。例えば、限定商品の巨大化、非現実的なコラボレーション、あるいは夢を感じさせる演出などが好例です。
  3. 見た瞬間に冗談と分かる演出: イラストやビジュアル、語調などで「ネタです」と明確に示し、誤認や拡散のリスクを抑える構成にするべきです。受け手の情報リテラシーに依存しないコミュニケーション設計が求められます。
  4. 顧客との信頼を損なわない設計: ブランドイメージや顧客体験と乖離した内容は避け、むしろ親近感を持たれるような工夫が望ましいです。食品を扱う企業は、特に「食の安心・安全」といった信頼に関わるテーマには細心の注意を払う必要があります
  5. 事前チェック体制の強化: SNS投稿内容の事前チェック体制を複数人で確認する仕組みを整備することが極めて重要です。広報担当者だけでなく、リスク管理部門や経営層など、多角的な視点でのチェックが不可欠です。

類似事例との比較

ほっかほっか亭のエイプリルフール投稿は炎上しましたが、他の企業では成功した事例も存在します。成功事例と対比することで、”境界線”が明確になります。

成功事例

  • やおきんの「うまい棒マトリョーシカ」: 複数のサイズのうまい棒が入れ子状に収まるという、実現不可能なユーモアを提供し、「本当に欲しい」「ぜひ商品化してほしい」といった好意的な声が寄せられました。
  • 不二家の「空飛ぶペコちゃん」: 看板キャラクター「ペコちゃん」の巨大人形をドローンで吊り上げ、東京の空を飛ばすという非現実的なCG映像投稿し、「癒された」「どこかで実現してほしい」とポジティブな反応を得ました。
  • はなまるうどん(2013年)の「ダイオウイカ天」: NHKスペシャルのブームに相乗りし、ひと目でウソとわかるものの、かなり作り込まれた画像と詳しい解説で大きな話題となりました。
  • au(2013年)の「zzzPhoneBed」: ベッド型スマートフォンという非現実的なアイデアを、実機写真や詳細な解説でリアリティを持たせつつ、すぐにウソだと気づかせる工夫がありました。
  • 日本郵政(2024年)の美容フェイスパック「潤い速達 ゆうぱっく」: エイプリルフールネタとして投稿した商品を、翌年のエイプリルフールに数量限定の非売品として実現化させ、大きな話題を集めることに成功しました。
  • ニュージーランドBMW(2015年)の新車プレゼント: 新聞広告で「最初にトムさんに話しかけた人に新車を交換」と告知し、実際に実行したことで、粋なサプライズとして賞賛されました。

これらの成功事例は、「突き抜けたフィクション性」「夢や希望を内包する演出」、そして「嘘が実現すると嬉しいというポジティブな共創」を前提としています。一方、ほっかほっか亭の投稿は、「実現可能な”嘘”」でかつ「消費者の生活不安を刺激する内容」であったため、炎上を招きました。

まとめ:行動につなげる振り返り

ほっかほっか亭のエイプリルフール投稿炎上は、現代の企業広報にとって極めて示唆に富む事例です。エイプリルフールは本来、ユーモアで日常に彩りを与える文化的なイベントですが、企業にとっては「遊び心」と「顧客との信頼」の間で、極めて繊細なバランスを要する取り組みであることが再確認されました。

この一件が教える最も重要な原則は、「笑えない時代の笑えない冗談は、むしろ信頼を失う引き金となる」というものです。ユーモアの「倫理」が問われる現代において、企業が発信する内容は、“笑えるかどうか”だけでなく、”誰かを傷つける可能性があるか”を同時に問われています。

広報・プロモーション担当者は、今後エイプリルフールなどの機会にSNSを活用する際、以下の点を深く内省し、具体的な行動計画に落とし込むべきです。

  • 社会情勢を常に意識し、デリケートな話題は避ける
  • ポジティブなサプライズと、明確な「嘘であること」の表示を徹底する
  • ブランドイメージと顧客との信頼関係を最優先に考える
  • 複数人でのリスク評価プロセスを導入し、多様な視点からのチェックを行う

企業が発信するユーモアは、まるで繊細なワイングラスのようなものです。美しく、楽しませる力がありますが、少しでも扱い方を誤れば、すぐに割れてしまい、二度と元には戻らない可能性があります。その透明性を保ちつつ、見る人を魅了するような、「心から笑える、安心できるユーモア」こそが、これからの企業広報には求められるでしょう。

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AUTHOR PROFILE

  • 著者:関根健介
ループス・コミュニケーションズ所属。某コンサルティング会社にてWebマーケティングやバイラルマーケティングを経験した後、数年放浪し2011年12月からループスへジョイン。ソーシャルメディアの健全な普及をねがい日々精進しています。関心のあるテーマはO2O・地域活性×ソーシャル・医療×ソーシャル・ソーシャルコマース ま〜ソーシャル全般です。 【座右の銘】 意思あるところに道あり 【Facebook】www.facebook.com/kensuke.sekine.7 【Twitter】 @kensuke_sekine
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