プロモーションに生成AIは危険? JALの炎上から学ぶ、ブランド価値を守るためのチェックリスト

関根健介 | 2025/08/11

プロモーションに生成AIは危険? JALの炎上から学ぶ、ブランド価値を守るためのチェックリスト

JALのクレジットカード公式サイトでの生成AI画像利用に関する炎上事例は、生成AIを活用した広報活動やプロモーション活動における重要な教訓となります。特に炎上リスクを担当される方々にとって、今後の品質管理体制やチェックプロセスの見直しに役立つ学びが多く含まれています。

概要

日本航空(JAL)が2025年8月1日に発表した富裕層向けクレジットカード「JAL Luxury Card」の公式サイトに掲載された画像が、生成AIによって作成されたものであり、その不自然さからSNS上で大きな注目を集め、炎上しました。

このカードは年会費24万2,000円(招待制の上位カードは59万9,500円)という超高価格帯のサービスであり、顧客は「本物」の価値と「高級感」を期待します。しかし、公式サイトの画像には「ポップコーンにストローが刺さっている」「フォークの形状が不自然」「指の本数が異常」など、AI生成特有の違和感が多数見られました。

これが「安っぽさ」や「手抜き感」といったネガティブな印象を与え、ブランドの信頼性を大きく損なう事態に発展しました。

この事例は、単なる技術的なミスに留まらず、生成AIという新しい技術が企業のブランド価値や顧客からの「信頼」「高級感」「本物であること」といった期待と致命的にミスマッチした結果であり、企業の姿勢そのものが問われる事態となりました。

 

事実の整理

  • 2025年8月1日:JALは富裕層向けの新たなクレジットカード「JAL Luxury Card」および「JAL Luxury Card Limited」の申し込み受付を開始
  • 年会費設定:JAL Luxury Cardが24万2,000円、JAL Luxury Card Limitedは招待制で59万9,500円
  • 8月2日頃:公式サイトの画像の不自然な点がSNS(X)上で指摘され始める
  • 具体的な問題:ポップコーンのカップにストロー、フォークの形状異常、指の数の異常、自社カードと異なるデザインのカードが掲載
  • 8月4日夜:JALが問題の画像を差し替え、一部画像のAI生成を認める

 

 

炎上のポイント

今回の炎上は、単にAIが不完全な画像を生成したという問題に留まらず、以下の要素が複合的に作用した結果と言えます。

ブランドイメージとの致命的なミスマッチ

JAL Luxury Cardは「最高峰」「富裕層向け」という「本物」と「高級感」を追求するブランドです。しかし、そこに「安っぽさ」「手抜き感」「偽物っぽさ」を感じさせるAI画像が使われたことで、顧客の期待を大きく裏切りました。

このギャップが「この会社は顧客を大切にしないのではないか?」「カード自体の品質も大丈夫なのか?」という不信感を生み出し、ブランドの信頼性を大きく揺るがしました。

生成AI画像の品質と不自然さ

  • 指の本数やモノの形状、物理法則を無視した配置など、人間が見れば一目で気づく「破綻」が複数含まれていた
  • クレジットカードの広告にもかかわらず、写っているカードがJAL Luxury Cardのデザインと異なっていた
  • これは旧世代のAIモデルに多く見られた課題であり、適切なツール選定と運用を行えば防げた可能性が指摘されている

人間によるチェック体制の不備とAIへの過信

炎上の最も大きな問題は、「AIがミスしたこと」よりも「人間がそのミスに気づかなかったこと」にありました。

社内での複数の確認ステップがあったはずにもかかわらず、見逃されてしまったのは「生成AIは大丈夫だろう」という油断や、確認体制の甘さが影響していると考えられます。JALのケースでは、審査体制自体は存在していたものの、それが社内に浸透していなかったために機能しなかったとも報じられています。

企業の対応と評価

JALはSNSでの指摘を受けて迅速に対応しました。

画像差し替えと謝罪

JAL広報部は、指摘を受けてすぐに画像を差し替え、一部がAI生成であることを認め、「誤解を招く表現がございました」として謝罪しました。問題の画像は全て取り下げられ、新しい画像に変更されたり、不自然な部分が見えないようにトリミングされたりしました。

再発防止策

JALは「生成AIを活用する際の審査プロセスについて速やかに社内で再周知し、社員教育等も継続していくことで生成AIの適切な利用を強化し、再発防止に努めてまいります」と取材に答えています

迅速な対応は評価できるものの、一度損なわれたブランドイメージと顧客の信頼を完全に回復するには時間を要するでしょう。この事例は、組織やルールが作成されていても、それが現場まで周知・浸透されていないというガバナンス上の課題を浮き彫りにしました。

学びと今後の注意点

炎上リスクを管理し、生成AIを広報・プロモーション活動に安全かつ効果的に活用するために、以下の点を学ぶことができます。

1. AI活用に伴うリスクの認識と受容

生成AIはコスト削減やスピード向上といった大きなメリットがある一方で、不自然さや違和感に対する批判のリスクが存在することを企業は認識する必要があります。「便利だから」というメリットだけでなく、リスクを意識し、それをいかに回避するかを重視すべきです。

2. 厳格な品質と整合性のチェック体制の構築

多角的な目で入念に確認する

AIが生成した画像は、指の本数、モノの形状、物理法則との合致、文字やロゴの歪みなど、細部にわたるまで複数の人間の目で厳しくチェックする必要があります。

ブランドイメージとの整合性

生成AIの利用がブランドの核となる「信頼性」「高級感」「本物であること」といった価値を損なわないかを常に評価するべきです。コスト削減がブランド価値の毀損というより大きな損失につながらないよう、バランスを慎重に判断することが求められます。

チェックリストの活用

「不自然な要素がないか」「ブランドとの整合性はどうか」といった項目を盛り込んだチェックリストを作成し、機械的に確認できる仕組みを導入すると効果的です。

3. 人間による最終判断と責任の明確化

AIはあくまでツールであり、完璧ではありません。「AIに任せておけば大丈夫」という過信は最も危険です。

最終的な「よし」とする判断は、ブランドと顧客を理解した人間が行うべきです。制作チームだけでなく、広報、マーケティング、ブランド責任者、場合によっては法務など、複数部署による多角的なレビューを義務付けるべきです。

4. 実物の使用優先の原則

特に商品やサービスそのものを示す画像、またはブランドの信頼性に直結する重要な要素については、手間を惜しまず実写を用いることを優先すべきです。実物から伝わるリアリティやブランドの哲学は、AIでは再現しきれません。

5. 最新AIツールの活用と適切なワークフロー

最新の生成AIモデル(例:Imagen3、DALL·E 3、Flux Kontext、Viduなど)は、旧世代のモデルで頻繁に見られた指や小物、文字の歪みといった課題が大幅に改善されています。

商品やブランドの正確性を担保するためには、参照画像(Reference Image)を活用した生成が必須です。適切なツールとワークフローを選べば、ブランドを損なわずに制作スピードを劇的に向上させることも可能です。

6. ウェブサイト全体の品質管理

AI画像だけでなく、ウェブサイト全体のデザイン、文章、コードなど、すべてが一貫した品質基準を満たしているかを確認することが重要です。ウェブサイトの不自然さが、「安全性への疑問」に直結することもあります。

7. 透明性と誠実なコミュニケーション

AI生成物の利用は、もはや秘密にできるものではありません。場合によっては「AI使用」を明示するなど、正直かつ誠実なコミュニケーションが求められます。顧客は「これは誰が作ったのか?」という点に敏感になっているため、誤解されない見せ方を心がける必要があります。

まとめ

今回のJALの事例は、生成AIが持つ「便利さ」と「リスク」をまざまざと見せつけるものでした。AIは強力なツールですが、それをどう使い、何を世に出すかという最終的な判断と責任は常に人間が負うべきです。

企業は、今回の事例から得られた教訓を活かし、ブランド価値を守るためのAI制作ワークフローと品質保証体制を設計することが不可欠です。

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AUTHOR PROFILE

  • 著者:関根健介
ループス・コミュニケーションズ所属。某コンサルティング会社にてWebマーケティングやバイラルマーケティングを経験した後、数年放浪し2011年12月からループスへジョイン。ソーシャルメディアの健全な普及をねがい日々精進しています。関心のあるテーマはO2O・地域活性×ソーシャル・医療×ソーシャル・ソーシャルコマース ま〜ソーシャル全般です。 【座右の銘】 意思あるところに道あり 【Facebook】www.facebook.com/kensuke.sekine.7 【Twitter】 @kensuke_sekine
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