ドミノ・ピザ炎上事例から学ぶ:広報・リスク管理担当者のためのバイトテロ対策

関根健介 | 2024/02/23

ドミノ・ピザ炎上事例から学ぶ:広報・リスク管理担当者のためのバイトテロ対策

近年、飲食店などで従業員が不適切な行為を撮影し、その動画がインターネット上で拡散される「バイトテロ」が社会問題となっています。昨年は顧客による迷惑行為が相次ぎましたが、今年は従業員によるバイトテロ動画が頻繁に発生しています。迷惑行為に対する「代償」が大きく報道されたにもかかわらず、こうした事態が後を絶たないことから、企業はより厳格な対策を講じる必要に迫られています。

インターネット上での炎上は「いつ、誰にでも起こりうる」ものであり、組織にとって身近なリスクの一つであることを再認識する必要があります。炎上問題は、問い合わせやクレーム対応による広報担当者の負担増大にとどまらず、企業のイメージを瞬時に損なう深刻な影響を及ぼします。

今回は特に、ドミノ・ピザの従業員による「鼻ほじり動画」炎上事件を取り上げます。この事例は、企業が直面する現代のバイトテロリスクについて、広報・リスク管理担当者にとって重要な教訓を与えています。

 

事例の概要:何が起きたのか?

2024年2月12日、宅配ピザチェーン大手「ドミノ・ピザ」の従業員が不適切な行為をする動画がX(旧Twitter)で拡散され、大炎上しました。

動画は、ドミノ・ピザの制服を着た従業員がピザ生地をこねている最中に、「鼻でもほじって付けちゃうんじゃないの、ここに!」と言いながら、指で鼻の穴をほじり、その指を生地に擦り付けている様子を映した14秒のものでした。この動画は同日午後3時過ぎに「爆サイ.com」のXアカウントが投稿したことが発端です。

ドミノ・ピザの声明によると、この動画は兵庫県尼崎市にある尼崎店で、2月12日の午前2時ごろ、営業終了後にアルバイト従業員によって撮影されたものです。動画内で使われた生地は、発酵が完了する前の段階で、この後24時間は発酵させる工程があり、まだ使用されていないことが確認されました。

同様のバイトテロは他にも発生しており、2月4日には「しゃぶ葉」伊奈店で従業員が口にホイップクリームを流し込まれる動画が、2月6日には「炭火焼干物定食 しんぱち食堂」宇都宮店で従業員が寸胴鍋の液体を直接口に注ぎ込む動画が拡散しています。

 

炎上の経過と企業の初動対応

ドミノ・ピザの動画は、投稿後すぐにX(旧Twitter)上で瞬く間に拡散し、大炎上状態となりました。この問題に対し、ドミノ・ピザは迅速な対応を見せました。

動画が炎上した同日(2月12日)の深夜22時22分には、ドミノ・ピザは公式Xアカウントで「当社従業員による不適切な行為についてのお詫びとお知らせ」と題した声明を発表しました。この声明では、以下の点が報告されました:

  • 動画の撮影場所が兵庫県尼崎市の尼崎店であること
  • 撮影日時が2月12日午前2時ごろ、営業終了後の店舗内であること
  • 動画内の生地は発酵途中のもので、使用される前に廃棄処分されたこと
  • 店舗内のすべての生地も廃棄処分されたこと
  • 尼崎店が2月12日付で営業停止となったこと
  • 関与した従業員については、就業規則に基づき厳正に処分する予定であり、厳正な法的措置も検討中であること(報道では翌日には解雇されたとされています)


ドミノ・ピザのこの迅速な対応は、Xで「迅速すぎる」「対応速いですね」と評価され、炎上対応のモデルケースとも評されました。しかし、このような迅速な対応ができる企業であっても、こうした事態を防げないという残念な事実も示しています。また、この問題は「爆サイ」のようなネット掲示板から広がり、その後テレビなどの既存マスメディアがニュースとして取り上げたことで、「ネット内」に留まっていた情報が広く一般市民に拡散しました。

何が問題だったのか?構造的な視点

このバイトテロ事例から、いくつかの構造的な問題点が浮き彫りになります。

従業員の倫理観と責任感の欠如

宮根誠司は、この動画を「バイトテロといわれているが犯罪動画ということだ」と指摘し、「自分が働く店の食べ物に対して不適切なことをすることが、まず理解できない」と怒りをあらわにしました。たとえ「真似」や「悪ふざけ」のつもりであっても、店に被害が出れば営業妨害という罪に問われる恐れがあるにもかかわらず、その認識が低い可能性があります。

不祥事の忘却サイクルと代償の認識不足

昨年は「スシロー」の事例で巨額の損害賠償請求が報じられ、迷惑行為の「代償」が大きく取り沙汰されましたが、それでもバイトテロが相次いでいます。SNSのタイムラインでは日々話題が消費されるため、数カ月前の事ですら忘れ去られやすく、「どれだけ損害を与えても、代償を払わなくていいのでは」という誤った認識が広がる可能性があります。

従業員教育の不徹底とマニュアルの限界

大手企業ではSNS関連の項目をマニュアルや研修に盛り込んでいるはずですが、それらが未成熟であったり、時代に追いついていない可能性があります。単に「鼻に指を突っ込んだらNG」というルールだけでなく、「なぜダメなのか」が従業員の「血肉」になっていなければ意味がありません。衛生面や顧客への印象といった、より根本的な理由の理解が求められます。

アルバイトへの「企業人としての矜持」の難しさ

正規雇用ではないアルバイトに、正社員と同レベルの「企業人としての矜持」を求めるのは現実的に難しいという意見もあります。しかし、社会的な制裁の重さを理解させることは、抑止力になり得るとも考えられます。

職場へのスマートフォンの持ち込み問題

厨房に私物のスマートフォンを持ち込むこと自体が衛生的に問題であり、今回の動画撮影・拡散の温床となっています。ネットやSNSでは、バイトテロ防止のために職場でのスマホ持ち込み禁止を徹底すべきというが多数上がっています。

この事例から学ぶ!広報・リスク管理担当者が取るべき対策

このドミノ・ピザの事例から、広報・リスク管理担当者は以下の対策を検討・強化する必要があります。

1. 予防策の徹底

従業員への徹底した研修・教育

単に規則を教えるだけでなく、不適切な行為がなぜダメなのか、顧客への影響、衛生面、そして企業ブランドへの損害といった多角的な視点から「ダメな理由」を深く理解させることが不可欠です。

SNS活用・機密事項保持に関する誓約書の締結

従業員に対し、SNSの適切な利用方法や機密事項の保持について、誓約書を交わすことで意識を高めることができます。

現場でのスマートフォン使用制限・禁止

衛生面の問題や動画撮影の温床となることを防ぐため、厨房など重要な現場でのスマートフォン持ち込みを禁止するルールなどを設けるか、検討することも重要です。

厨房内の監視体制強化

「プライバシーの問題もある」との意見もありますが、再発防止のために監視カメラの増設を求めるも上がっています。

SNS・HPの定期的なモニタリング

自社や関連するキーワードが不適切な形で言及されていないか、常にインターネット上を監視する体制を整えることが重要です。

公私のアカウントの明確な区別

従業員に、個人のSNSアカウントと業務に関連するアカウントを明確に区別するよう指導します。

2. 迅速かつ毅然とした初動対応

ドミノ・ピザの事例では、事件発生から声明発表までがわずか数時間という極めて迅速な対応でした。これは評価されるべき点であり、事実関係の早期把握、謝罪、被害拡大防止措置、そして関与者への厳正な処分や法的措置の検討を迅速に発表することが、信頼回復の第一歩となります。

「真似」であっても法的措置を検討し実行することで、従業員にその行為が「犯罪行為」であるという認識を強く持たせる抑止力になります。

3. 信頼回復と再発防止への継続的な取り組み

一時的な謝罪だけでなく、全社を挙げた再発防止策と信頼回復への取り組みを継続的に行う姿勢を示すことが求められます。これには、従業員教育の継続的な見直しや、内部監査の強化などが含まれます。

まとめ:広報・リスク管理担当者が今すぐ見直すべき視点

ドミノ・ピザのバイトテロ炎上事例は、企業にとって「バイトテロ」が身近なリスクであり、発生してからでは対応が間に合わないほど深刻化しやすいという警鐘を鳴らしています。広報・リスク管理担当者は、以下の視点を今すぐ見直すべきです。

  • リスクの認識:バイトテロは、単なるいたずらではなく、企業の存続にも関わる深刻な「犯罪行為」であり、いつ、どの企業にも起こりうるリスクであると認識すること
  • 教育の徹底:従業員に対し、単なるルール遵守だけでなく、行動が社会や企業、顧客に与える影響の重大性を深く理解させる倫理観教育を強化すること
  • 予防策の実行性スマートフォンの持ち込み禁止など、現場の状況に応じた具体的な予防策の導入・厳格化を検討し、その実効性を高めること
  • 法的措置の明示:不適切な行為には厳正な法的措置が取られることを明確に周知し、その「代償」を具体的に示すこと

これらの対策を講じることで、将来的な炎上リスクを低減し、企業のブランドイメージと信頼を守るための強固な基盤を築くことができます。

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AUTHOR PROFILE

  • 著者:関根健介
ループス・コミュニケーションズ所属。某コンサルティング会社にてWebマーケティングやバイラルマーケティングを経験した後、数年放浪し2011年12月からループスへジョイン。ソーシャルメディアの健全な普及をねがい日々精進しています。関心のあるテーマはO2O・地域活性×ソーシャル・医療×ソーシャル・ソーシャルコマース ま〜ソーシャル全般です。 【座右の銘】 意思あるところに道あり 【Facebook】www.facebook.com/kensuke.sekine.7 【Twitter】 @kensuke_sekine
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